ゴールデンウィークが明け、スキー用品を手放すことにした。今シーズン初めに買ったのだが、気に入らず、別のモデルに買い換えたのだ。

捨てる場合は粗大ごみ扱いとなって手続きが面倒な上、費用もかかる。インターネットオークションに出品するためには、写真を撮って掲載したり、発送などの手間がかかる。

 そこで、近所にあるリサイクルショップのハードオフに持ち込むと、「シーズン前なら買い取ったのですが……」という返事があった。確かに、秋に来店した時にはスキー用品の売り場があったが、今は見当たらない。その時々の売れ筋となる品物を買い取る、というポリシーがあるようだ。

 その代わりに場所をとっていたのが、オーディオやパソコン関連、ゲーム機器などだった。
多くの商品が通路に置かれ、ビニールかけなどの作業が行われていた。

 整理されずに置かれている状態だけを見ると、言葉は悪いが「ゴミの山」のようだ。しかし、ハードオフから見れば、ゴミの山は「宝の山」になるわけだ。

 面白いのは、店内の一角に「ジャンク・コーナー」があり、棚に作動しない電子機器や部分品が並べられていたことだ。これらは、修理用のパーツとして重宝されるという。ハードオフを運営するハードオフコーポレーションでは、以下の方針を説明している。


「店頭では、完全に動作しなくても安全性に問題がなければ、原則として買い取ります」

 筆者が訪れた店舗は、同じくハードオフコーポレーションが運営するオフハウスが店内でつながっていた。オフハウスでは、ファッションや生活雑貨を扱っているが、コメ兵のような高級ブランド中心ではなく、より生活感が感じられる商品が多い。ハードオフコーポレーションは、ほかにもモードオフ、ガレージオフ、ホビーオフなどを運営しているが、いずれも生活に密着した商品のリユース事業を展開している。

●リユース業界を独走するハードオフ

 リユース業界では、ハードオフ、コメ兵、ブックオフが3大企業だ。この業態は、買い取りと再販売の価格設定さえしっかりしていれば、確実に利益を上げることができる。実際、3社の業績は高く、その中でもハードオフは抜きんでている。


 同社の15年3月期の売り上げ予測は172億円だが、経常利益は20億円で対売上比11.6%という好調ぶりだ。同社の場合、この比率は12年3月期からほぼ変わらず、経営管理的にはうまくコントロールできているといえる。

 ちなみに、経常利益の対売上比はコメ兵が8%弱、ブックオフは3%強(いずれも14年3月期)で、ハードオフは一頭地を抜いている。同社は12年の売り上げが115億円だったので、3年間で50%の成長を遂げたことになる。また、フランチャイズ(FC)も含むチェーン店全体の売上高は、14年3月期で460億円に達している。

 ハードオフが東京証券取引所市場第一部に上場を果たしたのは05年で、まだまだ若い会社だといえる。
新潟県でオーディオ機器の小売業を営んでいた山本義政会長兼社長が、1993年に業態開発したことが創業のきっかけだ。

 山本氏は、意欲的な事業家である。新潟に腰を据えたまま、創業翌年の94年には早くもFC展開を始めた。98年にオフハウス、01年にモードオフ、02年にガレージオフ、04年にホビーオフ、と矢継ぎ早にリユース事業を拡大している。

 近年も、13年にリカーオフを開業しており、各ブランドの直営とFCを合わせた店舗数は700を超えた。

 13年10月には、FCを10店展開している福岡無線を買収し、14年12月にはリサイクル着物の東京山喜に出資するなど、ネットワークの拡大を加速している。
活発な事業展開だ。

 ベンチャー企業というと、ITやデジタル、あるいはeコマースなどの分野が注目されがちだが、ハードオフは業態そのものを開発し、独自のビジネスモデルを磨いてきた。

 ロールモデルがない、つまり先人がいない市場で道を切り拓きながら進んできたという点で、敬服に値する企業といえる。

●20年に全国1000店舗を狙う

 山本氏の視野は、自社グループだけでなく、リユース業界全体にも向けられている。09年には、日本リユース業協会を発足させたが、同協会には競合である上場8社が参画しており、自ら初代会長に就任した。また、山本氏は日本フランチャイズチェーン協会の会長でもある。


 数百社のFC本部運営企業が加盟している中で、会長という職を任されている山本氏は、ただの事業家にとどまらない。

 ロゴが似ているため、ハードオフとブックオフは資本関係にあるのかと思っていたが、実態は違っていた。両社は創業者が互いに信頼しているため、競合にもかかわらず相互にFC契約を結び、互いのショップを経営する関係だったのだ。今年3月に、ブックオフはハードオフとのFCチェーン契約を解除したが、異例ともいえるビジネス関係の構築からも、山本氏の懐の深さがうかがえる。

 山本氏は、今後の目標として「当社は、リユース業界の圧倒的なリーディングカンパニーを目指し、中期目標として20年に全国1000店舗達成(直営とFC合計)」を掲げている。

 今後も、リユース業界には追い風が吹くだろう。ネットオークションの普及で、使用済みの品物を売買することに、消費者が慣れていくからだ。市場が急成長していくフェーズでは、トップ企業が一番の利益を得るというのがマーケティング戦略のセオリーだ。

 20年というと、山本氏はまだ71歳だ。創業経営者として、元気に同社を牽引していることだろう。そして、そうであれば、同社の中期目標が達成される可能性も大きい。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)