東京都内には幹線道路が交差道路を立体交差する「陸橋」が多数あります。その多くは交通量の多い主道路が交差道路を跨いでいるため、ふだん渡っているだけという人も多いかもしれません。
その一つが、東京都荒川区の明治通りに設けられている「宮地陸橋」です。この橋、横から見ると2か所、大きな四角い穴が空いています。
橋の床版(道路の床部分)は連続しているため、橋の上を走る分には何の変哲もありません。しかし、実際には交差点を挟んで向かい合う橋脚の上に、コンクリートの函体が載っていて、側面の主桁を分断する形となっています。穴というより小さなトンネルという印象です。
この橋は1974(昭和49)年に竣工し、最近、長寿命化工事が行われていますが、函体は明らかに何かがすっぽり入りそうな雰囲気です。一体何のための穴なのでしょうか。
実は、全く別の場所で、この穴が“使われている”ところがあります。
それは板橋区の都営三田線の終点、西高島平駅前を通る高島通りが国道17号「新大宮バイパス」をまたぐ「高島陸橋」です。西高島平駅前から上がる「三園2丁目」交差点の歩道橋は、高島陸橋の橋のなかをくぐって、高島通りの反対側や新大宮バイパスの対角線上にたどり着く構造となっています。つまり、この穴は歩道橋を“貫通”させるための穴というわけです。
このほか、名古屋市熱田区の「内田橋北」交差点も同様の構造。こちらは交差点の2か所から伸びた歩道橋が穴の手前で合流していて、陸橋に2本の橋が突き刺さったようにも見えます。ただし、板橋も名古屋も、穴が設けられているのは1か所だけです。
宮地陸橋がまたいでいる「宮地」交差点は、東西方向の明治通りに南北方向の尾竹橋通、西日暮里方面へ向かう道灌山通り、さらに大小2つの道が接続する「変則7差路」と呼ぶべき交通の要衝で、かつては「ロータリー交差点」でした。
ロータリー交差点は中央に交通島が設けられた現在のラウンドアバウトに近い円形交差点の一種です。多くの道路が交差する複雑な交差点の交通処理に有効とされるものの、交通量の増加で渋滞の要因となり、宮地陸橋が建設されたという経緯があります。ここも含め、都内のロータリー交差点はモータリゼーションとともに姿を消しました。
現在の宮地交差点は中心を8つの横断歩道が取り囲んでいます。穴を2つも用意した宮地陸橋は、歩道橋で陸橋の南北を相互に行き来るよう設計されたとみられるものの、作られず現在に至ると考えられます。
そもそも歩道橋は昭和30~40年代、歩行者の死亡事故が相次いだ「交通戦争」と呼ばれる時代に爆発的に整備されたといいます。しかし、景観やバリアフリー上の課題などもあり、老朽化に伴って現在は撤去が進んでいます。自動車中心の考え方から、1970年の道路構造令改正以降は歩道の整備を原則とする方針へと転換してもいます。

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