ドイツは2026年6月9日、フランス、スペインとの次世代戦闘機共同開発プロジェクト「FCAS」において、中核となる有人戦闘機の共同開発を中止すると発表しました。
このプロジェクトは、ドイツとスペインが運用するユーロファイター「タイフーン」、およびフランスの「ラファール」戦闘機の後継機を開発することを目的とした、いわゆる第6世代戦闘機開発計画です。
しかし、計画立ち上げ当初から、フランス側のダッソー・アビエーションとドイツ側のエアバス・ディフェンス・アンド・スペースとの間で、開発方針を巡る交渉が難航していました。
2025年9月には、ダッソーのエリック・トラピエCEOが「我々は単独でもSCAF(FCASのフランス側呼称)を開発できる。ドイツが文句を言うのは構わない。もし彼らが単独でやりたいなら、そうすればいい」と発言して物議を醸しました。一方、エアバス・ディフェンス側でも、労働評議会トップのトーマス・プレッツル氏が「FCASはダッソー抜きで進むことになると思う。欧州には、より魅力的で適したパートナーがいる」と述べており、両者の対立は表面化していました。
こうした事情から、2025年末に予定されていた実証機(デモンストレーター)の製造・試験に関する基本合意も延期されていました。
この計画を巡っては、フランス側に戦闘機開発の主導権を譲れない重要な理由がありました。それが核戦力です。
フランス軍は現在、約290発の核弾頭を保有しており、その運搬手段としてM51 SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)と、航空機搭載型のASMP-A空中発射巡航ミサイルを運用しています。このうちASMP-Aを搭載・発射できるのは、フランス製戦闘機「ラファール」の複座型B型と艦載型M型のみです。
つまり、フランスにとって次世代戦闘機は単なる航空戦力ではなく、核抑止力を担う戦略兵器でもあります。この点が、各国間の大きな意見の相違を生む要因となっていました。過去にも1980年代のユーロファイター「タイフーン」開発計画において、イギリス、西ドイツ(当時)、イタリア、スペインとの合意に至らず、最終的にダッソーが独自に「ラファール」を開発したという経緯があります。
なお、有人機の共同開発が中止される一方で、無人機の開発や、空中戦において有人機を支援するシステムの開発については、今後も継続される可能性があるとしています。
なお、有人戦闘機開発を巡る今後の動きとしては、ドイツとスペインがスウェーデンのサーブとの協力を模索するほか、日本、イギリス、イタリアの3か国が進める共同開発計画「GCAP」への参加を検討する可能性も考えられます。一方のフランスは、前述のとおり、現時点では単独開発を模索する姿勢を強めています。

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