以前コネタで書いた記事「さあ新学年! 教科書もきっちりリサイクルするドイツ」で、ドイツの公立小学校における教科書貸与制度について述べましたが、さらに学年が上になると、事情が多少異なってくるようです。
例えば、公立のギムナジウム(日本の中高一貫教育機関に相当)では、毎年秋の新学年のスタートとともに、「今年度の授業で使う、全教科の教科書と副教材の一覧表」が一斉に配布され、生徒(とその保護者)たちは、全教科の教科書や教材について、いちいち「借りるか、買うか」の選択をするのが一般的です。
語学のワークブックや世界地図帳など、教科担任の希望によって購入が義務づけられている教材を除けば、借りるも買うも100%個人の自由。一冊たりとも買わない主義の家庭もあれば、生徒自身がお気に入りの教科だけ購入したり、とりあえず片っ端から全教科を購入する家庭もあり、まさに三者三様です。
具体的には、全生徒が、教材一覧表に「買う」「借りる」の別を記入し、保護者の承認サインとともに担任に提出します。すると後日、「借りる」の方に丸印をつけた教材は中古本が、「買う」に印をつけた箇所については、新品の教材が手渡されるという仕組みです。在籍する生徒ひとりひとりについて、この煩雑な仕分けと配本作業を行うわけで、一体どれだけの時間と労力が要ることか......。
さて、教科書を1年間借り受けることにした場合、当然ながら学年末には返却義務が生じるため、教材は丁重に取り扱わねばなりません。その教科がどんなに嫌いでも、借りものの教科書に八つ当たりしてポイ投げするのはおろか、目印をつけるためにページの角を折り曲げたり、テスト勉強目的でアンダーラインを引くことさえ許されないのです。
「借りた教科書を紛失したり、ひどく破損した場合は、個人的に弁償させられるらしい」という噂を聞いてはいたものの、実際は大目に見てもらえるのだろうとタカをくくっていたところ、現実はかなり厳しいものでした。
学年度末が近づいてくると、学校側から、「全ての貸与教科書を返却しなさい」というお触れがでます。その後、終業日までのおよそ2週間ほどで、返却されてきた全教科書の保存状態が入念にチェックされ、未返却の教材があれば、その借り主である生徒あてに、「◯◯の教科書を直ちに返却するように」という督促がきます。
やがて、終業式まであと数日というある日の朝、学校の正面入口に貼り出されたのは、1枚の「リスト」。
7年C組、シュミット、数学、75%、15ユーロ
10年E組、マイヤー、地理、95%、30ユーロ
リストに列挙してあるのは、生徒の所属クラスと氏名、教科、破損の度合い、そして弁償額。
リストをよく見ると、破損度が高い教材が大半であることから、かなり手荒い扱いを受けた教材についてのみ、見返りを要求していることが想像できます。中には、同一人物が何冊もの教科書を大破させた結果、かなりの額の支払い義務を負っているケースもあり、「教科書代弁償なんて、ただの脅し」ではなかったようです。
さて、秋入学のドイツでは、7月はいよいよ学年度末。今年度も、例の「リスト」が貼り出される日が近づいてきています。
(柴山香)
例えば、公立のギムナジウム(日本の中高一貫教育機関に相当)では、毎年秋の新学年のスタートとともに、「今年度の授業で使う、全教科の教科書と副教材の一覧表」が一斉に配布され、生徒(とその保護者)たちは、全教科の教科書や教材について、いちいち「借りるか、買うか」の選択をするのが一般的です。
語学のワークブックや世界地図帳など、教科担任の希望によって購入が義務づけられている教材を除けば、借りるも買うも100%個人の自由。一冊たりとも買わない主義の家庭もあれば、生徒自身がお気に入りの教科だけ購入したり、とりあえず片っ端から全教科を購入する家庭もあり、まさに三者三様です。
具体的には、全生徒が、教材一覧表に「買う」「借りる」の別を記入し、保護者の承認サインとともに担任に提出します。すると後日、「借りる」の方に丸印をつけた教材は中古本が、「買う」に印をつけた箇所については、新品の教材が手渡されるという仕組みです。在籍する生徒ひとりひとりについて、この煩雑な仕分けと配本作業を行うわけで、一体どれだけの時間と労力が要ることか......。
さて、教科書を1年間借り受けることにした場合、当然ながら学年末には返却義務が生じるため、教材は丁重に取り扱わねばなりません。その教科がどんなに嫌いでも、借りものの教科書に八つ当たりしてポイ投げするのはおろか、目印をつけるためにページの角を折り曲げたり、テスト勉強目的でアンダーラインを引くことさえ許されないのです。
「借りた教科書を紛失したり、ひどく破損した場合は、個人的に弁償させられるらしい」という噂を聞いてはいたものの、実際は大目に見てもらえるのだろうとタカをくくっていたところ、現実はかなり厳しいものでした。
学年度末が近づいてくると、学校側から、「全ての貸与教科書を返却しなさい」というお触れがでます。その後、終業日までのおよそ2週間ほどで、返却されてきた全教科書の保存状態が入念にチェックされ、未返却の教材があれば、その借り主である生徒あてに、「◯◯の教科書を直ちに返却するように」という督促がきます。
やがて、終業式まであと数日というある日の朝、学校の正面入口に貼り出されたのは、1枚の「リスト」。
7年C組、シュミット、数学、75%、15ユーロ
10年E組、マイヤー、地理、95%、30ユーロ
リストに列挙してあるのは、生徒の所属クラスと氏名、教科、破損の度合い、そして弁償額。
上記の例で言うと、7年C組のシュミットさんが借用していた数学の本が、破損度75%と判断され、15ユーロの賠償金支払い義務が生じましたよという意味です。そもそも、年度始めに教材を借り受けた時点で、すでに中古本だったことを差し引いても、75%もの破損度は見過すわけにいかないということでしょうか。
リストをよく見ると、破損度が高い教材が大半であることから、かなり手荒い扱いを受けた教材についてのみ、見返りを要求していることが想像できます。中には、同一人物が何冊もの教科書を大破させた結果、かなりの額の支払い義務を負っているケースもあり、「教科書代弁償なんて、ただの脅し」ではなかったようです。
さて、秋入学のドイツでは、7月はいよいよ学年度末。今年度も、例の「リスト」が貼り出される日が近づいてきています。
(柴山香)
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