~ 「令和」設立企業 動向調査 ~


 新しい元号が「令和」となり5月1日で丸5年になる。この5年間に設立された法人(以下、「令和」設立企業)は68万2,325社で、最も多かった商号は「アシスト」の235社、次いで「LINK」の231社だった。
 産業別では、最多はサービス業他の28万6,874社(構成比42.0%)で4割を占めた。

さらに細かく分類した業種別では、学術研究,専門・技術サービス業が9万8,828社で最も多かった。経営コンサルタントや士業、デザイン事務所など、経営者が持つ能力やノウハウを武器に起業した専門サービス業が中心となっている。

 都道府県別では、最多は東京都の20万6,591社(構成比30.2%)で3割を占め、断トツだった。1万社以上は大阪府(6万7,249社)、神奈川県(4万4,061社)など大都市を抱える14都道府県。一方、最少は鳥取県の1,551社(構成比0.2%)で、このほか3県が1,000社台にとどまり、地域差もうかがえる。

 一方、「令和」設立企業の倒産は、令和2(2020)年3月に第1号が発生して以来毎月発生し、累計は1,316件に達した。
この間の「令和」設立企業の倒産発生率は0.19%で、2022年度の企業倒産発生率0.20%より低い。ただし、令和2年度(2020年4月-2021年3月)に42件、令和3年度に171件、令和4年度に411件と、加速度的に増え、令和5年度は最多の691件発生し、同年度の企業倒産全体(9,053件)の7.6%を占めた。倒産企業の産業別では、サービス業他が626件(構成比47.6%)と約半数を占め、参入障壁が低い飲食店や介護関連などが中心。設立間もない時期にコロナ禍に見舞われたうえ、収束後も資材・燃料などのコストアップなどで当初見込んだ計画通りに進まずに頓挫したケースも多い。

※本調査は、令和1年5月以降に設立された法人を「令和」設立企業として抽出し、分析した。
※「令和」設立企業の倒産は、令和6年3月までの全国企業倒産(負債1,000万円以上)から抽出した。

「令和」設立企業 サービス業他が最多の4割

 「令和」の5年間で、これまでに68万2,325社が設立された。産業別では、最多がサービス業他の28万6,874社(構成比42.0%)。次いで、建設業の7万7,283社(同11.3%)、不動産業の6万7,951社(同9.9%)、情報通信業の6万6,357社(同9.7%)と続く。
 最も多いサービス業のうち、さらに細かく分類した業種別では学術研究,専門・技術サービス業が最多の9万8,828社だった。このなかにはデザインや設計のほか、「士」業の専門事務所なども含まれる。業種別の上位には経営者が持つスキルやノウハウを生かして起業する独立型が多く、小資本でスタートしやすい業種が多い点が特徴となっている。

「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」...の画像はこちら >>


商号数ランキング 「アシスト」と「LINK」が双璧、商号「令和」は71社

 「令和」設立企業の商号ランキングは、最多が「アシスト」の235社。4社差で「LINK」の231社が続き、この2商号が突出した。

以下、「NEXT」が191社、「Rise」が185社、「One」が184社と、上位2位から5位まで英文字商号が続いた。
 上位30の商号では、アルファベット表記が13社、カタカナ表記が12社と拮抗し、漢字表記は3社、ひらがな表記は2社だった。
 また、「令和」を商号とした企業は71社で、全体のうち81位だった。

「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」と「LINK」
「令和」設立企業 商号ランキング(上位30)


【都道府県別】1万社以上の設立が14都道府県

 都道府県別では、最多が東京都の20万6,591社(構成比30.2%)で断トツに多く、2位の大阪府の6万7,249社(同9.8%)の3倍。次いで、神奈川県の4万4,061社(同6.4%)、愛知県の3万4,634社(同5.0%)、埼玉県の3万1,316社(同4.5%)、福岡県の2万9,121社(同4.2%)と続く。大都市圏が上位に並び、2万社以上の設立は9都道府県にのぼる。
 一方、最も少なかったのは鳥取県の1,551社(同0.22%)。

次いで、島根県の1,680社(同0.24%)、高知県の1,965社(同0.29%)、秋田県の2,118社(同0.31%)などが続いた。

「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」と「LINK」
「令和」設立企業 都道府県別


「令和」設立企業の倒産 累計1,316件が発生

 「令和」設立企業の倒産は2020年3月の第1号から2024年3月まで毎月発生し、月を追うごとに増加している。特に、2024年3月はこれまで最多の81件が発生し、当月の倒産件数(906件)の8.9%にのぼった。これまでの累計は1,316件を数える。
 年度別(4-3月)では2020年度が42件、2021年度は前年度の4倍以上の171件、さらに2022年度は前年度の2倍以上の411件、2023年度はこれをさらに上回る691件が発生した。
 2023年度の「令和」設立企業の倒産は、倒産全体(9,053件)の7.6%を占めた。

「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」と「LINK」
「令和」設立企業 倒産推移


【産業別】最多は飲食店の141件

 「令和」設立で倒産した1,316件のうち、産業別では、サービス業他が626件(構成比47.6%)で約半数。次いで、建設業の206件(同15.7%)、小売業の145件(同11.0%)、情報通信業の102件(同7.8%)と続く。


 サービス業他の業種別では、最多は飲食店の141件。開業とコロナ禍が重なり、厳しい経営環境が続いた。また、持ち帰り・配達飲食サービス業が26件発生。テイクアウト需要の増加を背景に起業したものの、競合激化などから軌道に乗らなかった企業も多い。このほか、訪問介護などの老人福祉・介護事業を含む社会保険・社会福祉・介護事業が100件だった。

「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」と「LINK」
「令和」設立企業の倒産 産業別


【原因別】「放漫経営」が約3割

 原因別では、最多が「販売不振」の736件(構成比55.9%)で半数。次いで、事業上の失敗などが原因の「放漫経営」が310件(同23.6%)で、2割を超えた。


 新興企業は「放漫経営」の構成比が高いのが特徴で、大半が事業上の失敗に起因している。事業や資金計画の見込みの甘さから事業化に至らず、本格稼働しないまま破たんに追い込まれたケースも多い。

「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」と「LINK」
「令和」設立企業の倒産 原因別


【負債別】負債1億円未満が9割超え

 負債額別では、1千万円以上5千万円未満が1,101件(構成比83.7%)で、8割以上を占めた。次いで5千万円以上1億円未満が118件(同9.0%)、1億円以上5億円未満が79件(同6.0%)と続く。負債1億円未満の小規模倒産が1,219件(同92.6%)で9割を超えた。
 負債10億円以上の大型倒産は15件(同1.1%)発生した。最大の負債額は電力小売(新電力)の(株)ホープエナジー(福岡市中央区、2022年3月破産)の300億円。持株会社体制への移行に伴い分割設立され、グループの新電力事業を承継したが、事業環境の悪化で逆ザヤに陥り行き詰まった。
 また、ドイツのミールキット会社の日本法人として設立されたハローフレッシュ・ジャパン合同会社(東京都港区、2023年9月破産、負債30億円)は世界18カ国で展開するブランド力を強みに、日本では2022年4月よりミールキットの宅配サービスを開始。コロナ禍での需要増を追い風にスタートしたが、同業他社との競合によりシェアを拡大できず、同年12月に日本からの撤退を発表した。

「令和」生まれ企業 5年間で68万社 多い商号は「アシスト」と「LINK」
「令和」設立企業の倒産 負債額別


 「令和」がスタートして5年間で、約68万社が設立された。「令和」設立企業は日本の企業数(368万社、令和3年経済センサス)の18%で、2割近くに達し存在感を高めている。
 「令和」5年間の大半はコロナ禍の影響を受けた。社会生活が制限され、企業を取り巻く事業環境も変容し、多くの企業がビジネスモデルの見直しや事業再構築を余儀なくされた。こうしたなかで誕生した「令和」設立企業は、新しい生活様式や新たな時代のニーズを汲み取ったスタートアップ企業も多く、経済活動の再開を牽引する役割に大きな期待もかかっている。
 一方で、「令和」設立企業の倒産は1,316件発生した。事業計画の見込みの甘さや、コロナ禍という想定外の危機に瀕し、早々に事業継続を断念する事例も多かった。1,316件のうち、再建型は民事再生法の8件にとどまり、破産などの清算型が大半を占めた。また、資本金別でも資本金500万円未満が999件(構成比75.9%)と、小資本企業の倒産が多数で、経営資源の乏しい新興企業の脆さが透けて見える。
 2023年度の全国企業倒産は前年度比3割増の9,053件に達した。コロナ禍での支援効果が薄れ、物価高や人手不足などのコストアップが収益環境の悪化を招き、息切れやあきらめ倒産が増えている。新興企業の成長力に大きな期待がかかる一方で、経験や実績の乏しい「令和」設立企業の生存競争はさらに厳しさを増す可能性が高まっている。