「命の危険を感じるぐらい殺気立っていた」『ガンニバル』龍二役が明かす柳楽優弥の"別格"すぎる素顔
「命の危険を感じるぐらい殺気立っていた」『ガンニバル』龍二役が明かす柳楽優弥の

『ガンニバル』で狂気をまとった後藤家の一員・龍二を演じ、強烈な爪痕を残した俳優・中村祐太郎(36)。主演・柳楽優弥を“キング”と称する理由とは。

殺気漂う撮影現場の裏側、そこで生まれた仲間との絆、そして俳優だけでなく映画や演劇の作り手として歩む未来――。異色の俳優が語る、『ガンニバル』で得たものと、創作への揺るぎない情熱に迫った。〈前後編の後編〉

俳優としての転機は映画『岬の兄妹』

現在は、俳優として数々の話題作で存在感を発揮する中村祐太郎だが、表現者としての原点は、カメラの前ではなく、後ろにあった。

「僕はもともと、作家とか監督とか、作り手志望だったんです。小さいときからブロック遊びが大好きで、物語を考えては空想に浸るのが好きでした。高校時代から仲間と自主制作映像を作り始めて、映像作品を提出する推薦入試で多摩美術大学の映像演劇学科に進学したんです」(中村祐太郎、以下同)

入学後も制作活動に没頭していた中村。俳優業は「出演してほしい」と言われた時だけ参加する程度だった。

その後、東京学生映画祭で2度のグランプリ受賞をきっかけに、映画監督としての活動を本格的にスタート。同時期に園子温監督の『TOKYO TRIBE』にも出演し、俳優としても徐々に声がかかるようになっていった。

そんななか、大きな転機となったのが、映画『岬の兄妹』だった。

「片山監督から『君のセンシティブな部分を踏襲した役だから、ぜひお願いしたい』と言われました。自分自身を見て起用してくれるのであれば、やってみようと思いましたし、そこから『自分が作品に必要とされてるのであれば、どんなオファーでも受けよう』と意識が変わりました」

その後に出演した『ガンニバル』は、中村の俳優人生の中でも特別な作品になった。

「僕の俳優キャリアのなかで、一番長く出演させていただいた作品です」

演じた龍二は、後藤家の一員として物語のさまざまな場面に登場する重要な役どころ。

シーズン2では、ホテルに26日間滞在して撮影に挑んだという。

「結構しんどかったですね。ただ、“キャラ濃い”が集まった現場だったので、個人的にすごい居心地はよかったです(笑)。今でも後藤家のメンバーやスタッフとは飲みに行きますし、刺激的な仲間たちに出会えた作品でした」

柳楽優弥は「命の危険を感じるぐらい殺気立ってた」

そんな“キャラ濃い”が集まる『ガンニバル』の現場の中でも、強烈な存在感を放っていたのが、主演の柳楽優弥だった。

「やっぱり、柳楽さんはすごいですよ。日本の芸能界でも“キング”だと思います。僕と同い年ですけど、あの人は別格です」

『ガンニバル』では、激情がほとばしるようなシーンが多く描かれるが、その役に向き合う柳楽の姿勢は、共演者の中村の目にも圧倒的に映ったという。

「休憩中も、ずっと役のことを考えて沸々としていて、命の危険を感じるぐらい殺気立っていました。柳楽さんが殺気立っていないと成立しない物語ではありますが、だからこそ、彼の演じるシーンは、熱量が高くて引き込まれるんです。彼の信念は、絶対にぬるい選択を嫌うので」

身体づくりも含め、役のために極限まで自分自身を持っていく。その姿を見て、中村は一人の俳優として大きな刺激を受けたという。

「命ある限り、どこまで芝居に人生を燃やせるかっていう挑戦をしているんだと思います。その美しさが、彼の武器なんですよね」

ただ、柳楽の演技は、ときに役柄を越えて共演者の心に“ぶっ刺さる”ほどの強度を持っていたという。

「例えば、柳楽さんに『ふざけんなよ』って言われたとしたら、それが龍二という役を通り越して、中村祐太郎自身の心に刺さるんですよ。みんなその熱量で芝居をしなきゃいけない。でも、普通に『怖いな』と思ってる俳優もいると思います(笑)。特にスタッフは、もっとビビりますよね。『次、柳楽さんが命がけで戦うシーンだな』ってときに、殺気漂う柳楽さんに話しかけなきゃいけないわけですから(笑)」

過酷な撮影秘話「スタッフ同士でも裏で“ガンニバル”始めてて…」

柳楽優弥の圧倒的な熱量に刺激を受ける一方で、中村が現場で自らに課していた役割は少し違うものだった。

「僕はムードメーカーとして、俳優とスタッフをつなぐことを大切にしていました」

その根底にあるのは、「萎縮しない」という姿勢だ。

「どんな現場でも、萎縮することは絶対によくない。それは自分も、共演者も。萎縮すると、本来の実力を発揮できなくなるだけでなく、この人間社会において、何かのはけ口のターゲットにされてしまうかもしれない。雰囲気が良ければミスすらコミュニケーションになりますよね。だから僕は、俳優としても監督としても、現場をよくしたいんです。だからもし、萎縮してそうな人がいたら、ちょっかい出しまくりますよ(笑)」

いい芝居は、カメラが回っていない時間から始まっている。

その考えを強く実感したのが、『ガンニバル』の撮影現場だった。

「基本、殺気立っている現場だったので、表立ってワイワイやると怒られちゃう。だからバレないように、わちゃわちゃしてました。後藤家のインスタのオフショットだって、こっそり撮ってたんですよ(笑)」

過酷な撮影が続けば、スタッフ同士が衝突することも珍しくはない。

「普通に喧嘩もありましたし、疲れてくるとスタッフ同士も裏で“ガンニバル”を始めるんですよ(笑)。でもスタッフの“ガンニバル”に出演者まで引っ張られちゃダメなんで、あえて出演者同士でラフな会話をしたり、怒られて落ち込んでるスタッフを後藤家のみんなでタバコに誘ったり。そういう小さな動きって本当に大事だなって思いました」

中村にとって『ガンニバル』は俳優としてだけでなく、監督として作品づくりに向き合う上でも、「現場の環境づくり」の重要性を改めて実感した作品となった。

そして、そこで出会った仲間とともに、中村は今、次の創作活動に取り組んでいる。

来年2月に、第37回下北沢演劇祭で、身長145センチの中村、身長197センチの澤井一希(『ガンニバル』“あの人”役)、体重160キロの米本学仁(同作で後藤真役)によるユニット「規格外」として舞台に出演予定で、演出も自ら手がけるという。

「ご存じ、後藤家でご一緒したハイ&ロー&ワイドの3人です(笑)」

舞台の戯曲を執筆するのは今回が初挑戦だといい、その先には、俳優だけにとどまらない、彼が思い描く未来がある。

「一番やりたいのは、やっぱり映画づくりなんです。そのために今、原作になる小説を書いています。

10年後には、俳優も続けながら、監督としてもしっかり仕事があって、収入も安定している状態になっていたいですね(笑)」

その穏やかな表情からは想像できないほど、創作への意欲は尽きない。作品の中では何度も壮絶な目に遭ってきた男は、現実では誰も萎縮しない現場づくりを夢見て、今日も新たな物語を紡いでいる。

取材・文/木下未希 撮影/村上庄吾

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