シンガポール海軍のフリゲート「ステッドファスト」が2026年8月、東京国際クルーズターミナルへ寄港し、艦内を一般公開しました。同艦は6月25日から8月1日までハワイ周辺で行われた多国間演習「リムパック2026」に参加した後、日本へ立ち寄ったものです。
「ステッドファスト」は、シンガポール海軍が6隻を運用するフォーミダブル級フリゲートの3番艦です。全長114m、排水量3200トンの船体は、凹凸を抑えた平面と傾斜面を組み合わせた形状となっています。船体に当たったレーダー波を照射元へ戻りにくくし、相手から探知されにくくするためのステルス設計です。
本艦の原点は、フランス海軍のラファイエット級フリゲートにあります。同級の1番艦は1996年に就役しました。建造元であるフランスのナバル・グループは、ラファイエット級を「世界初の実用ステルス軍艦」と位置付けており、艦載艇などを外板の内側へ収め、船体表面の凹凸を減らす工夫を早い段階で採り入れました。
ただし、フォーミダブル級はラファイエット級をそのまま輸入した艦ではありません。艦の頭脳に当たる戦闘管理システムは、シンガポール海軍と同国の国防科学技術庁(DSTA)、DSO国立研究所が共同開発するなど、同国の要求に合わせて中身が作り替えられています。
1番艦「フォーミダブル」はフランスで建造されましたが、残る5隻は技術移転を受け、STエンジニアリングの海洋部門(当時ST Marine)がシンガポール国内で建造しました。フランス生まれのステルス艦を、自国向けに発展させたのがフォーミダブル級なのです。
格納庫の先に新型対艦ミサイル! ブリッジから見えたのは?見学では艦尾の飛行甲板から乗船しました。ルートはヘリコプター格納庫、ミサイル甲板、ブリッジと続き、その後は艦内通路を移動して厨房と食堂を見る流れでした。
格納庫を抜けると、船体中央部のミサイル甲板へ出ます。そこは船体の一部に見える壁面で囲まれていますが、上部は開いていました。内側には、箱形の対艦ミサイル発射筒が船体側面へ向けて斜めに設置されており、見学時には、2基の発射筒を確認できます。
ステッドファストが装備するのは、新型の艦対艦ミサイル「ブルー・スピア」です。イスラエルのIAIとシンガポールのSTエンジニアリングが設立した合弁会社によって手掛けられたミサイルで、艦内の展示資料によると、最高速度はマッハ0.8、射程は100海里(約185km)超とされています。
フォーミダブル級では、当初はアメリカ製「ハープーン」対艦ミサイルを装備していましたが、現在は新しいブルー・スピアへの更新が進められています。計画自体は以前から明らかになっていましたが、実際に艦へ搭載された状態が公に確認されたのは今回が初めてとみられ、複数の海外軍事メディアも報じました。
階段を上ってブリッジへ入ると、窓の正面には艦対空ミサイル「アスター」を収めるVLS(垂直発射装置)と、主砲のOTOメララ製76mmスーパーラピッド砲が見えました。
VLSは、ミサイルをセルと呼ばれる個別の発射区画に垂直に収容し、そのまま真上へ発射する装置です。ステッドファストは32セルを備え、アスターを最大32発搭載できます。
VLSの周囲も塀のような傾斜した構造物で囲まれており、これもレーダー波の反射を抑えるための設計とみられ、主砲の砲塔も平面を組み合わせて突起を抑えた形状で、艦首全体にステルス性を意識した設計が徹底されていました。
通常航海は最小6人!? 小さな国の軍艦が省人化を急ぐワケブリッジではシンガポール海軍の乗員がおり、見学者のさまざまな質問にも答えていました。
同艦の乗員は人数について「通常の航海では、ブリッジは最小6人の乗員で運用することができます」と答えました。この人数は驚きです。その少人数の運用を実現しているのがIBS(統合艦橋システム)と呼ばれるものになります。
IBSは、操船や航海、機関、艦内の安全管理に関する情報を、コンソールや大型画面へ集約するシステムです。中核となるIBC(統合艦橋コンソール)では、操船、航海、監視に関する画面を切り替えて表示でき、乗員が席を移動せずに複数の情報を確認できます。
こうしたデジタル化は艦の動力を生み出す機関部門にも同じ考え方が採り入れられており、機関制御室「MCR」では、主機関や発電機などを集中して監視・操作し、こちらもブリッジと同様に少人数で機関当直を行えます。
こうしたデジタル化の大きな目的は、ひとつは少ない人数で軍艦を運用する省人化です。
シンガポールは国土も人口も小さな都市国家で、2025年の人口は約611万人。そのうえ、1人の女性が生涯に産む子どもの数の目安となる合計特殊出生率は0.87で、日本の1.14をさらに下回っています。
シンガポール軍は徴兵制に当たる「国民役務」を戦力の土台としていますが、少子化がさらに進めば、将来の兵役対象者も減少します。同国国防省は、2030年以降に軍が利用できる人的資源が3分の1減ると見込んでいます。
デジタル化と自動化により、ステッドファストを動かす乗員は72名に抑えられています(艦載ヘリコプターを搭載した場合はその運用人員19名を追加)。シンガポール国防省も、フォーミダブル級を、技術によって少人数運用を実現した代表例に挙げています。
ステッドファストの省人化は、単に便利で新しい軍艦を目指したものではありません。少子化が進むなかでも、強力な武装を備えた艦を動かし、海軍の任務を維持するための切実な工夫なのです。

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