イギリスの高速道路には、日本のSA(サービスエリア)に相当する施設があります。実際にレンタカーで各地を走って利用してみると、食事や給油だけでなく、シャワーや長時間駐車、さらにはホテルまで用意されていました。
イギリスでレンタカーを借り、高速道路を長距離移動していると、「Services」と書かれた道路標識を目にします。その案内に従って進むと、大きな駐車場とともに飲食店や売店、トイレ、ガソリンスタンドなどが現れます。見た瞬間、日本人なら「これはサービスエリアだ」と理解できるでしょう。
イギリスでは、こうした施設を一般的に「Motorway Service Area(MSA)」などと呼びます。英国政府もMSAを長距離ドライバーが安全に休憩するための重要な施設と位置づけており、案内標識の対象となる施設には、24時間利用できるトイレや飲食販売店、ガソリンスタンドに加え、最低2時間の無料駐車などが求められています。
MSAは複数の民間事業者が運営しており、その大手のひとつが「Welcome Break」です。筆者も取材中に何度か利用しましたが、「ありがたい休憩」とでも訳せそうな名前は、日本のサービスエリアと非常によく似た施設でした。
建物の中へ入ると、スターバックスやKFC、バーガーキングなど日本人にも馴染みのある大手飲食店が並び、24時間営業のコンビニやスーパー、トイレなどもあります。外にはガソリンスタンドやEV充電設備もあり、車での長距離移動に必要なものはだいたいが揃います。
ただ、何か所か利用してみて感じたのは、日本の大型SAほど地域の特産品や観光要素を前面に押し出している印象が強くないことでした。もちろん施設によって違いはありますが、「食べる、トイレへ行く、給油する、そして休む」という実用性を強く感じます。
Welcome Breakの駐車場では、基本的に最初の2時間は無料です。食事をしたり、コーヒーを飲みながら一息ついたり、短時間の仮眠を取ったりする程度なら、駐車料金を気にする必要はありません。
では、2時間を超えるとどうなるのでしょうか。 筆者が利用したWelcome Breakでは、一般乗用車の場合、2時間を超えて24時間まで駐車するには15ポンド(約3200円)を支払う仕組みになっていました。つまり、「2時間以上停めてはいけない」のではなく、「もっと休みたいなら料金を払ってください」という考え方です。
ここで少し不思議なのが、駐車場の入口に料金所らしいものがないことです。駐車券も出てきません。それでも、クルマが何時間停まっていたのかはちゃんと分かります。その理由が「ANPR(Automatic Number Plate Recognition)」と呼ばれる自動ナンバープレート認識システムです。
駐車場へ出入りするすべてのクルマのナンバープレートをカメラで読み取り、入場時間と退場時間を自動的に記録します。そのため駐車券を取る必要はありませんが、規定の無料時間を超えて駐車する場合は、施設内の精算機やコンビニなどで料金を支払います。
日本のサービスエリアと違って有料なのは違和感がありますが、それゆえに設備が充実している部分もあります。MSAのなかにはシャワー設備を備えている場所があります。これはトラックドライバー向けのサービスとして用意されており、MSAの規定の中にもシャワーや洗面設備などを設けることが求められています。
もう運転したくない…それなら「泊まればいい」では、それでも「もう今日は運転したくない」というほど疲れてしまったらどうするのでしょうか。答えは簡単でした。サービスエリアに泊まってしまえばいいのです。
イギリスのMSAの多くは敷地内にホテルが併設されています。日本でも一部のSAやPAには宿泊施設がありますが、筆者が利用したMSAのすべてで併設型のホテルを目撃しました。そこで筆者も、実際にそのひとつに一泊してみることにしました。
泊まったのは、イギリス各地で展開するホテルチェーン「Travelodge(トラベロッジ)」です。
一般的なホテルと違うのは、それがMSAの敷地内にあることです。高速道路からMSAへ入り、駐車場にレンタカーを停め、そのままホテルへチェックインします。チェックイン時に乗ってきた車の車両ナンバーを聞かれ、これによってANPRによる超過料金が無料となり、さらに宿泊期間中はMSAを自由に出入りすることも可能となります。
客室は大型のベッドに加えて複数のベッドが置かれたファミリータイプで、少なくとも筆者が泊まった部屋はかなり広く、長距離移動の途中で一晩休むには十分でした。
イギリスのMSAを何か所か利用して感じたのは、「疲れたら無理に走り続けなくてもいい」という考え方が、施設そのものに表れていることでした。コーヒーを飲むだけでもいい。食事をして2時間休んでもいい。さらに休みたければ駐車料金を払い、トラックドライバー向けにはシャワーを備えた施設もあり、それでも疲れているなら、そのままホテルに泊まることもできます。
高速道路をひたすら先へ進むのではなく、疲れたらいったん移動を止める。そのための選択肢が何段階にも用意されているわけです。

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