印刷インキ大手の「DIC」成長投資を半導体、バッテリー、フィジカルAIに振り向け ボルトオンM&Aを活用

印刷インキや顔料、合成樹脂などを手がけるDIC<4631>は、M&Aなどの成長投資を半導体、バッテリー、フィジカルAI(人工知能がロボットなどを制御する技術)の3分野に振り向ける。

2026年12月期~2030年12月期の長期経営計画「DIC Vision 2030」Phase2で打ち出した計画で、M&AではボルトオンM&A(既存事業を補完する追加買収)を基本とし、CVC(事業会社がスタートアップなどに出資する取り組み)投資も活用する。



2030年12月期までの5年間にM&AやCVCを含む戦略投資に900億円+αを充て、成長事業の拡大を進める。

成長事業を3分野に絞り込み

成長投資を半導体、バッテリー、フィジカルAIに振り向ける方針は、2026年2月に公表した長期経営計画「DIC Vision 2030」Phase2で掲げたもので、2026年8月10日に公表した2026年12月期第2四半期決算説明資料でも、同3分野を成長事業として位置付け、投資対象としている。

印刷インキ大手の「DIC」成長投資を半導体、バッテリー、フィジカルAIに振り向け ボルトオンM&Aを活用
DICの売上高構成比


3分野のうち半導体とバッテリーは以前から事業基盤の整備を進めてきた領域で、Phase2ではこれにフィジカルAIを加え、3分野を「AI融合社会」を支える成長事業とした。

M&Aについては、この3分野で既存事業を補完するボルトオン型を基本とする方針を示している。

2026年12月期~2030年12月期の5年間にM&AやCVCを含む戦略投資に900億円+αを充てる計画だ。

幅広い成長領域を探索した2022年12月期~2025年12月期のPhase1から成長事業を絞り込み、M&Aを活用しながら成長事業の規模拡大を進める段階に入った。

事業化段階に応じた投資手法を採用

DICは2023年にカナダのPCAS Canada(現Innovation DIC Chemitronics)を買収し、先端半導体向けフォトレジスト用ポリマー事業を強化したほか、2025年12月期にはカナダで生産ラインを拡張した。

半導体事業では前工程から後工程まで幅広い材料を手がけており、Phase2では、こうした事業基盤を生かしながら、ボルトオンM&Aを基本に設備投資も組み合わせて製品群を拡大し、戦略的M&Aによって不足する経営資源や技術を取り込む方針だ。

バッテリーでは、DICが持つ材料技術にPhase1で獲得した評価技術を組み合わせ、新たな事業を展開する。

一方、フィジカルAIでは、市場との接点や知見が少ないとしており、CVC投資を中心に外部との連携を進める。

2026年7月には、フィジカルAI分野で新たな事業機会を探るため、スイスのベンチャーキャピタルと共同でフィジカルAIをテーマとした国際共創イベントをチューリッヒで開催した。

今後は協業や共同実証、戦略投資など具体的な取り組みの検討を進める。

Phase2では、成長事業の拡大に向けて戦略的M&AとCVC投資を活用し、不足する経営資源や技術を外部から獲得する考えだ。

高まるファンクショナルプロダクツの存在感

DICの2025年12月期の売上高は前年度比1.8%減の1兆521億9400万円、営業利益は17.2%増の521億9200万円だった。



売上高は、物価高や景気先行きに対する懸念などを背景に、パッケージ用インキや塗料用顔料などの出荷数量が減少し、2期ぶりの減収となった。

営業利益は、高付加価値製品の堅調な出荷に加え、構造改革による海外事業の黒字化などにより、2けたの増加となった。

事業別の売上高構成比は、印刷インキなどを手がけるパッケージング&グラフィックが52.2%、顔料などのカラー&ディスプレイが20.5%、合成樹脂や半導体材料などを含むファンクショナルプロダクツが27.3%だった。

今後、半導体、バッテリー、フィジカルAIの3分野でM&AやCVC投資が進めば、これら3分野からなる成長事業を含むファンクショナルプロダクツの存在感が高まることになりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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