162円で終えた6月のドル高から一転、7月に入り重い展開が続いております。介入警戒感や米6月雇用統計の結果を受けたこともありますが、ドルを取り巻く環境に微妙な変化が生じたことも要因の一つかもしれません。

今後はこれらの変化がドル円に大きく影響を与える可能性もあり注目の必要がありそうです。


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介入警戒とFRBの認識変化。ドルを取り巻く環境に生じた「微妙な変化」

 6月に中東情勢の緊迫化でドル高に進んだ為替は、6月の後半には日米金融政策のタカ派姿勢の違いからドル高が一段と進み、162円半ばで6月を終えました。翌7月1日には、162.84円へと円安が進みましたが、その後は円安が進まず、ややドルの頭が重たい展開が続いています。


 介入警戒感も大きいと思われますが、ドルを取り巻く環境が少し変わったこともあるかもしれません。この環境がドルの方向性を変えたということではありませんが、今後、さらに変わればドルの方向も変わるかもしれないため、微妙な環境の変化にも注目していく必要がありそうです。


 ドル円は「骨太の方針」の観測報道を受けて、162円台後半の円安に進みましたが、7月2日、162円台から160円台に円が急騰しました。介入があったのではないかとの見方もありましたが、163円を目前にして介入警戒感が強まったことが背景にあるようです。


「投機的な円の売り持ちが積み上がれば突如として介入の可能性あり」との報道や、加えて韓国当局者が「為替問題について常に日本やその他関係国と緊密に連携し、意思疎通を図っている」と述べたことも、介入警戒感を強めたようです。米国独立記念日の3連休前のポジション調整も手伝って円は急騰しました。


 同じく2日発表の米雇用統計の非農業部門雇用者数が+5.7万人と予想(+11.3万人)を大幅に下回ったため160円台半ばへの円高となりました。


 また前日7月1日には、欧州中央銀行(ECB)フォーラムでウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「インフレリスクは低下している」と発言し、早期利上げ観測が後退していたこともドル安・円高の動きに影響したようです。


 このように微妙な環境の変化が見られました。まとめますと、


1. 
 介入については、日本の金融当局による事前警告なしの介入の可能性が浮上してきたため、介入警戒感が強まりました。4月の介入の時には、三村淳財務官から「これは最後の避難勧告」と強いメッセージが発信されました。この発言を受けて投機筋の円売りポジションも事前に介入に対応する準備ができたかもしれません。そのため介入効果も限定的だったかもしれません。


 今回は、これまでのところ強いメッセージが発信されていないため、不意打ち介入が実施されれば、円売りポジションの買い戻し効果(円高要因)は大きくなる可能性があります。また、円売りポジションの積み上げに慎重になることも予想されるため、円安抑制効果になるかもしれません。


 このように事前警告なしの介入の可能性報道以降、介入警戒感はより高まっているようです。


2. 
 7月1日のECBフォーラムでウォーシュFRB議長は、インフレ率を2%の目標に押し下げることに引き続きコミットしているとの姿勢を改めて強調しながらも、「インフレ期待とインフレリスクがこの数週間で低下している」との認識を示しました。


 6月米連邦公開市場委員会(FOMC)直前の原油価格は、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)で100ドルは割れていましたが、まだ90ドル台でした。その後、米国とイランの和平協議が進展し、70ドル台に下落したことを受けての発言だったと推測されます。


 また、いち早く6月に0.25%の利上げをしたECBのラガルド総裁も「インフレの上振れリスクと成長の下振れリスクのバランスがとれてきた」と述べ、これ以上の利上げを急ぐ必要はないとの認識を示しました。

これらの発言から、中央銀行トップは6月の金融会合の時点とはインフレに対する認識が変わってきたようです。


 このように7月に入ってドルを取り巻く環境が少し変わってきたようです。しかし、160円台を付けたドル円は、その後押し目買いが入り、再び163円に向かって円安が進んでいます。


高市政権の円安容認姿勢と株の調整がもたらす円高リスク

 ウォーシュFRB議長のインフレリスク低下発言や米6月雇用統計の非農業部門雇用者数の増加幅縮小によって、7月の利上げ期待は後退しましたが、年内の利上げ期待は維持されており、そのことがドル高を支えているようです。今後、インフレ期待がさらに低下しなければ、年内の利上げ期待は維持される可能性があります。今後の物価や経済指標に注目する必要があります。


 米雇用統計の非農業部門雇用者数は過去2カ月分(4月、5月分)も合計7.4万人の下方修正となりました。北中米ワールドカップの影響で雇用が一時的に増えているとの見方もあります。ワールドカップ終了後(7月19日)、労働市場がさらに鈍くなるのかその動きを注視したいと思います。


 また、石油輸出国機構(OPEC)プラス有志国は、5日、8月の増産継続で合意しました。増産は5カ月連続です。有志国による自主減産は9月にも終了する可能性があります。

市場では2026年後半から2027年にかけて供給過剰になるのではないかとの見方が広がっています。原油価格がさらに低下すれば、米欧のタカ派姿勢に影響を与える可能性があります。


 7日、NY連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は、「エネルギー価格の下落が見込まれるため、インフレ率も低下する」と楽観的な見方を示しました。他のFRB高官の姿勢も変わる可能性もあり、年内利上げなしのシナリオが浮上してくることにも留意したいと思います。


 160円台から162円台に再び円安にいった背景の一つに、6月終わりに発表された「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」の原案の影響があります。原案には昨年度はあった財政健全化の文言が消え、日本銀行の追加利上げをけん制する姿勢が示されました。


 高市政権の積極財政による財政悪化懸念や、利上げけん制による円安容認姿勢の方が米国材料よりも勝っているようです。


 このような情勢の中、2日、麻生太郎副総裁が自民党の派閥会合で「およそ40年ぶりの円安水準である為替の動向も気になる」と発言したことは留意したいと思います。党内の重鎮の発言によって政権の円安容認姿勢が変化するのかどうか注目したいと思います。


 もう一つ気になる材料は株の動きです。海外勢の日本株投資に伴う円売りヘッジは円安の推進力の一つになっているといわれています。日本株が上昇すると円売りヘッジを増やすことが予想されます。


 しかし、6月後半から、これまでけん引してきたIT・半導体関連銘柄を中心に株の調整が続いています。株の調整が続けば、株売却と同時にこの円売りヘッジの解消(円買い)が起こる可能性があります。


 株を売却しなくても、株安によって資産価値が減少すれば、その分の円売りヘッジを解消する必要が生じてきます。短期間の調整であればよいのですが、調整が長引けば、あるいは急落などが起これば、円売りヘッジの解消による円買いが継続して起こる可能性があります。


 日本株自体の調整だけでなく、海外株の調整によって日本株へ影響してくる可能性もあるため留意しておく必要があります。円高につながる可能性もあるため株価動向にも注目したいと思います。


(ハッサク)

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