夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)は、選手も観客も暑さとの戦いである。取材する人間も甲子園球場の銀傘の下にいるとはいえ、したたる汗を拭いながらスコアをつけている。

 もっとも暑さが厳しい第2試合になると、「このまま水風呂に飛び込んだら気持ちがいいだろうな......」という思いが頭をかすめる。天然のサウナに入っているかのようだ。

 実際に暑さ対策の一環として、サウナを活用している強豪校もあると聞く。巷ではサウナブームの終焉もささやかれるが、高校球界のサウナ人気は根強い。そこで、現役の甲子園球児にそれぞれのサウナ事情を語ってもらった。

(※以下、さまざまな体験談が続きますが、あくまで個人の感想です。サウナは個人の体調に応じて無理のないようお楽しみください)

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【サウナへのそれぞれのこだわり】

「サウナから出て水風呂に入って、外気浴をしている時にととのう感じが好きなんです」

 そう語るのは、英明(香川)の右翼手・松本一心(3年)だ。松本がチーム内でサウナの効用を触れ回ったため、徐々に愛好者が増えていったという。中堅手の吉川輝(3年)もそのひとりで、「休みの日や練習が早く終わった日は、近くのサウナで体をととのえています」と語る。

 甲子園期間中に過ごす宿舎にはサウナがないため、松本は「ホテルの僕の部屋に水風呂をつくって、疲れを取っています」と明かした。

 サウナの入り方にこだわる選手もいる。東海大甲府(山梨)の正捕手を務める岡田優心(3年)は「疲労回復効果があるので」と、中学2年の頃からサウナを愛用している。

「インターネットで見たんですけど、サウナに7分入ると酸素摂取量が増えると聞いたので、なるべく7分入るようにしています。

プラス水風呂1分、休憩5分のセットが自分のベストだと感じています」

 関東一(東東京)の俊足リードオフマン・佐宗悠樹(さそう・ゆうき/2年)は、幼少期から父に連れられてサウナに通ってきた「ベテラン」である。佐宗のこだわりは「最初に水風呂に入ること」だという。

「冷たい状態からサウナに入ると、気持ちいいので。自分は負けず嫌いなので、サウナ室内にほかに人がいると『絶対この人たちには負けない』と勝負みたいになってしまいます。だいたい1回あたり12分くらい入っていますね」

(※繰り返しになりますが、あくまで個人の感想です)

【夏の甲子園2026】球児たちにサウナブーム到来? ホテルに水風呂、雪の中で外気浴...驚きの"ととのい"事情
サウナ愛好者が多い有明ナイン photo by Ryuki Matsuhashi

【年に一度のサウナを満喫】

 寮生活のため、サウナに入りたくても入れない球児もいる。神村学園(鹿児島)の仲地奏宇(なかち・そう/2年)は沖縄生まれの宮崎育ち。サウナ好きの兄の影響で、中学時代から魅力にハマったという。

「神村ではサウナに入れないので、年に1回帰省した時に行くのが楽しみなんです。300円と安かったのが、最近500円に値上げしてしまって。それでも安いですよね。野球で悩んでいると、兄が『サウナ行くぞ』と連れ出してくれます」

 有明(熊本)はチーム内にサウナ愛好者が多い。1回戦の立命館宇治戦で5打点と大暴れした永田晴輝(3年)も「疲れが抜けるので、すごくいいです」と語る。

 投手陣の柱のひとりである工修哉(たくみ・しゅうや/3年)は、寮内での涙ぐましい工夫を語ってくれた。

「寮の風呂の温度を熱くして湯気を立てて、ちょっとサウナっぽくするんです。それで汗をかいたら水風呂に浸かる遊びをみんなでやっています」

 甲子園出場校は全国にまたがるため、地域性を感じさせるエピソードもあった。大分商(大分)の堅守を武器にする遊撃手・菅原翔空(すがわら・とあ/3年)は、温泉地で有名な別府の出身である。

「オフの日に時間があったら、友だちを誘って別府温泉に行きます。温泉街で雰囲気があって、疲れが取れます。リフレッシュできて、『次の日も頑張ろう』と思えますね」

【サウナは暑さ対策に有効!?】

 出場校のなかで最北の地にある白樺学園(北北海道)では、投手陣の柱だった村端勇心(むらはた・ゆうしん/3年)、鎌仲賢吾(3年)の両右腕がサウナを愛用している。

 独特の投球フォームで存在感を示す鎌仲は、親友である村端と公私で時間を一緒に過ごしてきたと語った。

「冬の間ずっと、学校が閉まるまで村端と練習して、歩いて帰りながら『一緒に頑張ろうぜ』と切磋琢磨してきました。きつい練習をしてきたので、オフの日は疲労回復のためにお互いに誘い合って帯広のサウナに行っていました。雪が降っていても、外気浴をするのは気持ちいいですよ。ただ、すぐに体が冷えてしまうので、1~2分に留めるように注意しています」

 鎌仲に「サウナは暑さ対策に効果があると思いますか?」と尋ねると、「あると思います」と答えた。

「自分は暑さに強くなりました。

北海道から暑さの質が違う甲子園に来てもバテないのは、サウナのおかげなのかなと感じます」

 サウナが暑さ対策に有効なのかは、個人差があるようだ。有明の簗脇拓馬(やなわき・たくま/3年)のように「去年より足をつらなくなった」と証言する選手もいれば、「あまり関係ない」と語る選手も多かった。

 そして、サウナを愛してやまない英明の松本は「ないです」と即答した。

「自分は暑さにめちゃくちゃ弱いので。そもそも気持ちがいいのは水風呂であって、サウナ室に入っている時は『はよ出たいな』としか思ってないですから」

 今夏の甲子園は例年と比べて熱中症でダウンする選手が明らかに減っているように感じる。その要因はもちろん「サウナ効果」ではなく、2部制を導入するなど球児の安全対策に骨を折ってきた運営努力なのだろう。

 とはいえ、サウナを愛用するのは、当然ながら個人の自由である。グラウンドでも浴場でも適度に水分を摂りながら、「サウナー球児」としての日々を謳歌してもらいたい。

菊地高弘●文 text by Takahiro Kikuchi

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