23日の日経平均株価は前日比2,565円安の6万9,788円と4日ぶりに7万円を割り込みましたが、ここ1年で3万円を超える上昇スピードは明らかに速すぎる。とすれば、いずれ本格調整が来るのでしょうか。
最近、日経平均株価の振れ幅が大きく拡大
6月23日の日経平均株価は前日比2,565円(3.6%)の大幅安となり、4日ぶりに7万円割れとなる6万9,788円で引けました。ただ、トランプ関税ショックでボトムを付けた2025年4月7日の水準に比べると、プラス3万8,651円、2.24倍の水準を維持しています。
<図表1 日経平均株価>
このところ、かなり速いペースで上昇していることは図表1から一目瞭然ですが、その上昇ペースの速さもさることながら、最近少し気になっているのが振れの激しさです。
実はこのレポートの書き出しは、10日に配信したレポート(「『ちゃんと』連動していた日経平均株価と名目GDP。でも、最近の株価上昇は行き過ぎ?」)の「月曜日(6月8日)の日経平均株価は前週末比2,563円(3.8%)の大幅安となり」とほぼ同じです。
2026年6月10日: 「ちゃんと」連動していた日経平均株価と名目GDP。でも、最近の株価上昇は行き過ぎ?(愛宕伸康)
そのくらい、2、3,000円の振れが当たり前のように起きているということですが、日経平均株価の前日差(絶対値)を5月以降で平均すると、なんと1,027円にもなります。2020年以降で見ても、前日差の振れが足もとにかけて大幅に拡大していることが確認できます(図表2)。
<図表2 日経平均株価の前日差>
「いやいや、株価水準が高くなっているのだから前日差が大きくなるのは当たり前だろ」、そう思われた方、鋭いです。前日との株価水準の差ではなく、騰落率でどうなっているかを見なければ、過去との比較はできません。そこで、図表2を前日比に替えたグラフを作成してみましたが、いまひとつ分かりづらかったので、前日比の標準偏差を紹介します(図表3)。
<図表3 日経平均株価(前日比)の標準偏差>
これを見ると、2020年春の新型コロナショック(図中①)、2024年7月に日本銀行が利上げした直後、たまたま米雇用統計が悪化して米国株が急落し、日経平均株価も連れ安となった2024年8月(図中②)、さらにトランプ関税ショックで急落した2025年4月(図中③)、の3時点で標準偏差が一時的に急拡大しています。
そして、2025年後半から足もとにかけても、多少の振れを伴いながら拡大傾向にあることが確認できます(図中の囲み)。つまり、前日比で見ても日経平均株価の振れは最近大きくなっています。ちなみに、インプライドボラティリティから作成される「日経VI」(日経平均ボラティリティ・インデックス、通称「日本版恐怖指数」)も似たようなグラフになります。
日経平均株価の振れの拡大は何を意味するのか~景気の変わり目?バブル?~
さて、問題はこの日経平均株価の振れの拡大がいったい何を示唆しているかです。不確実性の拡大なのか、センチメントの悪化なのか。よく長期金利の世界では、景気の変わり目に振れが激しくなると言われますが、果たして株価でもそうしたことが言えるのでしょうか。
<図表4 日経平均株価(前日比)の標準偏差と景気>
図表4は、日経平均株価の前日比の過去200日における標準偏差を、景気後退(図中のシャドー)と比較したものになります。これを見ると、バブル崩壊後の1990年代半ば、平成金融危機の1998年、ITバブル崩壊の2001年、リーマンショックの2008年と、いずれも日経平均株価の標準偏差拡大と景気後退が重なっていることが分かります。
ただ、注意しなければならないのは、標準偏差は株価が急騰しても急落しても拡大するということ。上述した四つの危機は、景気悪化懸念を伴いながら株価が急落しており、アベノミクスの2013年や新型コロナ禍明けの2021年など、景気拡大期待を背景とする株価上昇局面でも標準偏差は拡大しています。
ポイントは、株価変動の方向性と背景です。最近の株価上昇は、人工知能(AI)関連や半導体関連が主導する「AIラリー」が背景であり、景気後退懸念による株価下落でボラティリティが上昇しているような状況ではありません。過熱感、高値警戒感からの利益確定売りがボラティリティを高めながら、株価は上昇トレンドをたどっているとみるのが自然です。
日経平均株価はスピード違反?~ファンダメンタルズによる推計結果~
もちろん、実体を超えて株価が上昇し過ぎていないかに注意する必要はあります。バブルかどうかなんて事前に分かれば苦労ないわけですが、とはいえ過去と比較しながら、あるいは何らかの基準を用いて、現在の立ち位置を確認する努力は必要でしょう。そうした考え方のもとで、10日のレポートでは図表5のグラフを紹介しました。
<図表5 日経平均株価と名目GDP>
昨年まで日経平均株価が名目国内総生産(GDP)とおおむね整合的な動きをしていたことを示すこの図表5からすると、最近の7万円を超える日経平均株価は行き過ぎ、あるいはスピード違反と見ることができます。それが事実とすれば、行き過ぎた部分が調整される「ヘルシーコレクション」が起きても不思議ではありません。
と、名目GDPだけで語るのも無理があると思い、今回は念のため、2024年5月8日および8月28日のレポートで紹介した日経平均株価の推計を、改めてデータを伸ばして再推計してみました。結果は図表6に示したとおりです。
2024年5月8日: 米国景気の悪化で日経平均株価はどのくらい下がるのか~ストレステストのすすめ(愛宕伸康)
2024年8月28日: 株価の短期的な振れで一喜一憂しないために~日経平均株価マトリックス~(愛宕伸康)
<図表6 日経平均株価の推計結果>
図表6のグラフから、最近、日経平均株価の実績値と推計値とのかい離が大幅に拡大しており、2026年5月末の6万6,329円という日経平均株価は、推計値の5万6,232円より約1万円高い水準であることが分かります。
仮にその1万円程度の調整が今後発生したとしても15%の下落、昨日の引け値からだと約2割の下落であり、その程度の調整は過去に何度も起きています。その程度の調整なら「ヘルシーコレクション」といえ、それによって金融的なショックが起きるとか、景気が崩れるという話にはならないでしょう。
(愛宕 伸康)

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