【M&A成長戦略を聞く③】人口減・オーバーストアに挑むクスリのアオキHDの「フード&ドラッグ」戦略

ドラッグストア業界の競争軸が変わり始めている。かつては医薬品や日用品の安売り競争が中心だったが、現在は食品、とりわけ生鮮食品をどこまで取り込めるかが勝敗を左右しつつある。

その流れを先導している企業の一つが、北陸発祥のドラッグストア大手、クスリのアオキホールディングス(HD)<3549>だ。同社の榎戸要介経営企画本部長に、M&Aの狙いやPMIの考え方、そして目指す将来像について聞いた。

スーパー化するドラッグストア

—クスリのアオキHDは「フード&ドラッグ」を掲げています。競合はドラッグストアですか、それともスーパーですか。

本業はドラッグストアですが、当社は3つの店舗フォーマットを持っています。300坪型は食品に強いドラッグストアで、主な競合はドラッグストアです。400坪型は食品売場が広く、ドラッグストアとスーパーマーケットの両方が競合になります。

500坪型になると、店内に鮮魚や精肉、惣菜の加工場を設置しています。鮮魚も扱っており、売上構成比も食品がかなり高いので、実質的にはスーパーマーケットに近い業態です。

【M&A成長戦略を聞く③】人口減・オーバーストアに挑むクスリのアオキHDの「フード&ドラッグ」戦略
店舗規模によって競合は変わる(同社ホームページより)
店舗規模によって競合は変わる(同社ホームページより)

—大型化を進める狙いは。

これまでは300坪型が中心でした。ただ、競争力を高めるためには400坪・500坪型を主流にしていく必要があります。

50周年ビジョンでも「フード&ドラッグ+調剤の進化」を掲げており、第4次中期経営計画では大型フォーマットへの転換を明確に打ち出しています。



特に500坪型は必要面積が大きく出店しづらい一方で、売上規模が大きく、収益性も高い。今後は「300坪による高速出店」から、「400坪、500坪中心の収益力重視」へ転換していきます。

生鮮食品は集客装置、来店動機そのもの

—なぜそこまで生鮮を重視するのでしょうか。

生鮮は集客と来店動機を高める存在だからです。生鮮があると店舗の利便性が圧倒的に上がります。ドラッグストアで生鮮を扱う会社はありますが、当社ほど本格的に加工場まで設けている企業は限られています。そこは差別化要因だと考えています。

—50周年ビジョンでも食品強化を大きく打ち出しています。


2020年に400坪フォーマットを開発し、その後、既存店への生鮮導入改装を700店舗実施しました。青果、精肉、惣菜の導入を進め、既存店売上も改善しています。

今後は、生鮮売上を2030年5月期に1300億円まで拡大する計画です。食品と生鮮を合わせた売上構成比は55~60%を想定しています。

新規出店だけでは限界、だからM&Aが必要

—M&Aを積極化している背景を教えてください。

新規出店がかなり難しくなっているからです。

理由は3つあります。1つ目は地方人口の減少。2つ目は建築費の高騰。3つ目はオーバーストア化です。

いい立地には既に誰かが出店しているので、残った場所の取り合いになっています。そのため、M&Aの重要性は今後さらに高まると見ています。

—50周年ビジョンでもM&Aは成長戦略の柱ですね。


第4次中期経営計画では、5年間で400店舗の出店を計画しています。そのうち約3割をM&Aで補完する方針です。

2021年以降、地場スーパーを中心にM&Aを進め、2026年5月期第2四半期時点で21社、167店舗まで拡大しました。単純に店舗数を増やしたいわけではありません。立地、人材、生鮮ノウハウを一緒に取得できることが大きいです。

店だけ買っても意味がない、人材が必要

—M&Aで最も重視しているものは何でしょうか。

店舗と人材です。もちろん店舗がなければ、何も始まりません。ただ、店だけあっても、優秀な人材がいなければ意味がないんです。特に生鮮では地域性が非常に強い。土地柄を理解した人材がいないと売場は成立しません。

—PMI(統合プロセス)で重視していることは。


地域性を残すことです。例えば新潟では牛肉より豚肉が売れます。東北では酒類比率が高い。地域ごとに食文化が全く違います。

その地域で支持されてきた商品や売場を消してしまうと、お客様が離れてしまう。当社は、地元スーパーの強みを活かしながら、自社のチェーンオペレーションを融合する形を取っています。

「地域で選ばれる店」を作ることが目的です。

—M&Aした地方スーパーから学ぶことも多いのでしょうか。

かなりあります。各社それぞれ強い地域性がありますし、酒類に強いスーパーや、地場魚に特化したスーパーなど、本当にオリジナルカラーがあります。当社としては、その地域性を壊さずに融合することを重視しています。

プロセスセンターで、食品スーパーの構造を変える

—サプライチェーン改革も進めています。

今、特に力を入れているのがプロセスセンターです。生鮮は手間がかかる一方、人手不足と人件費高騰が深刻です。店で作らなくていいものはセンターでまとめて加工し、各店へ配送することで、コスト削減と品質均一化を進めています。

50周年ビジョンでは、全国3拠点の生鮮PC(プロセスセンター)新設も打ち出しています。物流網を再構築し、総店舗数の約90%をカバーする構想です。

—PB(プライベートブランド)戦略について教えてください。

「A&」(エーアンド)ブランドを展開しています。

単なる低価格PBではなく、「クスリのアオキでしか買えない価値」づくりを図っています。

PB商品というのはその企業独自の「ブランド」であり、生鮮同様、集客と来店動機を⾼めるアイテムだと考えています。価格と品質の両軸を担保し、A&の「ファン」を獲得することで認知度の向上に繋げていきたい。

2025年5⽉期で PB売上⾼は 300億円ですが、2030年には800億円、PB⽐率10%を⽬指しています。

ドラッグストアではなく、地域インフラを目指す

—将来ビジョンをどう描いていますか。

当社の50周年ビジョンは、「あなたの町で、『便利な暮らし』と『笑顔につながる健康』を支えるドラッグストアを目指して」です。

【M&A成長戦略を聞く③】人口減・オーバーストアに挑むクスリのアオキHDの「フード&ドラッグ」戦略
「地域インフラ」としての定着が成長のカギ
「地域インフラ」としての定着が成長のカギ(同社50周年ビジョンより)

人口減少が進む中、地方では店がなくなること自体が生活インフラ問題になります。だからこそ、食品、日用品、医薬品、調剤を一体で提供し、「ここに来れば生活が完結する」という店を作りたい。ドラッグストアというより、「地域インフラ」を目指している感覚に近いですね。

ドラッグストア業界では市場縮小が進み、オーバーストア状態になっています。そこで大事なのは、「最初に消える店にならないこと」だと思っています。低価格だけではなく、地域で必要とされる店になることが重要です。


2035年5月期に売上高1兆円、小売業トップ20入りを目標にしています。ただ、数字だけではありません。地域のお客様に必要とされ続けること。それが最も重要だと思っています。

文:糸永正行編集委員

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