兵庫県の阪神間(尼崎・西宮・芦屋・神戸)には六甲山地が横たわり、山の裏側に位置する神戸市北区や三田方面とを隔てています。この山地を横断する道路は、急カーブが続く険しい山道か、通行料がかかる有料道路でほぼ占められますが、そのなかで無料かつ走りやすいルートとして重宝されているのが、兵庫県道82号「大沢西宮線」でしょう。
大沢西宮線は、神戸市北区大沢町から六甲山地を越え、西宮市の浜手幹線(国道43号)へ至る路線です。裏六甲と西宮市街を直接結ぶ唯一の道となっています。
山岳部の盤滝(ばんたき)トンネルを含む区間はかつて「西宮北有料道路」として供用されており、普通車で250円かかりました。しかし、2018年4月に3年前倒しで償還が完了し無料開放。有料時代と比べて利用のハードルが下がったことで、阪神間と北部地域を行き来する交通の選択肢として定着しているようです。
広域的なネットワークで見ると、この道路の利便性がより顕著になります。
大阪方面から三田・有馬方面を目指す場合、主要な無料ルートとしては宝塚市街を経由する国道176号がありますが、宝塚駅周辺などを筆頭に慢性的な渋滞に悩まされます。この国道176号から西の主な六甲山地越えルートとしては、大沢西宮線、芦有ドライブウェイ(有料)、六甲有料道路、そして阪神高速32号新神戸トンネルの順です。
メジャーな選択肢としては、裏六甲から神戸三宮へダイレクトに抜ける新神戸トンネルですが、普通車で550円(国道2号~新神戸箕谷)します。芦有ドライブウェイは観光色が強く有料のうえにくねくね、六甲有料道路も有料かつ、くねくね区間もあり、西宮からは離れます。
元有料道路の大沢西宮線は、このなかで比較的線形もよく、宝塚の渋滞を回避して無料で裏六甲から西宮・芦屋・尼崎・神戸東部へ下りることができます。毎日の通勤車はもちろん、物流車両にも欠かせないルートといえるでしょう。
無料化で道路の利便性が向上した一方で、課題となっているのが、山を下りた後の西宮市街地(苦楽園・夙川周辺)で発生する混雑です。
無料化に伴い山越え区間の交通量は増加しました。盤滝トンネル前後の山岳区間は片側1車線ながら線形(道路のカーブや傾斜)が良くスムーズに流れますが、市街地に入ると従来の細い街路網へと接続します。
特に、苦楽園周辺の住宅街区間は細く、その先に阪急甲陽線の踏切があり、ここでかなり詰まります。その先の市街地にかけて道幅は広がるものの、山手幹線・国道2号の交差などでは右折待ち車両によって通過に時間を要するケースが多く見られます。高い規格で作られた山越え区間に対し、受け手となる市街地側の交通容量が追いついていないことが伺えます。
こうした状況に対し、兵庫県や西宮市では交差点の改良や踏切周辺の道路拡幅、周辺道路の一方通行解除による交通分散といった局所的な対策を進めています。ただ、沿線には住宅地が広がっているため、大規模な道路拡幅や立体交差化などの抜本的な整備は容易ではありません。かつて阪急甲陽線は地下化計画がありましたが、住民の反対で頓挫しました。
そのため、時間帯や状況に応じたルート選択が現実的な対応になりそうです。山を下りて甲陽線の踏切まで来ると、渋滞は避けられません。芦屋や神戸東部を目指すのであれば、有料の芦有ドライブウェイを組み合わせるのも手でしょう。

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