今週の米株市場はAI相場が一服し、半導体株を中心に軟調な展開です。しかし、旺盛なAI需要への期待は根強く、足元の調整は一時的との見方も優勢です。

とはいえ、今後のAI相場は、期待先行の上昇から現実的な視点へと移行し、巨額の投資に見合う収益性や、ハイパースケーラーによる「投資の継続性」が新たな株価の見極めポイントとなりそう。


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AI相場はまだまだ続く?次の焦点はハイパースケーラーの「投資の持続力」(土信田雅之)
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今週の株式市場はAI相場が一服する展開

 今週の米国株式市場ですが、これまでのところ軟調気味に推移している印象です。


<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年6月11日時点)
AI相場はまだまだ続く?次の焦点はハイパースケーラーの「投資の持続力」(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 図1は、昨年(2025年)末を100とした、米主要株価指数のパフォーマンスを比較したチャートですが、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数の下落が目立っていることが確認できます。


 とりわけ、先週末6月5日(金)に見せた下落が大きく、この日のSOX指数は前日比で10%を超える急落となりました。今週に入ってからもこの流れを引き継ぎ、軟調な展開が続いている格好です。


 先週の半ばまで活況を呈していたAI相場がひとまず一服している様子がうかがえますが、その背景には、先週発表された米半導体企業のブロードコム(AVGO)決算で、業績見通し(ガイダンス)が市場予想に届かず、これが売りのきっかけになったことをはじめ、強い結果となった米5月雇用統計によって米国の金融政策の利上げ観測が高まり、米10年債利回りなどの金利が上昇したこと、大型の米国の株式の新規公開(IPO)を控えた流動性の引き締め(投資家がIPO銘柄を購入するために、保有している資産を売却してキャッシュを確保する動き)が挙げられます。


 そして、中東情勢に対する楽観的な見方が後退したことなども相場の軟調地合いにつながっています。


それでもAI相場はまだまだ続く?

 こうした値動きを目の当たりにすると、「このまま株式市場は下落トレンドを描いていくのでは?」と思ってしまいがちですが、今のところは、「足元の株価下落は目先の調整の範囲」という見方が優勢のようです。


 テクニカル分析的に見ていくと、10日(水)の取引終了時の米S&P500種指数とナスダック総合指数は、いずれも50日移動平均線がサポートとして機能しており、一応「下げ止まってほしい」ところに位置しています(図2と図3)。


<図2>米S&P500(日足)とMACDの動き(2026年6月10日時点)
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出所:MARKETSPEED II

<図3>米ナスダック総合(日足)とMACDの動き(2026年6月10日時点)
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出所:MARKETSPEED II

 反対に、下段のMACDが下向きで、しかもシグナルを下抜けるクロスも出現しており、下落トレンドが継続してしまう可能性も残されていますが、チャートをさかのぼってみると、昨年の半ばにかけて見られたように、MACDが下向きの一方で株価が上昇する、「トレンド継続型の逆行現象」で相場の上昇基調が続く展開も想定されます。


 目先の株価も荒っぽい値動きが想定されますが、その過程で「下値が着実に切り上がっていけるか」が、トレンド継続型の逆行現象となるかどうかの見極めポイントになります。


 また、相場の材料面では、旺盛なAI需要を背景にした強気の見通しが継続していることや、足元で不安が高まっている中東情勢についても、「結局は停戦および和平に向かって動いている」という見方が依然として優勢であること、そして、受け皿となる銘柄(バリュー株など)が存在していることなどが相場を支えていると思われます。


 実際に、11日(木)の国内株市場では、日経平均が前日比1,800円安からプラスに切り返す動きを見せるなど、下値で買いが入って大きく反発する動きを見せています(図4)。


<図4>日経平均の5分足チャート(2026年6月11日)
AI相場はまだまだ続く?次の焦点はハイパースケーラーの「投資の持続力」(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED II

 強気ムードの持続によって、足元の軟調な相場展開を「むしろ好機」と捉えて買いが入っている様子が感じられますが、とりわけ、旺盛なAI需要への期待については、「AIエージェント」や「フィジカルAI」などをキーワードに、AIがもたらす技術革新や領域拡大によって、これまで以上に爆増するデータを処理するのに必要な投資やインフラ設備への需要は続くことが見込まれます。


「AI投資需要の継続」は、現実的なシナリオとして今後の相場を支える、もしくは押し上げることになりそうです。


AI相場の次の焦点は「投資の継続性」

 とはいえ、AI投資はすでにかなりの規模で行われてきました。


<図5>ハイパースケーラーのキャッシュフローの状況
AI相場はまだまだ続く?次の焦点はハイパースケーラーの「投資の持続力」(土信田雅之)
出所:Bloombergデータを基に作成

 図5は、前回のレポートでも紹介した、米ハイパースケーラー4社(アルファベット(GOOGL、GOOG)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META))の営業キャッシュフロー(CF)の合計額と、投資CFの合計額の推移を示したものですが、時間の経過と共に投資キャッシュフローの金額が増加していることが分かります。


2026年6月5日: 米国株市場のIPOで知っておきたいコト(土信田雅之)


 さらに、足元では営業キャッシュフローの規模に迫っていて、本業で稼いだ資金のほとんどを投資に振り向けている状況になりつつあります。そのため、今後は「需要があっても、それに応えてさらに投資を続ける財務的な体力があるか?」が問われてくることになりそうです。


 もっとも、必ずしも「今すぐ」というわけではありませんが、現在のハイペースで投資を拡大し続けるには、以下の点がポイントになります。


【「投資額に見合った稼ぎ」がより厳しく求められる】


 以前より指摘されてきましたが、今後も投資が増え続けるということは、その分だけ「巨額の投資に見合うリターン」という成果を厳しく求められることになります。AI投資のマネタイズ(収益化)の伸びが投資額をカバーできるほど加速できなければ、投資ペースを減速せざるを得なくなります。


【インフラ整備の物理的制約とコスト負担】


 データセンターなど、最先端のAIインフラは電力消費量と発熱量が大きく、半導体や周辺設備の購入費に加えて、電力・建設用地の確保や冷却システム(空冷から液冷への移行)の導入などの追加コストがかかります。


 しかも、この追加コストそのものも、物理的制約がある中で獲得競争が激化し、想定以上にコストが肥大化してしまう可能性があり、実質的な投資リターンを圧迫する要因となります。


【マクロ環境のインフレ圧力】


 米国の強い労働市場や物価(インフレ)指標の高止まりを背景に、米10年債利回りなど金利の高止まり傾向が続いています。


 以前のレポートでも紹介しましたが、高金利の長期化は、許容できる株価収益率(PER)を引き下げることになり、将来の成長期待を先取りして買われていたAI関連株の理論株価を低下させるほか、企業の資金調達コストも引き上げるため、AI投資を抑制してしまうインセンティブとして働きやすくなります。


2026年5月22日: いまさら聞けないPER低下と金利上昇との関係(土信田雅之)


今後のハイパースケーラー決算の注目ポイント

 結局は、AI相場や関連企業を見ていく上で、「収益性(稼げるか)」や「財務リスク(投資を継続できるか)」、「競争優位性(生き残れるか)」という基本的な要素が焦点になり、今後の株価は、これまでの期待を先取りする上昇から、決算などの数字を見ながら段階的に上昇していくことになっていくと思われます。


 そこで、これからの企業決算では売上や利益の金額や成長率などとともに、少し細かいですが、以下の項目も注目ポイントになってくると思われます。


【決算書の「注記」と「コミットメント」の金額】


 最近のハイパースケーラーは、機関投資家やファンドと組んで、ジョイントベンチャー(JV)を設立して資金を調達する動きが活発化しています。


 JVによる資金調達は、初期の巨額な「設備投資」を、毎月の「オペレーション費用(リース料などの固定費)」に変換できるため、見た目の財務健全性を維持したままで実質的にインフラ投資が可能になるという企業側のメリットがあります。


 反対に、投資家側からすれば、AI投資の負債額が貸借対照表(B/S)に記載されないため、実態が見えにくくなるというデメリットでもあります。


 しかし、決算書の「注記」や「コミットメント」の項目で開示しなければならないルールがあり、例えば、今後5~10年にわたって支払う義務があるリース債務の記載があったり、購入コミットメントの総額などが急激に増えている場合、潜在的な負債が急増していることを意味するため、注意が必要です。


【営業費用の増加ペースと「営業利益率」の圧迫度】


 上記の「注記」のところでも触れましたが、JVによる資金調達によるインフラ投資額は「設備投資」ではなく、「オペレーション費用(固定費)」として計上されるため、営業利益率を圧迫する要因になります。


 そのため、ハイパースケーラーのクラウド・AI部門の営業利益率が低下し始めた場合、貸借対照表に載らない簿外の「重いリース料(固定費)」が本業の収益性を弱めている可能性があります。


 旺盛なAI投資需要を背景に最近までにぎわっていたAI相場の第二幕ですが、今後もまだまだ継続する見込みは高いものの、相場を見る目はより現実的になっていくと思われます。収益性や投資の持続力などを焦点に銘柄の選別が進む可能性があり、その中身を見極めていく必要がありそうです。


(土信田 雅之)

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