前編では、極貧の苦学生時代や、夫の借金1,000万円を完済した経験、そしてオリエンタルランド株で大きな利益を得た原体験を伺いました。後編では、その利益を元手に1億円、そして5億円へと資産を伸ばしていく過程と、数千万円単位の損失を乗り越えてたどり着いた投資哲学に迫ります。
「今だ!」で約2,000万円を全投入。アップルショックで勝負に出た理由
トウシル:前編ではオリエンタルランド(4661)で約1,500万円の利益を得たお話まで伺いました。その利益を手にした後、次にどのようなアクションを起こしたんですか?
ちょる子さん:本格的な勝負に出たのは2019年の頭ですね。当時、中国におけるiPhoneの販売不振をきっかけに相場が急落した「アップルショック」があったんです。
狙っていた東京エレクトロン(8035)も暴落したのですが、私は逆に「今だ!」と、オリエンタルランドを利確して手元にあった1,584万円と、貯金などを合わせた約2,000万円を全額、投入しました。迷わず一銘柄にベットです。
トウシル:1,500万円以上を1銘柄に突っ込むのは、いくら利益が出た後とはいえ相当な勇気がいりますよね。
ちょる子さん:ちょうど4Gから5Gへの転換期で半導体需要は絶対にくると信じていましたし、何より株価暴落で配当利回りが5%を超えていたんです。最悪、株価が戻らなくても年間で100万円近い配当が入るなら、私の当時の年収(約600万円)を考えれば十分すぎる「負けない勝負」だと思えました。
よく寝る娘の横でデイトレスタート。育休中に資産1億円を突破
トウシル:確固たるロジックがあったんですね。そしてその直後に出産、育休に入られています。
ちょる子さん:2019年1月から産休に入り、4月に長女を出産しました。さすがに出産前は投資する余裕もなかったのですが、産まれてからはデイトレードを始めました。
トウシル:出産直後にデイトレード!? よくできましたね…?
ちょる子さん:娘が驚くほどよく寝る子だったので、暇を持て余してしまったんですよ(笑)。最初は1日に2、3回売買する程度だったんですが、地合いの良さもありどんどん回数が増えていきました。最終的には1日中、画面に張り付いてシャトルランのように売買を繰り返すまでトレードにのめり込みました。
トウシル:育休を利用してトレード経験を積んだんですね。結果はどうだったんですか?
ちょる子さん:2020~2021年にかけて、資産は一気に増えて1億円を突破しました。当時はもう、全能感がすごかったですね。主にキーエンス(6861)をトレードしていたのですが、「引け値が手に取るように分かる」みたいな感覚になっていました。毎日50万円勝つのは当たり前。本気で「自分は投資の天才だ」と信じていましたよ。
トウシル:まさに絶頂期ですね。
ちょる子さん:絶好調だった矢先、新興株のAI inside(4488)で2,400万円を失いました。決算をまたいで「私ならいける」と根拠のない自信で持ち越したら、まさかのストップ安。あの時はさすがにショックでしたね。
トウシル:天才だと思っていたところからの大転落。キツいですね。
ちょる子さん:本当に。でも、今振り返ればあの失敗が大きな分岐点でした。「よく分からない新興株に安易に手を出してはいけない」「自分が勝てているのは実力ではなく、単に地合いが良い大型株に乗っていただけだ」と痛感したんです。そこから、時価総額の大きな優良株を主軸にする今のスタイルに修正していきました。
復職、転職、そして独立。仕事の波乱が投資の時間軸を変える
トウシル:投資だけでなく、キャリアの方もかなり波瀾(はらん)万丈ですよね。
ちょる子さん:2021年に仕事復職しましたが、2023年には長年勤めた製薬会社を退職しました。
その後、上場企業の広報職に転職したのですが、1年ほどでまた転職をし、今度は猛烈な忙しさで適応障害になってしまい、2024年に退職。短期離職の後、現在は、自分の会社を立ち上げて独立しています。
トウシル:すさまじい展開です。仕事が忙しくなると、投資スタイルも変わるものですか?
ちょる子さん:ガラリと変わりました。会社員として拘束時間がある以上、1日中画面を見るデイトレは物理的に無理です。そこで、数日から数週間スパンで利益を狙う「スイングトレード」に移行しました。
トウシル:それにしても、それだけの結果を出すには相当な準備が必要ですよね。情報収集はどのようにされていたんですか? やっぱり、夜な夜な分厚い決算書を読み込んだり……?
ちょる子さん:実は、当時は決算書なんて全然見ていなかったんです(笑)。
トウシル:ええっ、見ないで買っていたんですか!?
ちょる子さん:はい。代わりに徹底的にチェックしていたのが、リアルタイムの「値動き」と「私設取引システム(PTS)」の反応です。今でも決算書や会社四季報をじっくり読み込むタイプではないんですが、ただ「決算期」というタイミングだけは猛烈に意識していますね。
トウシル:具体的に、決算期には何をチェックするんでしょう。
ちょる子さん:決算期のX(旧Twitter)は情報の宝庫なんです。タイムラインを眺めていると、すご腕の投資家さんたちが「次は建設がくる」「半導体のこの銘柄の決算が良かった」といった感想をリアルタイムで発信していますよね。それらの情報とPTSの動きを照らし合わせて、本当の波はどの業種に来ているのか、先回りして拾いに行きます。
一から自分で分析するよりも、すでに上がっている情報や、反応が良い情報を効率的に見に行くスタイルが、私には合っているんだと思います。
5,000万円が溶けた日。令和のブラックマンデーで見えた自分の限界
トウシル:2024年8月、いわゆる「令和のブラックマンデー」は無事に乗り越えられたのでしょうか…?
ちょる子さん:たった数日で5,000万円が溶けました。これ、理由が明確なんです。私、暴落時に買うための指標として「日経VI(ボラティリティー・インデックス)」を重視しているんですね。当時は「日経VIが20を上回ったら買い」というルールに従って、東京エレクトロンをどんどんフルレバレッジ(レバレッジを最大限にかける)で買い下がっていたんです。
トウシル:暴落こそチャンスだ、と買い向かったわけですね。
ちょる子さん:ところが、一向にリバウンド(反発)がきません。
トウシル:それはもう異常事態ですね。
ちょる子さん:結局、年前半の利益を全て含み損が上回ってしまったので、ルール通りに損切りしました。フラフラになりながら仕事先で「5,000万円溶かしてきました」ってネタにして話してましたけどね(笑)。
でも、この負けは、当時の「私の限界」だったと受け入れています。あの時は仕組みが分からなくて恐怖に負けましたが、その後、猛勉強してオプション取引の需給が相場にどう影響しているかを理解しました。
トウシル:失敗をそのままにしないのが、ちょる子さんの強さですね。
ちょる子さん:実際、この間のイラン情勢によるショックも全く同じ構造だったんです。「これはオプションの需給由来だな」と冷静に判断できたので、今回はしっかり利益を出せました。今の知識量なら、あのブラックマンデーも勝てていたんじゃないかと思います。
資産が少ないうちは入金力を優先。初心者がまねできる投資の第一歩
トウシル:ちょる子さんのような「一点集中」や「フルレバ」の勝負強さに憧れる読者は多いと思いますが、初心者にはなかなか厳しいトレードです。初心者でもまねできる「億への入り口」ってあるんでしょうか?
ちょる子さん:まず、一点集中は絶対にまねしちゃダメです(笑)。もし私が今、元手240万円の会社員に戻ったとしたら、最初は投資の手法を磨くよりも、徹底的に「支出」を削ることに全振りしますね。1,000万円ためるまでは、運用の利回りより「入金力(種銭を作る力)」の方が圧倒的に資産形成のスピードを早めてくれますから。
トウシル:前編でも仰っていた「1円を拾うマインド」が、結局は一番の近道だと。
ちょる子さん:そう。その上で、いきなり新興株のようなボラティリティ(価格変動)の激しい銘柄に突っ込むのはただのギャンブルです。まずは誰もが知る大型の優良株が暴落した時だけ拾いましょう。資産が少ないうちこそ短期で大きく増やそうとせずに、「負けない経験」を積み重ねることが大事です。
トウシル:「負けない経験」ですか。
ちょる子さん:はい。あとは自分のリスク許容度、つまり「いくら負けたら耳鳴りがするか、寝られなくなるか」を、身をもって知ることが大切です。それを理解した上で、自分なりの「勝てるストーリー」が描ける銘柄に、少しずつ勇気を持って張りましょう。それが億への王道だと思いますし、私はそうやって自分自身の感覚をアップデートしてきました。
5歳で株主総会へ。娘に伝える資本主義と「自分でつかみ取る」力
トウシル:その徹底した自立心や勝負勘は、お子さんたちにも伝えていきたいですか?
ちょる子さん:もちろんです! 実は2025年、当時5歳だった娘を連れて、東京エレクトロンの株主総会に行ったんですよ。パレスホテルの入り口で止められたんですが、未成年口座で株を保有していたので「この子も株主ですから」と受付を突破しました。
娘自身は「つまんない」って言ってましたけど、それでいいんです。幼いうちから、大人が真剣に物事を決めている空気を見せることが大事だと思っているので。
トウシル:5歳で総会デビューはすごすぎます(笑)。日常でも何か工夫されているんですか?
ちょる子さん:娘の口座でもサンリオ(8136)やゼンショーホールディングス(7550)の株を持っていて、優待が届くたびに「これはママが買ったんじゃなくて、あなたが株主として応援しているから、もらえたんだよ。あなたのおかげで、みんなでご飯が食べられるね、ありがとう」と伝えています。社会の仕組みを肌で感じてほしいんですよね。
トウシル:すてきですね。ちょる子さんのことですから、教育もかなりスパルタな予感が…。
ちょる子さん:甘やかしは一切しませんよ。お菓子が欲しいと泣いても「本当に欲しいなら、その価値があるのか自分で考えなさい」と突き放します。親が先回りして与えてしまったら、本気で知恵を絞る人間にはなれませんから。
私が極貧時代に培ったような「飢餓状態」こそが、自分の人生を切り開く一番のエンジンになると思っています。その経験を娘たちにも伝えていきたいですね。
トウシル:最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
ちょる子さん:私には特別な才能があるわけではありません。105円のパンをかじっていた極貧時代から、5,000万円を溶かした今まで、ずっと「自立したい、上に行きたい」という枯渇感をエンジンにしてきました。
著書『ママ投資家が育休中に1億貯めた株式投資』には、私がどうやって地獄のような状況から資産を築いたのか、その全てのロジックと泥臭い経験を詰め込みました。投資は、自分の強みを試す最高のゲームです。この記事や本が、皆さんが自分の人生を自分で切り開くきっかけになればうれしいです!
▼前編はこちら
元手234万円から資産5億円へ。1日100円生活が育てた「1円を拾う」投資家マインド:ママ投資家・ちょる子さんインタビュー前編
(トウシル編集チーム)

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