関東有数の温泉地・箱根は、いにしえより東西交通の要でした。箱根は「天下の剣」と称されるほど、幾重にも山々が連なっています。
開業時の電車はチキ1形で、1927(昭和2)年にチキ2形が導入されました。太平洋戦争後、チキ1形はモハ1形に、チキ2形はモハ2形に改称し、車体や走行装置などを載せ替え、外観はガラッと姿を変えました。
車体は正面非貫通の3枚窓、窓枠を補強するウインドウシルとウインドウヘッダーが窓に巻かれて、屋根上には抵抗器が搭載され、重厚なたたずまいを感じさせます。昭和50年代後半に1000形「ベルニナ号」が誕生するまで、箱根登山鉄道といえばこの2形式が思い浮かぶほど、シンボル的な存在でした。
しかし、チキ形からの車歴をたどれば、モハ1形は誕生から1世紀が経ち、モハ2形とともにそろそろ引退の時期がやってきました。新型の3000形、3100形「アレグラ号」が導入され、2019年には同鉄道最後の吊り掛け駆動車、モハ1形103+107号編成が廃車となりました。2026年現在、モハ1形は104号と106号、モハ2形は108号の計3両を残すのみです。この3両はモーターをカルダン駆動に換装され、軽やかな音を奏でます。
そしてこの3両も、2028年1月をもってついに運行終了を迎えます。
夏、箱根登山電車はうっそうとした森の中を走ります。急坂の線路はトンネルをいくつもくぐり、最急半径30mの曲線を描きます。電車は山ひだを縫い、木々に囲まれて天然の森のトンネルを走ります。これでは上空から影になって見えません。箱根登山電車を空撮するのに適するのは、晩秋になってから。葉が落ちて線形がよく分かります。さらに曇天であれば影ができないため、よりよく線路が見えるのです。
写真は空撮用のセスナ機から撮影します。時間は短いと感じるかもしれませんが、ほとんどが10分から20分ほど。
箱根登山鉄道は急曲線やスイッチバックがあり、等高線に沿って走るモハ1形と2形は鉄道模型ジオラマのように見えます。急曲線を曲がるときは、車体が想像以上に線路の外側へ出る様子が見て取れました。
モハ1形とモハ2形は、箱根登山電車に乗った記憶のある方ならば身近な存在でしょう。名物の顔が引退することについては、一抹の寂しさがあります。引退まで実質的にあと1年半、古豪は最後の力を振り絞って箱根の山に挑んでいます。

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