2026年7月19日(日)0:00~順次配信がスタートする新作アニメ『サイボーグ009 ネメシス』は、009たちに代わって世界に安寧をもたらす存在として決起した9人のサイボーグチーム「ネメシス」が新たに登場する物語。いわば“もうひとつのサイボーグ009”たちに注目が集まっています。


原作はもちろん石ノ森章太郎先生。その石ノ森先生が作詞を手がけ、いまだ根強い人気を誇るアニメ『サイボーグ009(1979年版)』の主題歌「誰がために」が、杏子さんのハスキーかつパワフルなボイスでカバーされおり話題になっています。

マンガ家として数々の作品を残してきた石ノ森先生ですが、実は作詞も手がけており、なんとその数は100曲近くにのぼるとか! そこで本稿では「誰がために」をはじめとする先生の作詞楽曲をピックアップし、先生ならではのフレーズや詩の世界を辿ろうと思います。

◆さすがマンガ家!のワード選び
昭和のアニメ主題歌といえば、歌詞に番組のタイトルが入っているのが特徴的です。しかしタイアップと呼ばれる、アーティストの楽曲をそのまま使用するアニメでは一般的な歌詞の楽曲になることが多く、そのアーティストが普段のライブでも歌えるよう番組タイトルがなかったり、作品の世界観に即していなかったりする内容になることも珍しくありません。

しかし石ノ森先生が書く歌詞は作品の内容に即しているばかりか、それ自体がひとつの物語性を持つようなテイストが多く、歌詞に注目して聞くと「さすがマンガ家」と思わされるような内容となっています。ワードのチョイスが秀逸であるため、歌詞だけで「誰が」「何に対して」「どのような動機を持って」「どのような活躍をするのか」等が端的に盛り込まれており、歌詞を見ただけで第1話を視聴したような情報が得られる、ていねいな歌詞になっていることが多いと言えます。

たとえば『仮面ライダーV3(1973年)』は両親と妹を殺された風見志郎が、“力の1号”こと1号ライダーと、“技の2号”こと2号ライダーの改造手術によって3人目の仮面ライダーに生まれ変わる物語です。そのため歌詞では、「力と技の風車が廻る」とV3のアイデンティティーとも言うべき変身ベルトをたったひと言で形容し、「父よ母よ妹よ」で復讐物語であることを表現しています。

また『仮面ライダーアマゾン(1974年)』では、アマゾンで育った野生児が主役ということもあり、「ア、マ、ゾーン!」というあの雄叫びからはじまり、「大空に聞け、俺の名はアマゾンライダー、ここにあり」で野生児であることを表現し、「牙がひかるぞ」や「爪がうなるぞ」というワードで荒々しいファイトスタイルを表現しました。実際、アマゾンはそれまでの先輩ライダーと異なり、噛みついたり爪で切り裂いたりとワイルドなファイトスタイルが特徴です。それらの特徴を短いワードで表現するという、小さな的を矢で射抜くような「これしかない!」という言葉選びがされていました。


どのような容姿でどのような必殺技を繰り出すかといった情報も盛り込まれ、一切の無駄がなく基本的な情報がすべて印象的に盛り込まれており、名場面さながらの歌の世界観に視聴者は引き込まれるというわけです。

なお『仮面ライダー』(1971年)の主題歌「レッツゴー!! ライダーキック」は、「迫るショッカー、地獄の軍団」から始まる楽曲となっており、ヒーローものとしては珍しく悪の組織ショッカーがどれだけ悪い組織なのかを印象付ける構成になっているのが特徴です。なにしろ仮面ライダーはその悪の組織で作られた“怪人”であり、ライダーはショッカーから見たら反逆者。悪の組織を中心に物語が組み立てられているところが本作の特徴であり、そのことを熟知する本人だからこそ表現できた歌詞だと言えるでしょう。

そのほか石ノ森先生の遊び心が感じられるのは、『秘密戦隊ゴレンジャー(1975年)』と『仮面ライダースーパー1(1980年)』です。ゴレンジャーは5人のヒーローが5色に、スーパー1は「ファイブハンド」と呼ばれ5色のグローブが特徴になっていることから色を意識した歌詞になっていました。

「進め!ゴレンジャー」の歌詞の一節、「真っ赤な太陽」「青い空」「黄色い砂塵」「ピンクの頬」「吹かせ緑の明日の風を」はゴレンジャーの各メンバーを、「仮面ライダースーパー1」の歌詞の一節、「青い宇宙から」「緑の地球を救う者」「赤い正義の」「銀の機械の腕ふるう」「金の心を持つ男」はファイブハンドを表しているというわけです。

◆『誰がために』に込められた“大人のためのアニソン”の世界観
それでは『サイボーグ009(1979年)』の「誰がために」はどうでしょうか?

「誰がために」は1979年の楽曲ということで、本来なら「アニメは子供のもの」という概念が一般的な時代。同じ時代のアニメには『機動戦士ガンダム』『ザ☆ウルトラマン』『ゼンダマン』などがあり、いずれも当たり前のように番組タイトルが歌詞に含まれています。

ところが「誰がために」は“サイボーグ戦士”というワードが入っていながら番組タイトル自体は入っておらず、比喩表現や小学生には伝わり辛い表現が多用されています。009たちを表現する「9人の戦鬼」や「地獄の使者」、「涙で走る血の大河」などなど……。直接表現が少ない分、歌詞から得られるイマジネーションが豊富で、なおかつサイボーグ戦士たちの悲哀や苛烈な戦いが脳裏に甦る、熱い歌詞となっているのが特徴です。
その点において、子供も意識しつつ、高い年齢層にもリーチする、とてもバランスの良い配分となっています。はたしてなぜ、このような歌詞になったのか?

『サイボーグ009』は1964年に「週刊少年キング」に掲載され、1966年に長編映画化、1968年に初のTVアニメシリーズがモノクロで放送されました。「誰がために」の『サイボーグ009』は、その初TVアニメ化から約10年後のいわゆるリメイク作品で、漫画版から愛読しているファンにとっては15年もの時間が経過しています。つまり視聴対象者には大人も含まれていると考えられ、その“前作ファン”が歌いたくなるようなトーンの歌詞およびメロディーになったと考えられるわけです。

なお監督を務めたのは高橋良輔氏。後に『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』『機甲界ガリアン』『蒼き流星SPTレイズナー』の原作(共同原作を含む)を手がけるクリエイターという点からも作品のトーンが何となくお分かりになるでしょう。

その1979年版『サイボーグ009』の主題歌として根強い人気を誇る名曲「誰がために」が、このたび発表された新作『サイボーグ009 ネメシス』で現代アレンジされ、パワフルなボーカルが魅力の杏子さん熱唱する。すでにPVでその片鱗が聴けますが、早くも血沸き肉躍る内容となっており本編の配信が楽しみです。

■紹介作品タイトルと主題歌一覧
・サイボーグ009(1979年版) 「誰がために」
・サイボーグ009 ネメシス(2026年7月配信)誰がために(杏子によるカバー)
・仮面ライダーV3(1973年)「仮面ライダーV3のテーマ」
・仮面ライダーアマゾン(1974年)「アマゾンライダーここにあり」
・仮面ライダー(1971年)「レッツゴー!! ライダーキック」
・秘密戦隊ゴレンジャー(1975年)「進め!ゴレンジャー」
・仮面ライダースーパー1(1980年)「仮面ライダースーパー1」

▼放送情報

『サイボーグ009 ネメシス』
2026年7月19日(日)0:00~順次配信スタート
<キャスト>
009/島村ジョー:梶裕貴
001/イワン・ウイスキー:皆川純子
002/ジェット・リンク:宮野真守
003/フランソワーズ・アルヌール
早見沙織 004/アルベルト・ハインリヒ
杉田智和 005/ジェロニモ・ジュニア
安元洋貴 006/張々湖:かぬか光明
007/グレート・ブリテン:利根健太朗
008/ピュンマ:林勇
ギルモア博士:山路和弘

N009/グラビトン:中村悠一
N001/ミュウ:日高里菜
N002/ブリザード:細谷佳正
N003/クラック:神谷浩史
N004/オプロ:井上喜久子
N005/アスピダ:稲田徹
N006/ブリッツ:若山詩音
N007/モーフィン:内田真礼
N008/デプス:佐倉綾音
ゴルバート博士:奈良徹
イスパノ:下野紘

<スタッフ>
・原作:石ノ森章太郎(「ノ」の字は、約60%縮小が正式表記)
・監督:安保英樹
・脚本:冨岡淳広、キャラテックス
・キャラクターデザイン:sanorin
・オープニング主題歌:「誰がために」杏子(オフィスオーガスタ)

・エンディング主題歌:「クライマル」スキマスイッチ(オフィスオーガスタ)
・アニメーション制作:アレクト
・製作:石森プロ

(C)石森プロ
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