因縁の相手を前に奮闘も…… 盤石なフランスとスペイン
試合後には、ドゥエ(右)がPSGでチームメイトのハキミ(左)のもとへ歩み寄り、ハグをする感動的なシーンもあった photo/Getty Images
ベスト8までコマを進めた国ともなれば、実力の差はそれほどないのかもしれない。では、何が勝敗を分けるのか。ここまでの勢いなども大事ではあるが、やはり「経験」がモノを言うのは間違いないだろう。
フランス代表とモロッコ代表の一戦は、前回大会の準決勝でも相見えた因縁のカードだ。
立ち上がりから攻勢に出たフランスは、25分にカウンターの流れからキリアン・ムバッペがPA内で倒されてPKをゲット。これをムバッペ自らがキッカーを務める。緩急のつけた助走からゴール右を狙ったが、勢い、コースともにやや甘く、シュートをGKにキャッチされてしまい、先制とはならなかった。
ただ、これで勢いを失わないのが今のフランスだ。その後もいく度となくチャンスを作り続け、60分についに均衡を破る。相手が跳ね返すボールを粘り強く回収し続けると、PA左手前でボールを受けたムバッペがゴール右隅にシュートを突き刺した。
さらにフランスは直後の66分、ウスマン・デンベレがドリブルで中央突破を仕掛けると、相手の寄せが甘いと見るや否や、PA手前から思い切って右足を振り抜く。狙い澄ましたシュートは、GKの手をかすめてゴールに吸い込まれた。
一方のモロッコは、終盤にセットプレイなどから反撃を試みたが、ネットを揺らすまでには至らず。チームのトップスコアラーであるイスマエル・サイバリを欠いた影響はやはり大きかった。90分通してのシュート本数も、わずか5本に抑えられてしまった。
得意とする守備面でも、インテンシティの高さに加えて守護神ヤシン・ブヌが何度も好セーブを披露したが、最後はフランスの2枚看板にその鉄壁の牙城を崩されてしまった。結果、2-0でフランスに軍配が上がり、モロッコは前回大会のリベンジを果たすことはできなかった。
太ももの痛みを訴え、ピッチに座り込むクルトワ。71分に涙を流しながらピッチを去ることとなった photo/Getty Images
ベルギー代表にとってもスペイン代表は因縁の相手かもしれない。なぜならPK戦の末に勝利した1986年のW杯・準々決勝を最後に、スペインに一度も勝てていないからだ。
そして、この嫌な流れは試合前からベルギーに襲いかかる。ユーリ・ティーレマンスがウォーミングアップ中に負傷し、この大事な一戦で欠けることとなってしまった。
こういったアクシデントもあってか、今回も先に試合を動かしたのはスペインだった。30分、ラミン・ヤマルのスルーパスから右サイドの深い位置まで侵入したペドロ・ポロが中央へ折り返すと、これをダニ・オルモが合わせる。このシュートはGKティボー・クルトワがセーブするも、こぼれ球をファビアン・ルイスが押し込んだ。
ただ、ベルギーも負けじと反撃に出る。41分、ティモシー・カスターニュの右クロスをシャルル・デ・ケテラエルが頭で合わせる。
ただ後半に入り、再びベルギーにアクシデントが襲う。71分にクルトワが負傷交代を余儀なくされることとなったのだ。結果的には、この守護神の離脱が運命を大きく左右したかもしれない。
その後、スペインはヤマル、ベルギーはジェレミー・ドクと、お互いにドリブラーが起点となり、勝ち越しゴールを狙いに行くが、スコアは動かない。延長戦も視野に入る時間帯となり、ベルギーにとっては1986年大会の記憶が蘇る。
しかし、残酷な未来が待っていた。88分、スペインのパウ・クバルシがミドルシュートを放つと、コース自体は決して難しくなかったものの、手前でバウンドするボールということもあってか、代わって入ったGKセネ・ラメンスがキャッチしきれない。このこぼれ球をミケル・メリーノが押し込み、スペインが2-1の勝利を収めた。多くのファンが「クルトワだったら……」と嘆いたかもしれない。
延長戦までもつれ込む死闘 不発エースの穴を埋めた救世主
準々決勝では不発に終わったケイン(右)だったが、代わりにベリンガム(左)が2ゴールの活躍を見せた photo/Getty Images
同日に行われた残りの2試合は、最後まで目が離せない劇的な幕切れとなった。まずは、アーリング・ハーランドとハリー・ケインのストライカー対決に注目が集まったノルウェー代表とイングランド代表の一戦だ。
イングランドが立ち上がりから主導権を握る中、先制したのはノルウェーだった。36分、パトリック・ベルグの激しいプレスから高い位置でボールを奪い、左サイドのアンドレアス・シェルデルップへボールが渡る。シェルデルップはPA内左から思い切って左足を振り抜くと、GKの頭上を抜きながら逆サイドのポストを叩いてゴールに吸い込まれた。
これで勢いに乗ったノルウェーは、前半の終盤にかけて何度か決定機を作るが、追加点を奪えない。すると前半AT、左サイドを起点にカウンターを仕掛けたイングランドのアンソニー・ゴードンが、ペナルティアーク付近にいたジュード・ベリンガムへパスを通す。ボールを受けたベリンガムは、的確なファーストタッチと抜群のコース取りでボールを持ち運び、ゴールへ流し込んだ。
その後、お互いにネットを揺らすシーンがあったが、オフサイドやファウルの判定でゴールが認められず、延長戦へ突入。そんな中で、試合を動かしたのは再びベリンガムだった。93分、ミドルシュートのこぼれ球にいち早く反応し、決勝ゴールを決めたのだ。
ベリンガムはクラブでも代表でも、ここぞという場面で勝負強さを発揮する“ヒーロー気質”を持った偉大な選手。結果的に両エースが完封された中で、イングランドを救う救世主となった。
アルゼンチンの救世主となったアルバレス。
連覇を目指すアルゼンチン代表はここまで激戦続きだが、茨の道がまだまだ続いていく。前評判では王者が大きく優勢と見られていたが、スイス代表の奮闘により、ノルウェー×イングランドと同様に延長戦までもつれ込む死闘となった。
10分にアレクシス・マクアリスターのゴールで先制に成功したアルゼンチン。幸先の良いゴールにより、今回こそは余裕を持って試合を進められるかと思われた。
しかし、67分にスイスのダン・エンドイェに同点弾を許してしまう。さらに、VARの介入によりブレール・エンボロが72分に退場し、残り20分以上を数的優位の中で戦ったが、勝ち越しゴールを奪うことができなかった。
アルゼンチンは決勝Tに入って、2度目の120分マッチとなった。選手にとっては決して簡単ではないだろう。ここまでW杯9試合連続ゴール中のリオネル・メッシも、この日はアシストがあれどゴールは遠い。
そんな不発のエースの穴を埋めたのがフリアン・アルバレスだ。112分、PA左手前でボールを受けると右足一閃。強烈なシュートをゴール右隅に突き刺した。
準決勝へコマを進めたフランス、スペイン、イングランド、アルゼンチンは、いずれも優勝を経験したことがある国々だ。過去の栄光とはいえ、やはりこの経験は何ものにも代え難いものがある。さらに、FIFAランキングでもこの4カ国が現在1~4位を占めており、ベスト4は順当な顔ぶれとなったかもしれない。
文/及川 裕太
※電子マガジンtheWORLD322号、7月22日配信の記事より転載

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