西東京エリアを中心に関東、東海エリアなどの道路沿いで無数に目にする「きぬた歯科」の「顔看板」。看板設置数は300を超えるといわれ、近年、同様の顔看板があらゆる業者で広がっています。
その元祖「顔看板」は、台湾南部の都市・高雄の漏水工事業者・陳財佑さんによるものです。
陳財佑さんは1991年に自身の漏水修理会社「陳財佑治漏技研」を設立。事業をどのように広めるか策を練って思いついたのが、自身の学生時代(18歳頃)の写真を「顔看板」にし、工事用車両や街中に張り巡らせるというものです。この試みは大いにヒットし「台湾南部の日常風景の一つ」となるほどに影響を与えました。
台湾南部の人の中には、遠方からの帰郷時に「陳財佑さんの『顔看板』を見ると、故郷に帰ってきた」と実感しホッとする人もいるそうです。
また、今の台湾の都市部の交差点や街中には、「政治家の看板」「不動産業者の看板」など無数の「顔看板」が貼られていますが、1991年以前の各都市の景色を見返してみると、「顔看板」はほとんど見られません。きぬた歯科と同様、この陳財佑さんの広告が「顔看板の草分け」となり、台湾全土へと広まったのではないかと推測されるのです。
コスプレが続出、選挙ポスターにも!?SNSの浸透以降は、陳財佑さんの顔看板のコスプレが流行しました。中には「陳財佑さんのコスプレグッズ」を販売する人なども出始め、一大ブームになりました。
このブームを受けてか、2022年の高雄市長選では当時の現役市長で立候補者の陳其邁氏が、陳財佑さんの顔看板のパロディ広告を作り注目を浴びました。
陳其邁氏は立候補に際して、「18歳公民権(選挙年齢の18歳への引き下げ)」を主張しており、陳財佑さんの顔看板に使われている学生時代(18歳頃)の画像はメッセージ的に伝わりやすいとして採用しました。
特にSNSなどで若い層で支持を集め、陳其邁氏は市長を継続しました。ただし、強く掲げていた「18歳公民権(選挙年齢の18歳への引き下げ)」は否決され実現には至っていません。
都市伝説化していた陳財佑さん高雄市長選での陳其邁氏の顔看板パロディは、一般市民にも模倣者を生み出し、陳財佑さん非公式の「コスプレグッズ」などが販売されたほか、SNSなどでもコスプレ投稿が続出しました。結果的に、台湾南部の人たちにとって陳財佑が世代を問わず愛され認知されていることを改めて示すことにもなりました。
また、一時期まで地元・高雄での陳財佑さんは“都市伝説”と化しており、「実は存在しないのではないか」「もう亡くなっているのではないか」「いや不老不死の存在だ」といった説まで飛び交うほどでした。高雄市長選での「顔看板」の評価と注目を受け、マスコミがこぞって陳財佑さんを取材することになりました。
もちろん、陳財佑さんはご健在で、現在65歳です。台湾は地震が多く、台風発生時や雨季になると、家屋の雨漏りが頻繁に起きるため、幼い頃の陳財佑さんは「みんなを助ける仕事をしたい」と漏水工事業者として独立したそうです。その志を胸に、台湾トップレベルの技術で人々の暮らしをサポートしてきました。
きぬた歯科の「顔看板」との共通性は?じつは陳財佑さんの顔看板は、その事業が始まった1991年頃の「本当の学生時代の写真」から、「少女漫画風」のものへ進化しています。いずれもなんとも言い難い「味のある写真」で、多くの地元の人々の心に残るものとなっています。
そして、日本のきぬた歯科・きぬた泰和さんの柔和で知的な「顔看板」もまた同様です。スナップ風の写真をザックリ切り抜き、巨大広告に採用し街の至るところに張り出すという堂々としたメッセージ性は成功を収めました。その戦略により「あの顔」と名前が多くの人に知られることになったのです。
もちろん、きぬた歯科から公式に「高雄の『顔看板』に影響を受けた」といったものはありませんが、陳財佑さんの「顔看板」の広告手法と、共通するものがあるといえるでしょう。

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