【ワールドカップ】39歳、メッシが常識の範囲を超える活躍を見...の画像はこちら >>
 どのスポーツもそうだが、最近はサッカーでも選手寿命が長くなった。40歳をすぎてもなお、現役を続ける選手は珍しくない。

 それを考えれば、先頃39歳になったばかりのリオネル・メッシは、まだまだ若い、ということになるのかもしれない。

 だが、39歳にしてワールドカップでプレーする、それも優勝候補のエースストライカーとしてプレーするとなれば、話は別だ。

 その活躍ぶりは、もはや常識の範囲を超えている。

 メッシは自身6回目のワールドカップ出場となる今大会で、際立つ結果を残している。

 ここまでグループリーグ3試合でピッチに立ち、決めたゴール数は初戦から順に、3、2、1の計6ゴール。キリアン・エムバペ、アーリング・ハーランドら、名だたる点取り屋が前評判に違わぬ活躍を見せる今大会だが、メッシはそんなライバルたちを抑え、得点ランキングのトップに立つ。

 今大会で初めて先発メンバーを外れたグループリーグ3戦目のヨルダン戦でも、短い出場時間ながらFKを確実に決め、チームに貴重な追加点をもたらしている。

 また、今大会のメッシは、さまざまな個人記録も更新中だ。

 ワールドカップでの個人通算得点数を19まで伸ばし、歴代トップに立つとともに、ベストレコードをなおも更新中。ワールドカップでの連続試合得点記録も、前回大会から7試合連続を継続中で、これまた歴代最多の記録を塗り替えた。

 これまで連続試合得点記録を持っていたのは、6試合連続のジャイルジーニョ(ブラジル)とジュスト・フォンテーヌ(フランス)。現代においては、いわば"歴史上の人物"と言っていいような選手たちを超えてしまったのだから、もはやメッシを伝説的な選手と評することに、異論をはさむ余地はないだろう。

 とはいえ、冒頭に記したとおり、さすがのメッシも39歳。ベテランを評するときに、よく「衰え知らず」という表現が用いられるが、現実的には衰えは隠せない。

 もともと90分を通してほとんど走らない選手だったのだから、運動量が大きく低下することはないにしても、ドリブルにしろ、フリーランにしろ、単純に加速力が落ちたと感じるシーンは多い。

 体の動きにも往時のキレは失われ、かつてなら瞬間的に相手選手の逆を取ってかわしていたであろうシーンでも、ボールを失うことが目につくようになった。

 だがしかし、得点できる空間に入っていく嗅覚と、落ちついてフィニッシュするシュートテクニックは、相変わらず頭抜けている。

 まさにゴールへ向かってパスするかのように、さりげなくシュートを流し込む。あの落ちつきと正確な技術は、他はそうそう真似のできないものだ。

 と同時に、メッシをメッシたらしめる、アルゼンチン代表も大したものだ。

 メッシは1試合の大半を歩いて過ごし、瞬間的に攻撃に加わるだけで、ほぼ守備はしない。それでも、誰よりも点を取ってくれるから、彼にボールを渡す価値がある。

 たとえば、グループリーグ2戦目のオーストリア戦での2ゴールは、いずれも中盤でボールを持ったメッシが、一度味方にパスをさばいてから、自らゴール前へ入っていって決めたものである。

 味方の選手たちは、メッシがどこに動くのかを見逃さず、得点できるポイントに入ってくるのを待っている。

言い換えれば、アルゼンチン代表は、常にメッシに点を取らせようとしているのである。

 言うまでもないことだが、メッシに得点王を取らせようとしているとか、記録を更新させてやろうとしているとか、個人の名誉を優先しているという意味ではない。

 あれだけ優れたフィニッシャーがいるのだから、それを生かさない手はない。勝つためにはどうするのが最善かを、アルゼンチン代表の選手たちは、よくわかっているということだ。

 オーストリア戦の先制ゴール。ティアゴ・アルマダはゴール前に走り込むと、左サイドからのクロスをスルーした。

 その背後に走ってきていたのが、メッシだった。

 いかにフリーとはいえ、それほど簡単なシュートではなかったはず。しかし、落ちつき払った背番号10は、いともたやすくゴール左に柔らかなシュートを流し込んだ。

 思わずため息がもれる、職人技である。

 得点力不足に悩んでいないチームなど、世界中を探してもひとつもないというほど、サッカーで一番難しいのは、点を取ることだ。

 だから、メッシは何歳になっても価値がある。

 最も難しい役目を難なくこなす。そこに衰えは見られない。

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