OPECの声明文は、一見すると定型的な表現が並ぶだけです。しかし記述を丁寧に追うと、産油国の本音や将来の政策の方向性が浮かび上がることがあります。
中東情勢悪化で岐路に立たされるOPECプラス
図1は、足元の原油相場を取り巻く環境を示しています。中東情勢(ホルムズ海峡やレバノン情勢、石油輸出事情)悪化、産油国間のバランスの乱れ、主要国の金融政策引き締めムードの強まり、米国の原油在庫減少、などの四つのテーマが、原油相場に大きな影響を与えています。
図1:原油相場を取り巻く環境(2026年3月以降)
中東情勢の悪化が起点となって、その他の三つのテーマの影響が大きくなっているといっても過言ではありません。とはいえもともと、原油相場に大きな影響を与えていたテーマがあります。産油国間のバランスの乱れです。
ここで言う産油国とは、22の産油国で構成するOPECプラスのことです。図2のとおり、石油輸出国機構(OPEC)は11の加盟国で構成される産油国のグループです。ここに11の非加盟国が加わり、OPECプラスと呼ばれています。(2026年6月時点)
こうした産油国の間のバランスが、中東情勢の悪化が起点となり、乱れ始めています。後述する協力宣言配下の減産を実施している国々の原油生産シェア(合計)は、1年前の42%から約38%に大きく低下しました。(2026年5月時点)。
図2の協力宣言配下の減産実施国の原油生産シェアが大きく低下した背景には、やはり中東情勢の悪化が挙げられます。ホルムズ海峡が事実上封鎖されたことによって原油生産量を少なくする必要に迫られている国が複数あります。攻撃を受けて施設が損傷し原油の供給を行えなくなっている国もあります。
図2:OPECプラスについて(2026年6月時点)
今回は、中東情勢の悪化によって大きな影響を受けつつ、それでいて、もともと行っていた原油の減産(人為的な生産量削減)方針を決定しなければいけないタイミングにあるOPECプラスについて、さまざまな資料をもとに原油相場の今後について考えます。
基本的には、産油国のグループであるOPECプラスにとって、原油生産シェアの大きさは、原油市場における影響力の大きさとも言えるため、原油生産シェアを高くしたいと考えているようです。それと同時に、原油輸出で得られる収入の額に大きな影響を与える単価に相当する原油価格を高くしたいとも考えているようです。
第40回・第41回会合から読み取れる思惑
図3は、OPECプラス全体で行われた会議(OPEC・非OPEC閣僚会議)の要旨です。第40回は2025年11月30日、同41回は2026年6月7日に行われました。大きな項目は八つあり、その中の1から5については、内容がほとんど変わりませんでした。
図3:OPEC・非OPEC閣僚会議(第40回・41回)
しかし、6と7については、大きな進展がありました。おおむね、第40回会合が「制度・計画を作る会合」であったのに対し、第41回会合は「作った制度・計画を承認する会合」という位置付けという色が濃くなりました。
もともと、協調減産は2026年12月に終わり、自主減産も同年後半に縮小が完了する見込みです。こうした中、第41回会合を経て、2027年の協調減産の制度・計画が一段階進んだと言えます。
協調減産の基準を策定する上で重要な最大持続可能生産能力(MSC:Maximum Sustainable Production Capacity)について、第40回会合では、参加国のMSCを評価するためにOPEC事務局によって策定された仕組みを承認した(approved the mechanism developed by the OPEC Secretariat to assess participating countries’MSC)、とされました。
このMSCについて、第41回会合では、MSC評価を完了することの重要性を再認識した(reaffirmed the importance of completing the assessment of MSC)、とされました。
第40回会合が評価方法を承認し、その後の第41回会合で評価を完了させる重要性を確認したことがうかがえます。協調減産の基準を策定する上で重要なMSC評価がより現実的になった可能性があります。
また、協力憲章(CoC)について、第40回会合では、OPEC事務局に対し、CoCの目的を達成するための計画策定を指示した(requested the OPEC Secretariat to develop a plan to achieve all the objectives of the CoC, as originally mandated)、とされました。
このCoCについて、第41回会合では、CoCの目的達成のためにOPEC事務局が策定した計画を承認した(approved the plan developed by the OPEC Secretariat to achieve the objectives of the CoC)、とされました。
第40回会合が事務局に計画策定を指示し、その後の第41回会合で事務局が作成した計画を加盟国が承認したことがうかがえます。OPECプラスの結束を強める上で重要なCoCがより実効性を持つようになった可能性があります。
MSCとCoCが、第40回から第41回会合にかけて「仕組みや計画を作る段階」から「実行・運用段階」に移ったと言えます。これらの前進は、OPECプラスが、2027年1月以降も協調減産を継続するための地ならしであると、筆者はみています。
図4は図3にある用語の補足です。協力宣言(CoC)は、参加国間の対話を促進する枠組みであり、石油市場の安定化や技術分野などでの協力を促進することを目的としています。
図4:DoC、CoC、第38回OPEC・非OPEC閣僚会議の概要
高まる協調減産継続の温度感
第40回会合は2025年11月30日に、第41回会合は2026年6月7日に行われました。第41回会合は、同年2月28日に急速に悪化したイラン情勢の動向(足元の情勢の受け止めと先々の見通し)を反映していると言えます。
図5は、協調減産と自主減産のイメージ(2026年6月時点)です。目下、MSCの議論が進展していることから、2027年以降も協調減産が継続する可能性が高まっていると言えます。CoCの進展も、それを補強する意味を持っています。
仮に、次回の42回会合(2026年11月29日)で協調減産を継続することを決定するとなると、協調減産の基準量のほか、その基準量からどれだけ減産するのか(減産の規模)、期間はどうするか、などが明示されることになります。
図5:協調減産と自主減産のイメージ(2026年6月時点)
継続した場合、市場ではOPECプラスが原油価格を高止まりさせたい(収益を維持したい)という強い意志を持っているという思惑、さらには、相対的に原油生産シェア(市場での影響力)と供給安定化(供給者としての立ち位置)の優先度を下げている、との思惑が広がる可能性があります。
終了した場合、市場ではOPECプラスが原油生産シェア(市場での影響力)を上げ、供給安定化(供給者としての立ち位置)を強化するという強い意志を持っているという思惑、さらには、原油価格を高止まりさせる(収益を維持する)ことの優先度を下げている、との思惑が広がる可能性があります。
図6:協調減産をめぐる思惑(イメージ)
また、6月7日に行われた7カ国の自主減産を実施している国々の会合で自主減産を縮小することが決定し、それが「増産」との受け止めが広がりました。しかし、背景が自主減産の縮小であるため、その増産には限度があるのです。
また、昨年・今年に示された計画によれば、図内のとおり、自主減産は2026年後半に縮小が完了する見込みです。縮小が完了すれば、OPECプラスの増産枠がほぼなくなることを意味します。
ホルムズ海峡封鎖も減産継続の動機に
第40回会合から第41回会合への変化を考慮すれば現時点で、ですが、OPECプラスは何らかの形で協調減産を延長する可能性が高いと言えます。これは中長期視点で原油相場に上昇圧力をかける要因になり得ます。
図7:NY原油先物(期近)日足終値の月間平均 単位:ドル/バレル
ホルムズ海峡が実質的に封鎖されていることにより、アラビア湾(ペルシャ湾)沿岸の産油国の原油輸出量が大幅に減少しています。この「量」のマイナス面を補うためには「質」、この場合は単価、つまり原油相場を高止まりさせることで、一定の収益を維持することができます。
こうした点も、OPECプラスが協調減産を継続する動機になると筆者は考えています。OPECプラスの動向を一つの要因とし、原油相場は図7のとおり、長期視点で高止まりする可能性があります。
[参考]エネルギー関連の投資商品(一例)
国内株式(NISA成長投資枠活用可)
INPEX(1605)
出光興産(5019)
国内ETF・ETN(NISA成長投資枠活用可)
NNドバイ原油先物ブル(2038)
NF原油インデックス連動型上場(1699)
WTI原油価格連動型上場投信(1671)
NNドバイ原油先物ベア(2039)
外国株式(NISA成長投資枠活用可)
エクソン・モービル(XOM)
シェブロン(CVX)
オキシデンタル・ペトロリアム(OXY)
海外ETF(NISA成長投資枠活用可)
iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF(IXC)
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド(XLE)
投資信託(NISA成長投資枠活用可)
シェール関連株オープン
HSBC世界資源エネルギー オープン
海外先物
WTI原油(ミニあり)
CFD
WTI原油・ブレント原油・天然ガス
(吉田 哲)

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