「マンションは暴落する!」と叫べば儲かる? 予想が外れ続けても不動産の専門家が“恐怖予測”をやめない理由
「マンションは暴落する!」と叫べば儲かる? 予想が外れ続けても不動産の専門家が“恐怖予測”をやめない理由

「東京のマンションはいよいよ暴落する」「20XX年、タワマンはスラム化する」。不動産市場が変化の兆しをみせる今、勢いを増しているのが一部の専門家による「マンション暴落論」だ。

しかし、彼らの予測は本当に当たるのだろうか。フジテレビに身を置いていたアナウンサーであり、自身も自宅タワマン購入時に「“名指し”で暴落を煽られた」経験を持つ西岡孝洋さんが、暴落論が生まれるカラクリと、情報との正しい付き合い方を語る。

「不動産暴落論」はことごとく外れてきた

そもそも、専門家が声高に叫ぶ「暴落」とはどの程度のレベルを指すのか。西岡さんは「大きく値上がりした後の2割程度の下落なら、価格調整の範疇だと思います。暴落と言うからには、半額くらいにならないと『私の予測が当たりました』とは言えないはずです」と定義する。

一方でアベノミクス以降、東京の不動産市場は暴落どころか、右肩上がりを続けてきた。しかし、その間も「暴落論」はメディアをにぎわせてきたのである。いわく、

「東京オリンピックが終われば不動産は暴落する」
「アベノミクスが出口を迎えれば不動産は暴落する」
「コロナで不動産は暴落する」
「リモートワーク普及で都心不動産は暴落する」
「外国人投資マネーが引けば不動産は暴落する」

もっともらしい論拠が添えられてはいたが、予想は全く当たっていない。

では、なぜ一部の評論家たちはそこまで極端な暴落を煽りたがるのか。西岡さんは、それが専門家の「戦略」に過ぎないと喝破する。

「『上がり続けます』と言い切ってしまうと、相場が少しでも下がった時に『予測が外れた』と非常に分かりやすく叩かれます。しかし『いつか下がる、暴落する』という主張は、相場が上がり続けている間は『まだその時期が来ていないだけだ』と言い訳ができてしまいますから、永遠に『私は間違っていない』という主張ができます」(西岡さん、以下同)

さらに、メディア側の構造的な問題も大きい。テレビなどのメディアは常に「両論併記」を求める傾向がある。

「テレビの場合、マンション価格が上がるという意見を紹介する以上、バランスを取るために必ず『下がる』という意見も入れなければならないと考えがちです。その結果、番組を構成する上で『暴落を主張する専門家』の枠が確実に必要になり、特定の論客がその枠に重宝されるという構造に陥りがちです」

私たちも「暴落」という魔法の言葉を求めている

発信側だけでなく、受け手側の心理も暴落論を後押ししている。「暴落」という言葉は、圧倒的にアテンション(注目)を集めやすいのだ。

「特にネットの場合、YouTubeのサムネイルやネット記事のタイトルに『暴落』と入れるだけで、再生回数やPVが全く違ってきます。『これからのマンション市況を考えよう』というタイトルと、『いよいよ来たか暴落!』というタイトルなら、誰もが後者をクリックしてしまいますよね」

なぜ人は暴落のニュースを見たがるのか。そこには人間の「正当化の心理」と「不安」が入り混じっていると西岡さんは指摘する。

「10年以上相場が上がってきた中で、マンションを持っていない人からすれば、高値づかみして破産した人の話を聞いてほっとしたい、自分たちが買わなかった判断を正当化したい、という心理があると思います。近所で家を買って資産が2億円になった人の話より、無理して家を買って破産した人の話を聞きたいのが人間の本音です。

逆にマンションを持っている人は、自分のマンションがどうなるか不安だから見てしまう。結果として、構造的にどちらの層も『下がる』という情報に興味を惹かれてしまうのです」

地上波のテレビ番組では、視聴者からクレームが来るため極端な暴落煽りは避けられる傾向にあるが、YouTubeやネットメディアでは規制がなく、「やりたい放題」になっているのが現状だという。

確かにYouTubeで「不動産相場」と検索すると、「暴落」「急落」「大幅に下落」「市場崩壊」「バブル終了」「最悪の結末」という言葉が大書された、刺激的なサムネイルが並ぶ。

ところで西岡さん自身、過去に「暴落論者」に対して強い怒りを覚えた当事者でもある。彼が新築時に豊洲のタワーマンション「スカイズ タワー&ガーデン」を購入した際、ある著名な不動産評論家が記事で物件名が特定できる形で個別に「暴落」を予言したのだ。

「その評論家は、『駅から徒歩12分でアクセスが悪く、陸の孤島みたいなところだ。あんなマンションに資産価値が残るわけがなく、いずれ坪150万円になる』と書いたんです。さすがに、本当に嫌な気持ちになりました」

西岡さんは当時坪単価200万円台前半で買ったが、現在は600万円ほどに上がっている。予想は大外れだったわけだ。しかし西岡さんが問題視しているのは、予想が外れたこと自体ではない。

「『湾岸エリアは今後厳しいかもしれない』といった全体的な相場観を語るなら、評論家の仕事として全く問題ありません。しかし、明らかに特定のマンションとわかるような表現をして『ここは暴落する』と名指しするのは、評論家としてルール違反ではないでしょうか」

そこには、実際に生活している住人がいるからだ。

「ひょっとしたら、その記事を読んで不安になり、売却を急いで損をしてしまった住人がいたかもしれない。メディアの人間として言わせてもらえば、顔が見える当事者を傷つけるような言葉を使ってアテンションを稼ぐのはやってはいけないことで、専門家を名乗る資格がないと感じます」

市況予測との付き合い方

では最後に、一般の購入検討者は、こうした暴落論や不動産の予測情報とどう付き合えばいいのか聞いてみた。

「答えはシンプルです。そもそも予想することがナンセンスなんです。不動産価格の予想は、株と同じで誰にも分からないと思った方が良いです。

不動産は『2030年に人口動態がこうなるから下がる』とか『金利がこうなるから下がる』などと因果関係っぽく語られると信じてしまいがちですが、そうしたマクロ的な予想がピンポイントで当たったのを私は見たことがありません。ミニバブル崩壊の時も、コロナ禍のリモートワークの時も、彼らの予想は当たりませんでした」

だからこそ、外的な予測に振り回されるべきではないと西岡さんは強調する。

「誰にも分からない未来の価格を心配するのではなく、『万が一どこまで下がったら、自分の生活が破綻するのか』という最悪のラインだけを把握しておくことが最も重要です。例えば私の場合、スカイズが坪150万になろうが、一生住むつもりで買っていたので、下がっても精神的には耐えられます。逆に、2年後に買い替えが決まっているなど価格上昇を狙って短期転売を目論むような人は、価格下落の局面で残債割れ(売却額がローン残高を下回る)などの状況に陥り致命傷になってしまいます。

家を買うという行為に、過剰に『資産価値』という言葉を持ち込みすぎるのは考えものです。自分がきちんとローンを支払っていけて、なおかつその家が欲しいのであれば、暴落論などに惑わされず、シンプルに昔の感覚に戻って、ローン返済が年収の何パーセント以内に収まる、自分が無理なく買える物件を買うべきだと思います」

取材・文/集英社オンライン編集部

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