米雇用統計の堅調さと中東情勢の緊迫化により、米株市場は大幅安、週明けの日経平均株価も急落しました。ドル円は162円を目指して動くことになりそうですが、大規模介入にも警戒した方がよさそうです。

日銀会合やFOMCを控え、消費税減税など物価高対策に追われる高市政権にとって、来週は相場と政策の両面で正念場を迎えることになりそうです。


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米雇用統計と中東情勢の激化で市場は大幅安に

 先週6月5日(金)に発表された米5月雇用統計の失業率は前月と同じ4.3%でしたが、非農業部門雇用者数は予想8.5万人の増加を大きく上回る17.2万人の増加でした。過去2カ月分も+9.3万人の上方修正となりました。


・3月分
+18.5万人→+21.4万人(+2.9万人)
・4月分
+11.5万人→+17.9万人(+6.4万人)


 3カ月平均も前月の平均+7.9万人から一気に+18.8万人と20万人近くなったことから米労働市場の堅調さが確認されました。ただ、今週から始まるFIFAワールドカップ2026の影響で前倒しに求人が増えたとの見方もありますが(5月の娯楽・宿泊:+7万人)、年内利上げ期待は70%近くに高まりました。


 この内容を受けて、金利は上昇し、株は売られ、ドルは上昇しました。平均賃金の前年比は予想と同じ3.4%ですが、前月3.6%から低下しているため利上げが急速に進むとの見方までには至っていないようです。


 しかし、5日の米株式市場は米雇用統計の結果を受けて大幅安となりました。加えて、週末にイスラエルとイランの攻撃の応酬によって中東情勢の不透明感が強まり、週明け8日の日経平均は一時3,100円超の下落となり、過去5番目の下げ幅で取引を終えました(マイナス2,563.52円)。


 トランプ米大統領は「もう十分だろう」と攻撃停止を求め、戦闘は中断されました。しかし、イラン側はイスラエルがヒズボラ攻撃を続けるのならイスラエルへの攻撃を再開すると警告しました。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は、この警告は「容認できない」として、攻撃再開なら「圧倒的な力で反撃する」と反発しました。


 9日、ホルムズ海峡上空でイランが米軍ヘリを攻撃したため、米軍は自衛攻撃を開始したとのことです。

中東情勢は依然として先行きが見通せない状況が続いています。


162円の攻防と介入リスク。高市政権にとって正念場の週に

 ドル円は、介入警戒感もありドル高のスピードは鈍い動きとなっています。また、ドル高でユーロやポンドが下落しているためクロス円が下落(ユーロ安・円高)していることもドル円の重しになっていますが、それでもドル円は160円台で底堅い動きをしています。


 ドル円がこのままじりじりと円安に動けば、ドル円は、4月終わりの円安値160.70円近辺、そして2年前の162円近辺のチャートポイントを目指して動く可能性があります。チャートポイントをブレイクすると(上抜くと)一段とその方向に弾みがつくため、当局はその手前で介入を行う可能性があります。


 このチャートポイントを抜けると、ドル円は160~165円のレンジに入る可能性が高まり、そのレンジが定着すると、それ以上の節目となる5円刻みや10円刻みの大台節目を目指して動くことになります。そして1985年のプラザ合意の後に円高が進んだ200円まで、長期的には大きな節目がないため、当局にとっても背水の陣の気構えが強まることが予想されます。


 当局はチャートポイントだけでなく、このタイミングでの介入を意識している可能性があり、来週の日米金融政策会合の直後はドル円の変動が大きくなることが想定されます。


 現在の相場環境は、2024年の介入時とは金融環境が異なります。当時は介入の後、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを示唆したことでドル売り・円高に弾みがつき、大幅な円高となりましたが、今回は日本銀行が利上げをしても、FRBは利下げから利上げ姿勢に転じる可能性が高まっているため、日本当局も相当意識している可能性があります。


 日銀の植田和男総裁は3日の講演で利上げに前向きな姿勢を示したため一時的に円高に行きましたが、現状は既に円高前の水準以上に円安に戻しています。


 この動きから、市場は15~16日の日銀金融政策決定会合の利上げをほぼ織り込んだと思われます、市場は、0.25%だけの利上げでは円高は限定的だということを確認しました。従って日銀会合後の記者会見で追加利上げについて積極的な発言が示されないと円安に動く可能性があります。


 市場は、慎重姿勢ではなく追加利上げに積極姿勢になるかどうかを注目しています。もし、市場を失望させるような慎重姿勢の場合は、翌日にタカ派姿勢に転じる可能性がある米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えていることから、162円を目指して動く可能性が高まりそうです。


 日本当局は、シナリオとして円安に動くかもしれない日銀会合後の16日の夕方と、FOMC後の19日早朝(日本時間)を介入のタイミングとして待ち構えている可能性があります。しかし、相当大規模でないと効果は数日で切れるかもしれません。


 5日に発表された5月末の外貨準備高は1兆3,058億ドル(約209兆円)と4月末から771億ドル(約12.3兆円)減少しました。4月末から5月初めに政府・日銀が実施した為替介入(ドル売り・円買い)が影響したようです(4月28日から5月27日の為替介入総額:11兆7,349億円)。


 減少額の大半は米国債などを含む外貨証券(マイナス755.5億ドル、約12.1兆円)となっていることから、米国債を売却して介入原資に充当したことがうかがえます。


 外貨証券は9,316.8億ドル(約149兆円)でした。介入原資に限りがあるとの見方の根拠になっていた外貨預金は増加し(+3,800万ドル)、1,622億ドル(約26兆円)でした。介入原資には米国債も売却可能という姿勢を示したことになります。


 今回の介入について米国は容認していますが、介入原資として米国債の売却も当然容認していると推測されるため、介入原資はたっぷりあることを市場に知らしめたことになります。従って、162円手前や162円抜けた時には、これまで以上の大規模介入もあり得るということも留意しておいた方がよさそうです。


 消費税減税が議論されている中、物価高対策は高市政権にとって喫緊の課題であり、円安が加速することは何とかして避けたい気持ちは強いと思われます。しかし、ドル円が新たな円安ステージになれば、消費税減税や、電気・ガス代、ガソリン価格の政府補助金など物価高対策の効果も一挙に吹っ飛ぶ可能性があります。


 市場は思うようには動かないのが常です。高市政権にとっても正念場の週となるかもしれません。


(ハッサク)

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