今週は、日経平均が最高値を更新する一方、米国株や香港株は売りに押されるなど、パフォーマンスのバラツキが目立っています。基本的には上昇基調と言えそうですが、半導体メモリ市場での構造変化や、ハイパースケーラーのファイナンス、「天井パターン(トリプルトップ)」の形成など、当面の調整局面に向けた警戒感も高まりつつあります。
強さと弱さが併存する今週の株式市場
今週の株式市場ですが、これまでのところ、どことなく「捉えどころ」のない印象となっています。
<図1>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年6月25日時点)
※欧米市場は6月24日時点
図1は、昨年末を100とした国内外の主要株価指数のパフォーマンスを比較したもので、この連載レポートでもおなじみとなっています。
6月25日時点(欧米市場は6月24日時点)で見ると、荒い値動きながらも上昇を見せている日経平均株価の一方で、売りに押され気味の米国株市場、下落基調が際立っている香港ハンセン指数といった具合に、株価指数のパフォーマンスにかなりのバラツキがあります。
とりわけ、日経平均については、週初の22日(月)に初の7万2,000円台に乗せた後、翌23日(火)と24日(水)は続落し、一時は6万8,000円台まで下落したものの、続く25日(木)には反発して再び7万円台を回復、さらに、7万2,000円台まで値を伸ばして最高値を更新しており、「売られても、それを上回る買いが入っている」様子がうかがえます。
日経平均の値動きだけを見てしまうと、相場の強さが感じられるのですが、別の見方をすれば、他の株価指数と比べて値動きが突出しているともいえます。日経平均は指数算出の性質上、AI・半導体関連銘柄の寄与度が大きく、半導体関連銘柄で構成される米SOX指数の値動きに近くなっており、日経平均は良くも悪くもAI相場の動向に流されやすい面があります。
<図2>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年6月24日時点)
図2を見ても、米SOX指数の値動きが日経平均と似ているだけでなく、ここ1カ月間の株価の上げ下げが激しくなっている様子がうかがえます。
また、景気や金利の影響を受けやすい中小型企業で構成される米ラッセル2000は、安定的に推移しながらも、気がつけば昨年末比で20%を超える上昇となっており、米国景気の底堅さや、足元では中東情勢に対する楽観、それに伴うインフレ懸念の後退などが反映され、相場全体を支えている様子もうかがえます。
今週のAI相場を動かした材料に注意
これらを踏まえ、あらためて今週のAI・半導体関連銘柄の動向を材料面で見ていくと、最近までのAI相場をけん引してきた半導体メモリ関連企業で材料が相次ぎ、日経平均や米SOX指数などを大きく下げさせたかと思えば、急反発をもたらすなど、足元の相場を慌ただしくさせています。
まず、下落の材料としては、韓国のSKハイニックスが、現在注力しているAIデータセンター向けの高付加価値メモリの設備投資を抑えて、その生産能力を汎用メモリ製品市場に振り向ける方針に切り替えたと報じられたことが、冷や水を浴びせる格好になりました。
つまり、SKハイニックスとしては、「高コストかつ競争の激しい先端メモリを増産するよりも、普通のメモリにシフトした方がもうかる」と判断したわけです。
その背景には、SKハイニックスの先端メモリが搭載される予定だった米エヌビディア(NVDA)の次世代AIチップ「Rubin(ルビン)」の生産見通しが下方修正される可能性があること、そして、世界の半導体工場の生産能力の多くがAI向けに割かれているため、パソコンや一般のサーバーに使う普通のメモリが深刻な供給不足に陥っており、その結果として、普通のメモリの価格が急騰し、利益率が先端半導体よりも高くなっていることが挙げられます。
このことは、AI投資需要の減退を示すものではありませんが、最先端チップの生産コストが高くなっていることや生産そのものの遅れ、そして皮肉にも、旺盛なAI投資需要のウラで普通のメモリが足りなくなって高い収益率になっているという市場の構造変化が起きていることを意味します。
ちなみに、SKハイニックスについては、7月に米国預託証券(ADR)をナスダックに上場する方針が今週発表されました。
そのため、今後は米国株市場で新規公開株(IPO)銘柄としても注目されることになりそうです。
反対に、株価反発の材料となったのは、米国時間24日(水)の取引終了後(日本時間では25日(木)の朝)に発表された、米メモリ大手マイクロン・テクノロジー(MU)の決算です。売上・利益・ガイダンス(業績見通し)の全てで市場予想を上回り、あらためて旺盛なAI需要が確認され、時間外取引で同社の株価が急上昇する動きを見せた流れが日本株にも波及しました。
ただ、AI・半導体関連銘柄の好決算は、今回のように株価が下落基調にある時は反発のきっかけになるものの、前回の決算シーズンのように株価が上昇基調にあった時は余程のサプライズが無い限り、「材料出尽くし」となることも多く、さらなる業績上振れ期待が高まっていかないと、株価の上値を伸ばしていく展開になりにくくなってしまうことも考えられます。
当面は上値の伸びが焦点
そのため、今後の相場の焦点は、「直近の高値(日経平均ならば6月22日の取引時間中につけた7万2,831円)を超えて上昇基調を維持できるか?」と、「直近の高値を超えられず、しばらく相場の調整局面が続いてしまうのか?」になります。
これまでのAI相場では、前者のように急落の場面を迎えてはそれを乗り越える格好で上昇トレンドを描いてきました。
先ほども見てきたように、今週の日経平均も25日(木)の取引で終値ベースの最高値を更新しており、基本的には「株価の下値は堅く、相場はまだ上を向いている」というシナリオでよいかと思われます。ただし、米国株市場では、S&P500種指数やナスダック総合指数がチャートの形状に「天井パターン」を形成しつつある点には注意が必要です。
<図3>米S&P500(日足)とMACDの動き(2026年6月24日時点)
図3は米S&P500の日足チャートです。
6月24日時点の株価は50日移動平均線あたりに位置しており、チャートを過去にさかのぼっても、6月の上旬にこの50日移動平均線が株価のサポートとして機能していました。
また、直近で株価が下落していたとはいえ、6月2日の取引時間中につけた高値(7,620p)からは5%も下落していないため、基本的には上昇トレンドが続いているといえます。
目先のポイントは、株価が「25日移動平均線を上抜けできるか?」と、「直近の高値どうしを結んだ上値ラインを超えて、高値を更新できるか?」の二つになります。
早い段階でこの二つをクリアできないと、ローソク足の並びの形状がいわゆる「トリプルトップ」となり、相場の天井パターンになってしまう可能性があるほか、下段のMACDも下向き傾向が続いているため、下落トレンドへの意識が強まってしまいやすい点には注意が必要です。
なお、株価が調整局面入りする目安とされる「高値から10%安」の水準を図3で確認すると、ちょうど200日移動平均線あたりになります。
ナスダック総合指数も同様に、トリプルトップの形成が警戒されている状況のため、こちらも上値ラインを超えられるかがポイントになります(図4)。
<図4>米ナスダック総合(日足)とMACDの動き(2026年6月24日時点)
AI相場はまだ続きそうだが、中身の変化には要注意
先ほども見てきたSKハイニックスのように、メモリ市場で価格のバランスが偏り始めていることをはじめ、過去のレポートでも紹介しましたが、最近になって、積極的にAI投資を行っているハイパースケーラーを中心に、新株や社債の発行などのファイナンスや、機関投資家やファンドと組んでジョイントベンチャーを立ち上げてデータセンターを建設する動きなどが活発化しています。
2026年6月12日: AI相場はまだまだ続く?次の焦点はハイパースケーラーの「投資の持続力」(土信田雅之)
こうした動きは、これまで本業(クラウドや広告、ECなど)による稼ぎを原資に巨額のAI投資を行っていたのが、投資の急拡大に伴って賄いきれなくなり、財務戦略が「自前主義」から「多様な外部資金の活用」へシフトしていることの表れといえます。
確かに、AI技術の進展や活動領域の拡大によって、処理するデータ量が爆増していくことが見込まれるため、AIに対する投資需要の高まりと継続は「ほぼ既定路線」であるほか、関連企業の高成長も想定され、現在の株式市場もそれを織り込んで上昇しています。
とはいえ、すでに巨額のAI投資を行っているハイパースケーラーが、それに応える投資を続けられるのか、また、外部からの資金調達によるAI投資へのシフトは、その規模が拡大するほど金融システムに深く食い込むことになります。
一般的に、相場が大きく下落した場合、以下の三つのパターンに分けられます。
【(1) 過度な楽観やポジションの修正、不安の先取りにとどまるパターン】
・直前までの株価が大きく上昇し過熱感の中で株価下落
・下げ止まり後は急落前の高値を回復することが多い
⇒ブラックマンデー(1987年)、ライブドア・ショック(2006年)、VIXショック(2018年)
【(2) 景気後退懸念を伴うパターン】
・景気後退懸念で株価下落 or 株価下落が景気後退懸念を高める
・経済指標や企業業績、相場テーマの見通しに変化
・株価下落のスピードや深さは政策対応にも左右される
⇒チャイナ・ショック(2015年)、コロナ・ショック(2020年)
【(3) さらに金融不安や危機を巻き込むパターン】
・カネ回りの問題(マネー収縮、資金繰り、債務)が状況を悪化
⇒パリバ・ショック~リーマン・ショック(2007~2008年)
多くの場合は(1)のパターンに該当し、これまでのAI相場も同様に、いわゆる「押し目買い」が報われる展開が続いてきましたが、先ほども見てきたように、外部からの資金調達によるAI投資が拡大していくにつれて、(3)のパターンに発展する可能性が高まります。
そのため、資金の出し手からの結果を求める視線が厳しくなってくることが考えられ、AI投資の勢いに陰りが見えたり、利益成長の伸びが期待に沿えない、投資した資金が回収できない状況となった場合には、金融システムの混乱を伴って相場が大きく下落してしまう展開も想定されます。
もっとも、ここまで懸念するのは現時点でまだ早いですが、「次の相場の論点」として意識しておく必要はありそうです。
(土信田 雅之)

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