〈W杯全104試合リアタイ観戦〉小柳ルミ子(74) 睡眠は「試合の合間に1時間だけ」でも追い続けた22年目のメッシ愛
〈W杯全104試合リアタイ観戦〉小柳ルミ子(74) 睡眠は「試合の合間に1時間だけ」でも追い続けた22年目のメッシ愛

出場国枠が48か国へ拡大され、全104試合で開催された今回の北中米W杯。多くの試合が日本時間の深夜から午前にかけて行われる中、その全試合をリアルタイムで追った猛者がいる。

デビュー56周年を迎えた歌手・俳優の小柳ルミ子だ。

 

年間2000試合以上を観戦するという小柳は、試合の合間に1時間だけ睡眠をとりながら、サッカー漬けの日々を送っていたという。22年追い続けてきたメッシへの思い、アルゼンチン敗退の涙、日本代表の評価について聞いた。

睡眠は試合の合間に1時間だけ…

「もうほとんど寝てないです、どうかしてるわよね(笑)。ただ、私は『見たい』と思ったら全部見ちゃうんです。『やる』って決めたら『やる』、それだけなの」

そう並々ならぬ熱意を明かすのは、デビュー56周年を迎えた歌手・女優の小柳ルミ子だ。

海外サッカーのみならずJリーグや高校サッカーに至るまで年間2000試合以上を観戦するという小柳。W杯期間中はW杯専用のサッカースケジュールを片手にテレビとネット配信を駆使して視聴していたという。

「大会のスケジュールと照らし合わせたら、見事に仕事と被ってなくて。試合の合間に1時間だけ睡眠をとって、試合が終わってまた少し寝たら昼間の仕事に向かうようにしていました。7月2日のバースデーライブもやったんですよ」(小柳ルミ子、以下同)

74回目となる誕生日を祝いつつも、直近1カ月強はあくまでサッカー観戦漬けの毎日を送っていた。

「歩いてる時のメッシほど怖いものはない」

ハイライトやゴールシーンを後追いで視聴するのではなく、あくまでリアルタイムでの観戦にこだわる小柳。試合中に気を配る箇所について尋ねると「オフ・ザ・ボールですよ」と返ってきた。

「声を大にして言いたいんですけど、例えばアルゼンチンの試合を観て『メッシは歩いてるだけ』ってみんな言うじゃない? 違うの、歩いてる時のメッシほど怖いものはない。

彼はどこに相手の穴があるのかを脳裏に映像として焼き付けて見ているんです。

獲物を狙うライオンと同じで、忍び足でゆっくりと探っている。そういうシーンを観るのがとにかく面白いんです」

何を隠そう、小柳がサッカーに熱中するきっかけを作ったのはメッシだ。FCバルセロナで17歳でデビューした頃からのファンであり、以来22年にわたってその背中を追い続けてきた。その華麗なプレーに魅了されるのみならず、メッシからは人生訓も教わったのだという。

「24か25歳の時、彼がインタビューで『努力すれば報われる? そうじゃないだろ。報われるまで努力するんだ』と言ったんです。それからカタールW杯で優勝するまで、彼は諦めずに準備し続けてきた。誰もマネできないですよ。今回も初戦のアルジェリア戦でハットトリックを決めた時は思わず泣きました(笑)」

「あんなにトラップが流れるメッシは初めて」

そんなメッシ擁するアルゼンチン代表は決勝戦まで勝ち進むものの、スペイン代表に延長戦の末に0-1で敗れた。「終わってから3日間泣きっぱなしでした」と悲嘆に暮れる小柳。日課のようにXへ投稿していたW杯関連のポストも途絶えた。タイムラインに流れるアルゼンチン代表に関連する動画や情報を眺めていたという。

「22年間観続けてきましたけど、あんなにトラップが流れるメッシは初めてです。疲労かと思ったけど、そんな人じゃない。ディフェンス陣のプレスも後手後手だし、今思い返しても涙が出るくらいで……。ハイドレーションブレイクの後も動きが変わらないし、悪夢でも見ているかのようでした」と小柳は当時の心境を振り返る。

一方、メッシの影響で推すようになったというFCバルセロナの選手を多く抱えるスペイン代表の戦いぶりには賛辞を送る。「攻撃力を心配していたんですけど、(フェラン・)トーレスがきちんと決めてね。それとクバルシは最高、だって19歳のセンターバックですよ? ヤマルもバルサで15歳でデビューした時から『すごい選手が出てきたな』ってチェックしていました」

ハーフタイム・ショーは誰のために?

前述の出場枠拡大やハイドレーションブレイクの導入をはじめ、多くの施策が試された今回の北中米W杯。特に話題となった決勝戦でのハーフタイム・ショーについて、同じくステージに立つアーティストの目線からの意見を小柳に尋ねると、「あくまで選手たちが主役ですからね」といちサッカーファンとしての素朴な感想が返ってきた。

「15分のハーフタイムで選手たちが呼吸を整え、次のことを考えて準備する。それ以上のものは必要ないんですよ。もちろんアメリカはショービズの本場ですから、来てるお客さんや視聴者に楽しんでいただくというのもわかりますけど……」

日本代表を上回ったアンチェロッティ監督の戦術

気になるのは日本代表への評価だ。まず小柳はお気に入りとしてドイツ・ブンデスリーガで活躍する若きボランチを挙げた。

「佐野海舟みたいな代表選手は初めて見ましたね。自分でボールを持ち運んで突破して、シュートまで打って決めちゃう。

普通だったらパスを選択するような場面でも一人で何とかしちゃうんですよね。自信がある上に度胸もあって、『こんな選手がいるのか!』と新鮮に驚きました」

とはいえ、ラウンド32で敗戦を喫したブラジル戦については「再び逆転するような気概が見たかったですよね」とこぼす小柳。「相手は名将・アンチェロッティ監督ですからね、ハーフタイムで絶対に戦術を変えてくると思ったんです。そうしたら案の定クロス主体での攻めを選択するようになった。監督としての成功体験があるから、ああいう引き出しが多いんですよね」と、カナリア軍団の勝因を分析する。

北中米W杯から学ぶべき「したたかな情熱」

「サッカーは人生の縮図」という哲学を度々発信してきた小柳。こと北中米W杯の日本代表から学ぶべきポイントは「したたかさ」であるという。

「森保さんは謙虚で素晴らしい人格者ですけど、ピッチ内では嫌な人にならないと。それは選手も同じで、したたかな負けず嫌いにならなきゃいけないんです。例えばアルゼンチンは選手がとにかく必死で、9カ月かけて自転車で観に来るようなサポーターまでいるほど気概がある(笑)。魂がガーッと煮えたぎるような強さがね、必要なんです。やっぱり命を懸けないと」

その口ぶりはこの上なくパッショネイトだ。

最後に、次回の2030年開催となるW杯への展望について尋ねると、「相手が嫌がることをするためには絶対的な技術が必要」と日本代表の課題について厳しくも愛を持って強調した。

「カゼミーロがヘディングを決めたのも正確なクロスがあったからだし、スイス戦の後半でメッシがラウタロ(・マルティネス)の頭に右足で上げたクロスも技術そのものでしょ? ああいうテクニックを手にするための努力にしたたかな情熱が乗って、初めて世界で勝てるんです。各国とも4年後に向けて成長していくだろうし、今から考えないとダメですよ」

ふと「4年後って、私生きてるかしら」と微笑みながらも、右耳にぶら下がったシルバーのサッカーボール型のピアスは鋭く光っていた。

取材・文/風間一慶 撮影/野﨑慧嗣

 

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