西側民主主義国では企業の営業活動を条件づけるため資本主義体制を展開・規制しているとみるのが順当だ。それは純然たる社会主義計画と大差ない。
繰り返される諸行無常(全てのものは続かない)
韓国の株式市場は、個人投資家の信用取引やCFD・上場投資信託(ETF)価格の急落に伴い、大規模なマージンコール(追証)や強制ロスカット相場となった。2銘柄の半導体銘柄への過熱投資が市場全体のボラティリティを高める要因となっている。株価急落に伴い、数百万口座規模でマージンコールやポジションの強制決済が発生したという。
SKハイニックス(日足)
サムスン電子(日足)
KOSPICFD(日足)
日本株の先行指標とされる韓国株式市場の急落を受け、日本市場でもキオクシアホールディングスが急落し、日経平均株価は軟調に推移している。
キオクシアHD(日足)
日経平均CFD(日足)
バークシャー・ハサウェイの2026年年次株主総会で、バフェットは「人々がこれほどギャンブル的な気分になっているのを見たことがない」と警告した。現在の市場では、長期投資よりも投機が優遇される傾向が強まっているという。
史上最高の投機家と呼ばれたジェシー・リバモアは、「株取引には、楽に金がもうかるといった印象があり、人を魅了するが、愚かで安易な考えから相場に手を出せば、簡単に全てを失ってしまう。無知の対極にある知識は、大きな力となる。無知を警戒せよ。学習、研究をしっかり行うこと。遊び半分ではなく、本腰を入れて取り組まなければならない。相場の動きを漫然と『期待して待つ』のはばくちであり、忍耐強く待ち、シグナルを見いだした瞬間『反応する』のが投資・投機である。
拝金主義と金融緩和への依存が広がる今こそ、ジェシー・リバモアの言葉を思い起こすべきだろう。リバモアは、「ウォール街にも、株式投資や投機にも新しいものは何もない。過去に起きたことは、これからも何度となく繰り返される。それは、人間の本性が変わらないからだ」と述べている。
過去に起こったことが何度でも繰り返されるというのは、どういうことなのか?<投機のサイクル>というのは、おおむね以下のようなサイクルで構成されているということだ。
<投機のサイクル>
1)バリューレベルで投資家がマーケットに参入
2)株価が上昇
3)変化が始まる
4)投機家が新規公開株(IPO)に目をとめる
5)初心者投資家がマーケットに参入
6)株価が上昇
7)ポジティブ・フィードバック・ループ、株価は上昇するのみ
8)株価の上昇が心理的に強化される
9)陶酔感が広がる
10)レバレッジをかけた投資家が増える
11)陶酔感が熱狂になり、クレジットが拡大
12)熱狂によりリスクの許容度が高まる
13)リスク許容度の高まりによって詐欺や相場操縦が横行する
14)マーケットがクラッシュし、投機が一掃される
15)新たな規制とともに政府が介入
16)投資家は全てのリスクを避ける
出所:リアル・インベストメント・アドバイス
バブルは投資家の「高く買って安く売る」症候群である。バブル崩壊のパターンは300年前の南海泡沫バブルと何も変わっていない。相場は人間がやっている欲望と恐怖のゲームだからだ。
1720年夏、万有引力の法則を生み出した近代物理学の父祖、アイザック・ニュートンは、財産の大部分を再び「南海会社」の株式に投資しようとしていた。企業としてほとんど利益は出ていなかったが、米大陸におけるスペイン植民地からの奴隷や黄金を輸送する貿易ルートの独占権をイギリス政府に認められており、国際貿易の拡大とともに確実に成長すると期待されていた。
1720年、イギリス政府が南海会社の株式を売り出すと、爆発的な人気を集め、この動きに乗じようと株式市場は狂乱状態となった。
天才科学者のニュートンは南海会社株に初期段階で投資を行っていた。それからわずか2カ月で持ち株の価値は2倍になった。ニュートンは市場が投機の熱狂の初期段階にいることに気付き、それが最終的には悪い結末を迎えることを察知していたため、早めに利益を得て自分の持ち株を清算し大金を稼いだ。しかし、バブルの本当の怖さはこの後にある。
ニュートンが市場から退場したのち、南海会社株は伝説的な上昇を経験することになる。バブルが膨らみ続ける中、友人や知人の財産が日々増えていくのを見ていたニュートンは、いてもたってもいられず再び株式市場に飛び込んだ。
それが株価のピークだった。9月には南海会社で詐欺スキャンダルが勃発すると、株価はあっという間に90%下落した。しかもニュートンは株価が急落する中で、禁断の「ナンピン買い」まで行っていた。
ニュートンによる南海会社への投資を扱った2018年の論文「Newton's financial misadventures in the South Sea Bubble(ニュートンの南海バブルにおける財政的不運)」によると、ニュートンはこの世界三大バブルの一つである南海会社の破綻によって、現在の価値にして約2,000万ドルに相当する損失を被ったと指摘している。
この大失敗にニュートンは深く傷つき、生涯人々が自分の前で南海会社の名を口にするのを許さなかったとも言われている。
1700年代の「南海泡沫バブル」とアイザック・ニュートンの破産
このニュートンの投資で注目すべきことが二つある。一つは、ニュートンが再エントリーした際、ほぼ全ての手持ち資産を南海会社株に注ぎ込んだということ。そしてもう一つは、株価が急落する中で「ナンピン買い」まで行ったことだ。
当時、造幣局長官も務めていたニュートンは、金融や市場に精通している人物であったと思われるが、そうした人物でもバブルに踊り、バブルに翻弄(ほんろう)されてしまうのだ。どんな新技術が登場しようとも、これが市場サイクルの常である。
南泡沫海バブルで大きな損失を負ったニュートンは次のように言った。
「天体の動きは計算できるが、人の狂気は計算できない」
今や西側の民主主義国では民間企業の営業活動を条件づけるために資本主義体制を展開・規制しているとみるのが順当だ。それは純然たる社会主義計画と大した違いはないのである。
そうした国家資本主義的な管理相場(相場操縦)によって価格は重力の法則に逆らって動くように見えるかもしれないが、その後の極端な戻り(平均回帰)は、リスクを軽視した投資家の破滅的な損失につながっている。
経済の世界は激変し、今後もさらに変化していくだろう。株式市場の本質的な性質も、それに対応するように変化してきたと多くの人々が考えている。
2026年は地政学的リスクや財政不安が背景にあるため、流動性の高い資産を組み合わせた分散投資が有効であろう。全力投資を避けキャッシュ比率を拡大したい。調整局面では、現金が買いの余力となる。CAPEが示す現在のバリュエーションで全資金を投入するのは避けたい。個人投資家がバブル相場につぎ込んでいいお金は、失っていいお金だけである。
国家が市場に全面介入し、膨大な負債が積み上がる一方、政治情勢は深刻な混乱に陥っている。残されたのは、旧態依然としたカジノ化市場が生み出す「仮想的な富の効果」にすぎない。資産と負債を際限なく膨張させる「両建て経済」の最大の怖さは、相場が急落すれば資産だけが減り、負債はそのまま残ることにある。
「私は自由を得るためにはお金が重要だと信じています。しかし、資産の奴隷になってはいけません。なぜなら、所有するものが多ければ多いほど、管理しなければならないことも増えていくからです。そして、人生において、富にはさまざまなレベルがあると思います。お金も確かに重要ですが、ライフスタイルや、自分が何を楽しんでいるかといった他の要素も同様に重要です」
(マーク・ファーバー)
人間の原動力は「カネ」ではなく、「あこがれ」だ。生命は単なる物質ではない。遺伝子のような情報が環境と結びつき、新たなものを生み出そうとするシステムである。生物は自分の記憶や今の状態だけに満足しない。生命は常に「別のものになりたい」「まだ見ぬ世界に触れたい」という衝動を持っている。この「あこがれ」の力こそが、人間が新しい芸術や文化、科学を生み出す原動力になってきたのだ。
7月29日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
7月29日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、加藤嘉一さん(楽天証券経済研究所 客員研究員)をゲストにお招きして、「地政学リスクと現金(日本円)の崩壊」というテーマで加藤さんと話してみました。加藤さんが語る「地政学リスクと日本の立ち位置」、ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページ から出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
7月29日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
<セミナーのお知らせ>
2026年8月1日(土)楽天証券為替・経済アカデミー札幌
2026年8月1日(土)10:30~15:20
会場申し込みは締め切られました。オンラインの方でぜひご参加ください。
(石原 順)

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