2026年6月2日、キオクシアはIR Dayを開催した。AIエージェント時代にNAND(SSD)が重要なキーデバイスとなったことが解説され、当面は業績サイクルの底が浅くなり、高水準の売上高、利益が続く見通しも示された。
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:キオクシアホールディングス(285A、東証プライム)、マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ)
1.キオクシアホールディングス、IR Dayを開催。再度データセンター向けNAND、SSDの需要が強いことを示す。
今回は、2026年5月18日付け楽天証券投資WEEKLY「メモリ株はまだ買えるのか(マイクロンの目標株価を1,100ドルに引き上げる。キオクシアの目標株価を8万5,000円とする)」の続編です。結論は前回と同じです。メモリ株はまだ買える、投資することができると思われます。ただし、米国の金利には注意する必要があります。
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2026年5月18日: メモリ株はまだ買えるのか(マイクロンの目標株価を1,100ドルに引き上げる。キオクシアの目標株価を8万5,000円とする)
2026年6月2日、キオクシアホールディングス(以下キオクシア)は機関投資家、アナリスト向けにIR Dayを開催しました。要旨は以下の通りです。
1.NAND型フラッシュメモリの2028年までの年平均成長率は20%強で、このうちデータセンター向け需要が同46%増と高い成長率になる見込み。
2.生成AIの中心が「学習」から「推論」になり、さらにAIエージェントの「推論」が中心になって、SSDの重要性が飛躍的に高まってきた。従来の推論は、一つの質問、指示に対して一つの推論が発生していた。ところが、AIエージェントでは、AIが自律的に推論を繰り返すため複数の推論が発生し、さらにRAG (Retrieval Augmented Generation、検索拡張生成。学習した素材や社内のデータベースの中から回答を導き出せない場合、AIエージェントが社外のデータベースやWebサイトを検索し、回答(文章、画像、映像、プログラムなど)を作り出す技術)や他のAIとの連携が行われる場合がある。このため、DRAMの容量では足りず、SSDへの書き込み、読み出しが頻繁に行われるようになり、これまでよりも高速大容量のSSDが要求されるようになった。
また、生成AIの効率的な運用のためにKVキャッシュ(生成AIが作成した過去の成果物の内容を記録しておくこと)が拡大しているが、HBMの容量が足りない状況になっており、SSDへの書き込み、読み出しの頻度が多くなっている。ここでもSSDの大容量高速化が必要になっている。
推論の多段化、長文化に加え、生成結果が急増しているため、これを保管するために大容量高速SSDも重要になり需要が増えている。
3.AIエージェントにおいてSSDの役割が重要になっているが、3つの分野で各々別のタイプのSSDの新製品で対応している。
まず、ストレージを単なる補助領域として扱うのではなく、実質的なメモリ階層の一部として活用することを目的とした「KIOXIA CMシリーズ」。推論GPUサーバーに対応する(AIエージェントシステムのサーバーは、推論GPUサーバー、RAGサーバー、ストレージサーバーの3種類がある)。最先端のNANDを採用しさらなる大容量化に対応した。
次に、AIエージェント特有の推論回数増加による高頻度のデータアクセスに対応した「KIOXIA GPシリーズ」。GPUと直接連携することにより、SSDをHBMの拡張、補完領域として活用することが可能になる。推論GPUサーバーとRAGサーバーに対応する。
最後に、AIエージェントで起こるデータ量の急増に対応する「KIOXIA LCシリーズ」。ストレージサーバーとRAGサーバーに対応する。
この3種類のSSDがキオクシアの中核製品となる。
4.キオクシアのNAND型フラッシュメモリの製品シリーズで独自の生産技術を採用した 「BiCS FLASH」は現在第8世代。業界最高水準の大容量化、高性能、電力効率を実現したため、顧客からの評価が高く、現在多数のプロジェクト向けに量産を拡大中。
今後は大容量版の「第10世代」、高性能版の「第9世代」に分かれるとしている。
5.設備投資は、2026年3月期2,837億円に対して2027年3月期~2029年3月期は年平均4,700億円を計画。顧客との複数年供給契約(LTA)などに基づき規律ある投資を行う。
6.今後の業績サイクルについて、会社側は足元の強い需要と高水準の利益率が続くことを想定している。サイクルはあるが、サイクルの底が浅い、かつての様な激しいサイクルではない状態を想定している模様で、「スーパーサイクル」に入っていくと考えられるとしている。今の高い投下資本利益率(ROIC)も維持することを目指す。
7.株主還元については、キャッシュフローをベースに、キャッシュフローに対する株主還元率を(仮にとしているが)50%と考えている模様だが、これは成長投資(M&A等)の中身、金額によって変動する模様。来期から配当実施を検討しているが、業績によっては今下期からの配当開始もあり得るとしている。キャッシュフローが想定以上に増加した場合は、特別配当、自社株買いも検討するとしている。
2.キオクシアの2028年3月期楽天証券業績予想を上方修正する。
今回のIR Dayを踏まえて、キオクシアの2027年3月期楽天証券業績予想は変更しませんが、2028年3月期楽天証券業績予想は上方修正します。
楽天証券の2027年3月期業績予想を変更しないのは、2027年3月期1Q(2026年4-6月期、以下今1Q)の会社予想は決算発表時に提示されており、今回のIR Dayではこれが維持されていますが、今2Q以降の業績について示唆するコメントがなかったためです。前回の楽天証券業績予想では、今2Qから今4Qまでの売上高を前四半期比10%強の伸びとして、来期の1~4Qは前四半期比でそれよりも低い伸びとしました。
ただし、今回のIR Dayでは、AIデータセンターにおいてはNAND(SSD)が単なる情報の格納庫ではなく、AIエージェントが大量の推論を高速で効率的に行うための重要な先端半導体であることが確認されました。さらに、SSDを3分野にセグメント分けして、各々最適な製品を供給することも示されました。このようなセグメント分けをすると、今のようにSSDの需給が逼迫した状態では、従来よりも平均販売単価が高くなり、一定の上昇が続く可能性があると思われます。
そこで、楽天証券の今2~4Qの売上高は前回同様前四半期比10%強の伸びとしましたが、今回は来期1~4Qも前四半期比10%強の増加率で売上高が増加すると予想しました。
このように考え、キオクシアの業績予想を、2027年3月期は前回と同じ売上高8兆2,000億円(前年比3.51倍)、営業利益6兆2,100億円(同7.13倍)、2028年3月期は前回予想を上方修正し、売上高12兆5,000億円(同52.4%増)、営業利益9兆9,000億円(同59.4%増)と予想します。
表1 キオクシアホールディングスの業績
表2 キオクシア:アプリケーション別売上高(四半期)
表3 キオクシア:アプリケーション別売上高(通期ベース)
グラフ1 キオクシアホールディングスの設備投資(通期)
グラフ2 キオクシアホールディングスの売上高、営業利益
グラフ3 キオクシアホールディングスの営業利益率
3.キオクシアホールディングスの目標株価を8万5,000円から12万円に引き上げる。
今後6~12カ月間のキオクシアホールディングスの目標株価を、前回の8万5,000円から12万円に引き上げます。マイクロン・テクノロジーの6月5日終値864.01ドルベースでの2026年8月期楽天証券予想株価収益率(PER)13.6倍を参考に15倍前後の想定PERを当てはめました。
キオクシアはNANDの市場シェアで実質的にサムスン電子に次ぐ2位で(キオクシア=サンディスク連合として捉えると)、技術的には業界トップ水準と思われます。また、DRAMメーカー大手3社はいずれもSSDメーカーでもありますが、3社とも汎用DRAMとHBMに生産を集中しているため、増産余力はキオクシアが大きいと思われます。
目先は、米国の金利上昇の影響で値動きの激しい展開になる可能性もありますが、引き続き投資妙味を感じます。
表4 NAND型フラッシュメモリのメーカー別売上高と市場シェア
4.マイクロン・テクノロジーの業績予想は変更しないが、目標株価は前回の1,100ドルから1,500ドルに引き上げる。
今回のキオクシアのIR DAYはNANDとSSDについてのものです。また、GPUとSSDを直接連携する場合、GPUとSSDの間のDRAMはなくなります。DRAMは容量拡大に限界があるためSSDが重要になるというコメントも各所でありました。
これらはDRAMにとって不利になる話ですが、実際には超大型AIデータセンターにおけるSSDとDRAMの需要は大きく、今後もさらに需要が拡大すると思われるため、マイクロンの好業績は今期2026年8月期だけでなく、来期2027年8月期も続くと予想されます。
今回はマイクロンの楽天証券業績予想を変更しませんが、今後6~12カ月間の目標株価は前回の1,100ドルから1,500ドルに引き上げます。楽天証券の2027年8月期予想1株当たり利益(EPS)125.04ドルに2026年8月期予想PERをベースに想定PER13~14倍を当てはめ、足元の金利上昇を考慮し、一定のディスカウントを行いました。
キオクシアと同じで、目先は、米国の金利上昇の影響で値動きの激しい展開になる可能性もありますが、引き続き投資妙味を感じます。
2026年8月期3Q(2026年3-5月期)決算発表は、6月24日(水)(現地時間)に予定されています。
表5 マイクロン・テクノロジーの業績
グラフ4 マイクロン・テクノロジーの設備投資:年度ベース
グラフ5 マイクロン・テクノロジーの売上高、営業利益
グラフ6 マイクロン・テクノロジーの営業利益率
表6 DRAMのメーカー別売上高と市場シェア
本レポートに掲載した銘柄:キオクシアホールディングス(285A、東証プライム)、マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ)
(今中 能夫)

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