「春雨だからヘルシー」は思い込み? ブームの麻辣湯に潜む“ヘルシーの落とし穴” 管理栄養士が勧める「具材」と避けたい組み合わせ
「春雨だからヘルシー」は思い込み? ブームの麻辣湯に潜む“ヘルシーの落とし穴” 管理栄養士が勧める「具材」と避けたい組み合わせ

若年女性を含む幅広い層で注目され、2025年のトレンドを席巻した中国発祥のスープ料理「麻辣湯(マーラータン)」。好きな野菜が選べ、主食が春雨であることから「ヘルシーで痩せる」というイメージが定着しているが、実は具材の選び方次第で800kcalを超える「カロリーの爆弾」へと変貌する落とし穴がある。

 

SNSで相次ぐ「麻辣湯で太った」という体験談の背景には何があるのか。管理栄養士の視点から、発汗と脂肪燃焼の誤解や、避けるべき高カロリーな具材、そして健康的に楽しむための賢い選び方まで、麻辣湯の理想と現実を調査。

麻辣湯は痩せるわけじゃない

街中で、オレンジや黄、赤の看板を掲げた麻辣湯(マーラータン)の店に、女性たちが長い列をつくる光景も珍しくなくなった。連日最高気温が35度を超える猛暑日にもかかわらず、麻辣湯の人気チェーン店には、女性たちが汗をかきながら並んでいた。

麻辣湯は2025年、女性を中心に一大ブームを巻き起こした中国発祥の料理。SHIBUYA109 lab.の「トレンド大賞2025」ではカフェ・グルメ部門1位を獲得したほか、ホットペッパーグルメ外食総研の「2025年流行グルメ調査」でも2位にランクイン。専門店の増加やコンビニでも発売され、2026年に入ってもその勢いは続いている。

店頭に並ぶ数十種類の食材から好きなものを選び、辛さやスープを指定して調理してもらう。チンゲンサイや白菜、キクラゲ、キノコ類などの野菜を自由に選べるほか、水餃子や豚バラなどの肉類、えび団子や卵入り魚団子などの練り物、春雨やトウモロコシ麺などの麺類を選ぶことができ、自分好みの1杯を味わうことができる。

そのため、「野菜をたくさん食べられる」「春雨だからヘルシー」「ダイエット中でも罪悪感がない」といった評判が目立つ。からい薬膳スープと一緒に食べると汗をかくこともあり、確かに健康に良さそうな印象を受ける。

しかし、実際には、じゃがいもデンプンなどが原料の太い春雨麺「ブンモジャ」、中華麺など、見た目や食感の異なる食材を少しずつ選んでいるうちに、1杯が炭水化物ばかりになってしまうこともある。

SNSでも、「麻辣湯にハマって8kg太った」「気づけば10kg増えていた」といった体験談も見受けられ、麻辣湯は、必ずしもヘルシーなだけの食べ物ではないことが伺える。

筆者が訪れた麻辣湯の店の列に並んでいた女性は、こう語る。

「私の中で麻辣湯のお気に入りの具材は4つ。春雨、ブンモジャ、プチプチした魚卵が中に入っているカニ団子です。あとは揚げパン! 『麺を食べているのにパン?』と思うかもなんですが、スープをたっぷり吸った揚げパンは、柔らかくて口の中でスープが溢れます。私は特に、マッシュポテトを溶かしたスープに揚げパンを浸して食べるのが好きです」

もはや「カロリーの爆弾」ともいえそうだが、好きな具材を好きなだけ入れていると、意識しないまま高カロリーな1杯になってしまう可能性がある。

からい料理で発汗、でも痩せるわけじゃない

「その麻辣湯は、おそらく800 kcal前後くらいあると思います」

筆者が実際に食べた麻辣湯の写真を見て、そう語るのは管理栄養士の原野志保さんだ。

800 kcalといえば、一般的なカツ丼1皿にも匹敵する。しかも、今回は具材を控えめに選んだつもりだったが、それでも会計は2000円を超えた。

具材の選び方によって、カロリーも値段も大きく変わる。麻辣湯がヘルシーだと思われる理由のひとつが、春雨の存在だろう。ラーメンやうどんよりも軽い印象があり、ダイエット食として販売されている春雨スープも多い。

「確かに春雨は、中華麺と比べればエネルギー量は低めです。ただし、春雨だからといって、たくさん食べてもよいわけではありません」(原野志保さん、以下同)

さらに注意したいのが、カニ団子や魚介団子などの加工食品だ。

「魚介団子などの加工食品には塩分も含まれているため、基本的には1杯につき“楽しみとして”1つ程度に抑えてほしいところです。また、揚げパンは炭水化物なだけでなく脂質も多く含みますし、スープの種類によっては油も多く使われています。管理栄養士の視点からいえば、できれば避けたい具材です」

麻辣湯に健康的なイメージが広がった背景には、日本でブームの火付け役となった七宝麻辣湯が、創業当初から「薬膳スープ」を特徴として打ち出し、女性客を中心に支持を広げてきたこともあるだろう。

その後、コロナ禍以降に中国系チェーンや個人店が増え、ブンモジャや揚げパンなど多彩な具材を楽しむ食べ方も広がった。

とはいえ、麻辣湯はからい。食べ進めるうちに額から汗が流れ、食後には身体が熱くなる。“これだけ汗をかけば、脂肪も燃えているのではないか”と期待したくなるが、原野さんによると、発汗と体脂肪の減少は別の話だという。

「からいものを食べて汗をかいたからといって、その汗の量に比例して体脂肪が燃焼しているわけではありません。汗は主に、体内の熱を外へ逃がすための反応です。一時的に体重が減ったとしても、その多くは水分が失われたことによる変化です」

唐辛子に含まれるカプサイシンには、食後の熱産生を促し、一時的にエネルギー消費を高める可能性があるとされる。ただし、麻辣湯を食べるだけで体重が落ちるほど、大きな効果ではない。

「からい麻辣湯を食べたからといって、痩せるわけではありません。

脂肪燃焼を期待するよりも、具材の組み合わせや1杯全体の量を意識することが大切だと思います」

栄養バランスを考えながら麻辣湯を楽しむには?

それでは、麻辣湯を楽しみながら栄養バランスを整えるには、何を選べばよいのだろうか。

原野さんは、「満足感を保ちながらエネルギー量を抑えるポイントは、まず野菜で一杯の土台をつくることです」と話す。まず選びたいのは、青菜や白菜、もやし、キノコ類だ。

「チンゲンサイなら中くらいのものを1株、白菜ともやしをひとつかみずつ。それから、キノコ類を片手いっぱい程度です。しめじなら半パック、えのきも同じくらいが目安になります。これだけ野菜をたっぷり取っても、エネルギー量は50 kcal程度です」

次に、肉や魚介類などのたんぱく質源を加える。

「豚肉や鶏肉なら4~5枚程度、エビなら2~3尾、ホタテなら1個程度。アサリがあれば5~6個ほどが目安です。肉を選ぶ際は、豚バラ肉よりも豚もも肉や鶏肉など、脂身の少ないものが望ましいですね」

主食となる麺類は、合計量を意識する。複数を食べ比べる場合も少量ずつにし、ブンモジャや揚げパンなどの炭水化物源を重ねすぎない。スープも飲み干さず、味わう程度にとどめる。

そうすれば、麻辣湯ならではの楽しさを残しながら、エネルギー量や塩分、脂質を抑えやすくなるという。

麻辣湯は、それ自体が「ヘルシーな料理」でも「太る料理」でもない。何を、どれだけ選ぶかによって栄養価は大きく変わる。「野菜が選べる」「春雨を使っている」「からくて汗をかく」というイメージだけで安心せず、食材の組み合わせまで意識することで美味しくてかつヘルシーな1杯になるはずだ。

取材・文/千駄木雄大

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