大きな火力を持ち、分厚い装甲に守られた戦車は、陸戦の花形です。しかし、そんな戦車にも弱点があります。
履帯(キャタピラ)を持つ戦車は、もともと悪路走破性が高く、多少の傾斜や水程度ではものともしませんが、限界はあります。架橋戦車は、そうした車両の行く手を阻む深い濠や川などを渡るために活用される車両です。
91式戦車橋は、74式戦車の車体に、ふたつに分割された橋を上下に重ねて搭載した、非常に特徴的な姿をしています。車体は戦車同様に装甲化されていますが、自衛用の装備などは有していません。
さて、この91式戦車橋は、どのようにして使用されるのでしょうか。まず、塹壕や川など、戦車の通行が阻害されるような場所に91式戦車橋がやってきます。そして、車体上部から橋を降ろし、塹壕などに橋を架けます。こうして、戦車が渡れるようになります。
たったこれだけのことですが、戦車にとっては非常に重要な装備なのです。
有事の際は、敵性勢力の進撃を阻止するなどの目的から、主要な橋は破壊される可能性が高いです。
目の前に濠などがある場合、91式戦車橋は約5分で架橋作業を完了することができます。前線での架橋は、作業時間が短ければ短いほど有効です。時間が長引けば、ひとつの位置に留まることになるため、その分、敵から反撃される危険性も高くなります。そうした危険性を回避しつつ、進撃の速度を緩めないためには、速やかに架橋作業を完了することが不可欠です。
91式戦車橋に関しては、まず下段に格納されている橋体を前方へと押し出していきます。その間、上段の橋体は、車体後方に取り付けられたアームで少し斜めに持ち上げておきます。下段の橋体が十分に前方へと押し出されたところで、上段の橋体を少し後方へとずらして、前方の橋体と合体させます。
合体した橋体を車体前方に保持して架橋位置に設置すれば、戦車も渡れる頑丈な橋が完成するというわけです。橋の全長は20m、有効長は約18mです。この一連の作業は、車外に出ることなく乗員が操作できます。
戦車が無事、橋を渡り終えたら、すぐさま撤収です。こちらは架橋時と逆の作業を行い、架橋時と同様、約5分で元の91式戦車橋の姿に戻ります。
主な配備先は、施設教導隊や北部方面隊の一部の部隊など、あまり多くないため、なかなか見る機会はないかもしれません。もし見る機会に恵まれた際には、橋を背負った迫力ある車体、そして滑らかな架橋作業の様子は必見です。

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