〈羽生結弦「偽祝い花」騒動の裏で〉芸能界で横行する“有名人名義”の無断使用…「常連だと嘘をSNSに」「全国のキャバクラで勝手に名前」
〈羽生結弦「偽祝い花」騒動の裏で〉芸能界で横行する“有名人名義”の無断使用…「常連だと嘘をSNSに」「全国のキャバクラで勝手に名前」

JR仙台駅前にプレオープンした中国発の麻辣湯専門店で、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さんら著名人の名前を無断で使用した開店祝いの花が設置され、グループ本部と店舗が謝罪する事態となった。世界で7000店を展開する巨大チェーンで起きた不適切なプロモーションとFC管理の課題、そして芸能界で横行してきた「有名人名義の無断使用」の実態を追った。

偽祝い花は誰が発注? 運営会社に聞くと「担当者がいない」

8月17日、JR仙台駅前のアーケード街にプレオープンした「楊国福(ヨウゴフク)麻辣湯 仙台駅前店」での出来事だ。店先には開店を祝う色鮮やかな花が並んだが、そこに掲げられていた送り主の名前に、通行人は目を疑った。

地元・仙台市出身のプロフィギュアスケーターである羽生結弦さんや、鳩山由紀夫元首相の名前がデカデカと飾られていたのだ。プレオープン初日ということもあり、店頭には約100人の行列ができ、花を写真に収める客の姿もあったという。

これらの写真は瞬く間にSNSで拡散され、「本当に本人から届いたのか」と疑問の声が上がった。楊国福グループ本部が調査したところ、店舗側が本人の許可も得ず、本部にも無断で独自に手配したものだったことが判明した。

本部は「著名人が贈ったものではない」と無断使用を認め、花と関連SNS投稿の削除を指示。仙台駅前店は業務手順の見直しを理由に臨時休業に入り、22日に予定していた営業再開も「店舗体制の最終確認・調整」として延期されている。

同店を自社サイトに掲載し、「中国マーラータン大手楊国福の代理店」とする東京都渋谷区の企業に記者が取材を試みると、「確かに仙台店舗はうちの店舗ですが、答える人がいないんです。担当者がいないんです」と困惑した様子で答えた。

誰が発注を決め、なぜ羽生さんらの名前を選んだのか。肝心の経緯は、なお明らかになっていない。

世界約7000店、その大半がFC…巨大麻辣湯チェーンで問われる加盟店管理

今回騒動になった「楊国福」はどのようなチェーンなのか。業界紙の記者は、麻辣湯市場における立ち位置を次のように指摘する。

「中国の麻辣湯市場は、2大チェーンが市場をシェアしています。楊国福は2003年にハルビンで1号店を開き、麻辣湯事業をスタートしました。現在は店舗数が非常に多く、中国各地や海外へ店舗網を拡大して約7000店舗を展開しています。

チェーンの店舗数では楊国福と張亮麻辣湯の2ブランドが突出していて、『中国最大手級の麻辣湯チェーン』とも言えます。

そんな店舗網を拡大中の楊国福ですが、『世界7000店』というスケールの裏には独自のビジネスモデルがあります。彼らのビジネスモデルの実態は、加盟店に対する食材や調味料の卸売を収益の柱としたFC(フランチャイズ)主導型のチェーンなんです。直営店はごくわずかで、世界7000店の大部分はFC店とみて間違いないでしょう」(業界紙記者)

業界紙記者は、今回の一件を「FC管理のあり方が問われる事例」とみる。

「無名の個人店が話題作りのためにやった、という次元の話ではないからこそニュース性があります。巨大グローバルブランドの看板を背負いながら、地域の運営元が不適切なプロモーションを引き起こしてしまった。FC管理やガバナンスの観点から見過ごせない事例です」(業界紙記者)

祝い花だけじゃない…芸能関係者が語る名義無断使用の実態

一方、名前を使われる側の芸能界にとって、こうした「名義の無断使用」は古くから存在する悩みの種だ。大手芸能事務所の元広報担当者は、ため息交じりに自身の経験を振り返る。

「花は昔からありましたね。

特に女性ファッション誌に出ているタレントはよく名前を使われました。個人の飲食店やエステ、美容サロンなんかに勝手に使われて、クレームを入れたこともありますよ。一方で、付き合いのある企業から『花代はこちらで払うから名前だけ使わせてください』と頼まれ、無下にはできずOKすることもありました。

これはウチのタレントではありませんが、なかには、お金をもらって花に名前を貸す個人事務所で活動されているタレントもいると聞きます」(大手芸能事務所の元広報担当者)

さらには、花を出すこと自体が「案件」になっているケースもあるという。

「辞めたフリーのタレントさんに多いのが、花も“案件”として10万とか20万もらって名義貸しをするという話です。花だけでなく、『お店に来ている』『常連だ』なんて嘘をSNSに載せられて、クレームを入れたこともあります」(大手芸能事務所の元広報担当者)

ワイルド系タレントを多数擁する、別の音楽事務所関係者も、水商売の店舗などで勝手に名前を使われる被害に遭ってきたと語る。

「10年くらい前は特に多かったです。日本中の飲み屋や水商売の店でやられていて、隣にブラッド・ピットの名前が並んでいて『あるわけねえだろ』と。有名税だと思ってスルーしていましたが、キャバクラのオープンなどで使われることが多かったです」(音楽事務所関係者)

しかし、近年はSNSの普及による「炎上リスク」から、デカデカと偽の祝い花を飾る飲食店は減少しつつあるという。

「今はSNSですぐ炎上しちゃうから、通報されるリスクがあって減っていますね。それでも港区などで、トランプとかゼレンスキーとかギャグでやっている店は結構ありますけどね」(音楽事務所関係者)

目に見える祝い花の偽装が減った一方で、現代ならではのより巧妙で悪質な手口が芸能事務所を悩ませている。国民的歌姫を抱える別の音楽事務所の担当者が憤る。

「今は花が減った代わりに多いのが、SNSでの無断案件です。勝手にタレントの写真を使って『愛用している』と掲載されるんです。

虚偽の花は撤去させれば済みますが、こちらのほうがずっと残るしタチが悪い。個人インフルエンサーがタレントの顔を勝手に使って、根も葉もない来店情報を流す方が迷惑しています」(音楽事務所の担当者)

今回の楊国福の騒動については、

「まして、いま日本市場を開拓している中国発の企業でこうした事案が起きれば、一店舗だけの問題では済まず、ブランド全体の信用にも関わってくる。日本でこれから認知を広げていく段階だからこそ、加盟店を含めた管理はより重要だと思います」(同上)

と指摘した。

世界規模のチェーン店で起きた「自作自演」の祝い花騒動。SNS時代では、こうした行為が短期間で発覚・拡散し、店舗やブランドの信用を大きく損なう可能性があることを、今回の騒動は改めて示したといえるだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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