【M&Aリブート】ヤマダHD、家電オンリーから脱却へ「くらしまるごと」戦略を推進|大型再編の仕掛けも 

ヤマダデンキを中核とするヤマダホールディングス(HD)は家電量販業界トップに立つ。売上高はおよそ1兆7000億円で、2位に7000億円以上の大差をつける。

「くらしまるごと」戦略を旗印に、家電量販店の枠にとどまらず、家具・インテリア、キッチン・バス、戸建住宅、リフォームなど住関連に事業領域を広げてきた。

来年10月には同業5位のエディオンとの経営統合を控え、新たな業界再編の引き金になる可能性を秘める。

家電オンリーから脱却、「住」領域に挑戦

家電量販店から、ライフスタイル提案企業へー。こんな掛け声とともに、ヤマダHDが家電オンリーからの脱却を目指して、ビジネスモデルの変革に挑戦を始めたのは2010年代初めのことだ。少子高齢化・人口減少で国内市場の縮小が避けられないとの強い危機感があった。

当時、ヤマダHDの売上高は業界初の2兆円超えに沸いたが、これをピークに以降、2兆円ラインから遠ざかり、近年は1兆6000億円台で推移している。従来の延長線、つまり家電量販店の枠のままであれば、さらなる落ち込みが待ち構えていたと考えられる。

持続的成長の確保に向けてフォーカスしたのが衣・食・住のうち「住」だ。10年がかりでM&Aを主軸に関連投資を積み重ね、今日、「くらしまるごと」と銘打った経営戦略の成果として実を結びつつある。

実際、戸建住宅やリフォームなどを中心とする「住建」事業は売上高のほぼ2割を占めるまでに成長。構成比の多寡はともかく、金額でみれば3000億円企業をグループ内に新たに抱えたことになる。

「デンキ」起点に住建・金融・環境に展開

ヤマダHDの2026年3月期は売上高3.9%増の1兆6918億円、営業利益62%減の161億円。大幅な営業減益は約240億円規模の在庫処分を実施したのが主因で、商品回転率を高めて資本効率の改善を図る前向きな一手としている。

続く2027年3月期は売上高5.2%増の1兆7800億円、営業利益3.2倍の515億円を見込む。

【M&Aリブート】ヤマダHD、家電オンリーから脱却へ「くらしまるごと」戦略を推進|大型再編の仕掛けも 

事業セグメントとしては「デンキ」「住建」「金融」「環境」「その他」の5つがある。住建は2021年3月期から登場し、金融と環境は22年3月期に追加された。このうち、金融では住宅ローンやリフォームローン、保険などを取り扱う。

ちなみに、2019年に買収した大塚家具(その後、ヤマダデンキが吸収合併)の家具・インテリア事業は「デンキ」セグメントに属する。大塚家具といえば、お家騒動による経営の迷走が思い出されるが、現在も「IDC OTSUKA」のブランドネームが引き継がれている。

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積極的なM&A、変革の原動力に

「くらしまるごと」戦略具現化の手始めとなったのが2011年、中堅住宅メーカーのエス・バイ・エル(当時、東証1部)の買収だ。18年にグループ内の住宅事業を集約してヤマダホームズを設立した際には母体となり、住建セグメントの中核を担う。

2020年には注文住宅を強みとするヒノキヤグループ(当時、東証1部)を子会社化。ヤマダホームズとの両輪で戸建住宅市場を開拓する体制を整えた。

この間、2012年にキッチン・バス、洗面化粧台など住宅設備機器のハウステックホールディングス(現ハウステック、群馬県高崎市)を、19年には住宅の検査・点検を手がける家守りホールディングス(現家守り、東京都千代田区)を子会社化し、事業の幅を広げた。

足元でもM&Aの手綱は緩めていない。昨年11月に東北をエリアとする地場住宅会社の東和総合住宅(仙台市)を、今年2月にはヤマハリビングテックを前身とするトクラス(浜松市)を相次いで子会社化した。

トクラスは住宅設備機器メーカーとして高い知名度と顧客基盤を持ち、共同購買やヤマダデンキ店舗での販売促進を見込んだ。

もちろん、M&Aは住建にとどまらない。2018年に家財保険のパーソナル少額短期保険(現ヤマダ少額保険、群馬県高崎市)、23年には住宅ローンのハウス・デポ・サービス(東京都中央区)を傘下に収め、金融サービスを充実した。

環境事業も同様で、これまで家電リサイクルや建設廃棄物処理の会社などを子会社化し、体制を強化してきた。売上高に占める割合は今のところ2%台に過ぎないが、伸びしろは十分にありそうだ。

戦略店舗「LIFE SELECT」の出店を加速

ヤマダHDの直営店舗数は928店(6月末、アウトレット・リユース専門店、家具専門店などを含む)。

この中で店舗戦略の主軸に据えるのは「LIFE SELECT」だ。家電、家具からリフォーム、住宅相談、住宅展示までをフルにそろえ、「くらしまるごと」戦略を体現する大型店舗と位置付ける。

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「くらしまるごと」戦略を牽引する大型店舗「LIFE SELECT」…東京・大井町

「LIFE SELECT」は3月末時点で41店。総店舗数の5%に満たないが、その売上構成比(2026年3月期)は20.1%と全体の5分の1を占める。

「LIFE SELECT」は50万人規模の商圏に配置することにしており、地域シェアを一気に押し上げる“装置”の役割が期待されている。今後、出店を加速して2030年3月期までに80店に倍増を目指す。

5位のエディオンと経営統合で合意

今年は家電量販業界で久々の大型M&Aが飛び出した。最大手のヤマダHDと5位のエディオンは6月初め、2027年10月に経営統合することで基本合意したと発表した。

両社を合わせた売上高は約2兆5000億円と、業界2番手を争う1兆円規模のノジマ、ビックカメラを倍以上引き離す断トツの巨大家電量販グループが誕生する見通しだ。

エディオンは2002年に中四国を地盤とするデオデオと中部地盤のエイデンが統合して発足し、2026年3月期売上高は7937億円(直営店舗は453店)。

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エディオンの店舗(東京・秋葉原)

家電量販では2012年にヤマダ電機(現ヤマダHD)がベスト電器、ビックカメラがコジマをそれぞれ買収して以来の大型再編となる。ヤマダHDは群馬県高崎市、エディオンは大阪市に本社を構えるが、統合に伴い設立する持ち株会社の本社は東京都内に置く。

統合によるスケールメリットを生かし、プライベートブランド(PB)家電の強化や、仕入れなどの効率化を見込む。

ただ、家電量販市場が縮小に向かう中、スケールメリットの追求にはおのずと限界があることは否めない。

「製販一体型」モデルにどう対抗?

業界2位のノジマは4月、約1100億円を投じて日立製作所の白物家電事業(冷蔵庫、洗濯機、掃除機など)を来年3月までに買収することを発表。製販一体による垂直統合型のビジネスモデルの構築に乗り出した。

ほぼ同様の目的で6月には、テレビ通販大手のジャパネットホールディングスも中堅家電メーカーのツインバードに買収を提案(ツインバードは8月末に反対を表明)し、業界の垣根を超えた再編機運も高まりつつある。

競争環境が目まぐるしく変化する中、家電量販のガリバー企業・ヤマダHDの来し方行く末に改めて注目が集まることになりそうだ。

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文:M&A Online

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