2026年上半期は米利上げ継続や日銀の政策不透明感から円安が加速しました。主要クロス円では「高金利かつ資源国」である豪ドル円、メキシコペソ円、南アランド円が勝ち組となり、一方トルコリラは信認不足から下落しました。

円安局面では金利差だけでなく、経済の安定性や金融政策の信頼性を踏まえた通貨選択が重要です。


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2026年上半期の為替市場は「円とドル」が主役

 2026年上半期の為替市場の主役は、間違いなく「円」と「ドル」でした。ドル円は半年間で152円から162円まで10円も円安が進みました。政府・日本銀行の介入でも流れを止められないほどの強いトレンドが続いています。


 2026年が始まった時は「円安トレンドが転換する」、なぜなら米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げと日銀の利上げで日米金利差が縮まるからだという見方もありました。しかし現実はその逆でした。FRBは利下げより利上げの可能性が高まり、日銀の今後の利上げは不透明です。結果として、円安トレンドは終わるどころか、むしろ加速しつつあります。


 ドル円で円安になっていることは誰もが知っています。しかしFXトレーダーにとっては、円安トレンドで「どの通貨を買うか」ということが重要です。なぜなら、同じ円安でも通貨ペアによってリターンは大きく変わるからです。


 そこで今回は、定点観測として、2026年上半期の主要クロス円の騰落率をランキング化し、今年前半の「勝ち組・負け組」を明らかにしたいと思います。


クロス円「勝ち組・負け組ランキング」

 図表は、2026年1月2日の始値でクロス円を買い、6月30日の終値で売った場合の騰落率を比較したものです。


クロス円「勝ち組、負け組ランキング」(2026.1/2~2026.6/30)
円安で「勝つ通貨」はこれだ!2026年上半期 クロス円ランキング
クロス円「勝ち組、負け組ランキング」(2026.1/2~2026.6/30)

騰落率の計算式
円安で「勝つ通貨」はこれだ!2026年上半期 クロス円ランキング
騰落率の計算式

 データバーでは、上昇した通貨ペアを水色、下落した通貨は赤色で表示し、騰落率の大小はバーの長さで比較できるようにしています。


総論:2026年上半期の相場で最も強かった通貨・弱かった通貨

 2026年上半期は円安が進む中で、豪ドル円(AUDJPY)、メキシコペソ円(MXNJPY)、南アランド円(ZARJPY)が特に強い上昇を見せました。一方、トルコリラ円(TRYJPY)は下落が続きました。


 ドル円(USDJPY)は約39年半ぶりの円安水準まで進んだものの、騰落率は+2.9%にとどまりました。介入警戒感が上値を抑えたためです。


各論「勝ち組通貨」と「負け組通貨」

勝ち組:豪ドル円、メキシコペソ円、南アランド円

 これら三つの通貨の共通点は「高金利」と「資源国」であることです。円は日銀の利上げペースが緩やかなままで、今後も低金利政策が続くとみられています。さらに日本は原油輸入の約9割をホルムズ海峡に依存しているため、エネルギー不安が高まる局面では資源通貨に対して円が売られやすい構造になっています。


中位グループ:ドル円、ポンド円、NZドル円、スイスフラン円、ユーロ円

 これらの通貨ペアはいずれもプラスながら、上昇率は限定的。金利差も中位から低位で、キャリー通貨としての魅力はやや控えめといえます。


負け組:カナダドル円、トルコリラ円

 カナダドル円は、勝ち組ほどの高金利を持たず、また米国との通商問題を抱える中で負け組に転落しました。トルコリラ円は高金利にもかかわらず最下位となりました。


注目通貨の分析:なぜこの通貨が強い(弱い)のか?

ドル:タカ派FRBが支えるドル高

 上半期のドル高は、堅調な米経済と持続的な資本流入によって支えられました。特に、新FRB議長に就任したウォーシュ氏が、事前の懸念に反してタカ派姿勢を示したことがドル高の原動力となりました。


 ドル高はしばらく続くと予想されていますが、最近のデータでは雇用市場に陰りが見え始めています。過度の利上げ期待が後退する局面では、ドルに調整が入る可能性があります。


豪ドル:利上げは一服、勢いに陰りも

 オーストラリア準備銀行(RBA)は、半年間に3回の利上げを行い、政策金利は4.35%に引き上げられました。資源通貨としての強みや、米国株式との連動性も豪ドルの追い風となりました。


 しかし累積的な金融引き締めの悪影響が豪経済に表れ始めています。第2四半期のインフレ率がRBAの想定を大幅に下回ったことで、今後の利上げ見通しは不透明になりました。上半期のような勢いが続くかどうか、マーケットの確信は揺ぎ始めています。


カナダドル:景気減速とインフレの板挟み

 カナダドル円は、上半期の1~6月の騰落率がマイナスに沈みました。カナダ経済は2四半期連続でマイナス成長となる「テクニカル・リセッション」入り。トランプ関税のリスクや米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)交渉の難航で、景気回復は2027年まで遅れる可能性が高いようです。


 一方、インフレ期待は上昇しているので、金融政策は「利上げも利下げも難しい」板挟み状態になっています。


トルコリラ:高金利でも下落する「外れ値」

 トルコリラは、高金利(政策金利37.0%)という高金利通貨にもかかわらず、騰落率では最下位です。理由は明らかで、この通貨に対するマーケットの信認が極めて低いからです。


 中央銀行の独立性が弱く、政治的圧力で金融政策が変わることや、取引量が少なく流動性が低いため急な相場変動が起きやすいことから投資家はトルコリラの長期保有に消極的です。トルコリラは高金利でも通貨価値が下落する典型例となっています。


結論

 今回のランキングから読み取れるポイントは二つあります。


1.円安トレンドでも、通貨選びでリターンは大きく変わる

 豪ドル円、メキシコペソ円、南アランド円のような、高金利・資源通貨は、大きなリターンを期待できます。

ただし、流動性リスクや相場の急変動には注意が必要です。


2.金利差だけでは不十分。金融政策の信認・経済の安定性が重要

 トルコリラのように、高金利でも通貨価値が下落し続けるケースでは、円ベースのリターンが大きく毀損(きそん)される可能性があります。


 次回は「金利差と騰落率の関係」を深掘りし、キャリー通貨をどう選ぶべきかを考えます。


(荒地 潤)

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