11月から始まったトランプ相場で日本の株式市場も大きく株価が上昇した。しかし、その中には急激な円安の影響が株価の上昇に大きく寄与した銘柄も多い。

その一方、構造改革に成功したり、利益率が高い製品の売上が伸びたりするなど、業績を着実に積み上げてきたことが理由で株価が上昇している銘柄もある。

ダイヤモンド・ザイでは「2016年に上昇した株の大研究&今後の対策術」特集を掲載。2016年に株価が上昇した銘柄の個別の理由を探るとともに、それが2017年以降も続くのかどうかを徹底分析している。今回はその特集の中から、業績が堅調に推移したことで株価が上昇した「2017年も強気を維持できる安定感のある銘柄」を大公開する!

円安効果で上昇した株よりも業績堅調の株がおすすめ!
構造改革が進展した「東芝」が上昇率1位に!

 まずは2016年に上がった株を個別にみていこう。年初来安値から12月2日の株価までの上昇率でランキングしたのが右の表だ(※)。

 東証1部の時価総額3000億円以上を対象とした大型株の中で、最も上がったのは東芝(6502)。株価は最安値を記録した2月12日の155円から427.5円まで上昇、2.8倍に。フィスコの田代昌之さんは「構造改革が進展したことが評価された」と分析する。ただ、会計不祥事で大幅下落した後だけに「ちょっと買いづらい銘柄」だとも。

 2位に入ったカルソニックカンセイ(7248)は、11月22日に日産自動車が同社株を米ファンドに売却することで合意したということでの思惑買いで急上昇したという特殊要因。

 一方、SUMCO(3436)IHI(3285)富士通(6702)東ソー(4042)ヤマハ発動機(7272)三菱ガス化学(4182)などはトランプ相場で円安が進んだことで株価が上昇した銘柄だ。ただ、為替が円高に再び振れれば、これらの銘柄は大きく値を下げやすいので、要注意といえる。

◆2016年に上がった大型株(東証1部で時価総額3000万円以上) 株価(12/2)単元上昇率年初来安値
(日付)投資判断最新の株価1位 東芝(東1・6502)427.5円1000株176%155円(2月12日)中立【分析コメント】上期は半導体メモリの価格上昇で営業益が大幅に改善。メモリ価格が横ばいと想定する下期の計画は保守的。2位 カルソニックカンセイ(東1・7248)1758円1000株155%689円(4月8日)―【分析コメント】2017年2月下旬にCKホールディングスによる公開買い付けが開始される予定であり、完全子会社化により上場廃止へ。3位 SUMCO(東1・3436)1287円100株118%590円(7月7日)強気【分析コメント】受給がひっ迫して、主力商品であるウエハの値上げが視界に入る。値上げ確認によるインパクトは大きいとみて判断を引き上げ。4位 ディー・エヌ・エー(東1・2432)3285円100株114%1532円(2月12日)強気【分析コメント】2016年度中に「ファイアーエムブレム」や「どうぶつの森」を配信予定。ゲームの復活で、株価は上値追いへ。5位 IHI(東1・3285)324円1000株110%154円(2月12日)中立【分析コメント】不採算案件発生による下方修正が繰り返されており、業績動向への信頼性が低下した。PBRの割安感も乏しい。6位 任天堂(東1・7974)2万7045円100株102%1万3360円(6月28日)買い【分析コメント】ポケモンGOが市場予想を上回って収益に貢献。3月発売の次世代ゲーム機のソフトが充実している点も評価。7位 野村ホールディングス(東1・8604)682円100株101%338.8円(6月28日)中立【分析コメント】日経平均株価の上昇に伴い、株価は上昇。
ただ、相場環境は変動幅が拡大、米国頼みで持続可能性に疑問。8位 富士通(東1・6702)680.7円1000株98%343.7円(7月8日)強気【分析コメント】アウトソーシング事業が牽引。パソコンや携帯電話も利益改善。円安基調により下期は収益改善へ。9位 ブラザー工業(東1・6448)1976円100株98%1000円(7月8日)強気【分析コメント】今期の利益予想を上方修正。通信・プリンティング機器が、米国や中国を中心にグローバルな規模で堅調に推移。10位 東ソー(東1・4042)788円1000株97%399円(2月12日)強気【分析コメント】ウレタン原料や塩ビ樹脂の市況が堅調。今期最終損益を上方修正しているが、下期1ドル100円想定で上ブレも。11位 ヤマハ発動機(東1・7272)2721円100株93%1409円(7月6日)強気【分析コメント】主力の二輪は北米やブラジルを除いて販売台数が増加。円安推移で業績好転に期待。株価は堅調に推移へ。12位 ライオン(東1・4912)1838円1000株92%956円(2月10日)強気【分析コメント】一般衣料品では高収益品が好調。
通期を上方修正、増配発表も、配当利回り1%未満で、再増配余地あり。13位 ミネベア(東1・6479)1179円100株92%614円(7月8日)強気【分析コメント】2017年1月末にミツミ電機と経営統合。競合分野が少なく、相互の補完関係が成り立つため、期待は大きい。14位 第一生命ホールディングス(東1・8750)1931円100株92%1007円(7月8日)強気【分析コメント】ドル高で運用損益が改善するため、下期に高水準の利益を確保できる公算が大きいが、株価はいまだに割安。15位 日本精工(東1・6471)1313円100株90%691円(7月7日)中立【分析コメント】メキシコへ新工場を建設、投資を拡大しているが、トランプ政権の誕生で、米国への輸出に不透明感が高まりそう。16位 T&Dホールディングス(東1・8795)1491円100株85%805.6円(6月28日)中立【分析コメント】貯蓄性保険の販売抑制や、保険商品の手数料開示の流れが逆風に。2014年高値1500円水準で反発は一服か。17位 ジェイテクト(東1・6473)1884円100株83%1031円(7月7日)中立【分析コメント】下期は1ドル=103円の想定で、円安基調が続けば計画上ブレも。カルテル問題での特損計上は織り込み済み。18位 三菱ガス化学(東1・4182)1796円100株81%992円(7月11日)強気【分析コメント】円高は響いたが、エンジニアリングプラスティックを中心に原燃料安などで採算が改善。円安転換で下期は回復へ。19位 DIC(東1・4631)3510円100株80%1950円(6月28日)強気【分析コメント】第3四半期までは9%減収もコストダウンが奏功、9%営業増益。
円安で、株価は2015年4月高値を上放れも。20位 日立建機(東1・6305)2451円100株78%1377円(7月8日)中立【分析コメント】中国が底入れ。トランプ政権誕生で米インフラ投資は増額へ。株価は高値を更新したが、期待が先行気味。ポケモンGOやVR、越境ECなど
好業績や新製品効果で上昇した銘柄も強い!

 内需系では、ディー・エヌ・エー(4232)ライオン(4912)といった好業績株がランクインしている。ディー・エヌ・エーは上期の営業利益が34%増、ライオンは第3四半期までで72%営業増益を達成したことが評価された。ただし、ディー・エヌ・エーは他サイトからの組織的な無断転用問題が表面化し、12月に入ってから株価は急落、信用失墜で今後の業績動向にも注意が必要になっている。

 任天堂(7974)も6位に入った。ドル建て資産が多いため、昨今の円安で利益が増えるとみての買いもあったが、なんといってもポケモンGO効果が大きいだろう。ポケモン関連の新作ソフトが好調で、国内証券が目標株価を引き上げたことが株価上昇につながった。こうした、好業績や新製品効果で株価上昇になった銘柄は、円安で上がった株に比べて、2017年以降も期待できそうだ。

 新興市場では、秋元康氏が同社のVR子会社に資本参加することが材料視されたことでイグニス(3689)がトップに。

2位のTOKYO BASE(3415)は日本発のファッションブランドを展開する個性的な小売りで、店舗拡大で上期は95%営業増益に。同社は越境ECも本格化させていく方針。VRや越境ECといったテーマは、2017年も引き続き狙い目になるだろう。

◆2016年に上がった新興市場株(ジャスダック、マザーズ) 株価(12/2)単元上昇率年初来安値
(日付)投資判断最新の株価1位 イグニス(東M・3689)1万40円100株658%1325円(2月12日)中立【分析コメント】上期は半導体メモリの価格上昇で影響益が大幅に改善。メモリ価格が横ばいと想定する下記の計画は保守的。2位 TOKYO BASE(東M・3415)2020円100株528%321.7円(2月15日)強気【分析コメント】立ち上げ2年目の「UNITED TOKYO」は、知名度の向上も手伝って高成長が続く。EC売上も順調。3位 モブキャスト(東M・3464)1266円100株483%217円(2月12日)中立【分析コメント】第3四半期までは21%減収で、営業段階から赤字に転落。2017年夏予定の新作ゲーム6タイトルに期待。4位 アライドアーキテクツ(東M・6081)2129円100株446%390円(2月12日)強気【分析コメント】第3四半期は国内事業が引き続き堅調。海外子会社はSNS広告の売上が増加、2四半期連続で営業黒字を達成。5位 Nuts(東J・7612)156円1000株438%29円(1月20日)弱気【分析コメント】遊技関連のコンテンツ仲介。
継続疑義の早期打開に向け、財務体質の改善や新規事業の早期実現が目先の課題となる。6位 平田機工(東J・6258)6910円100株438%1285円(1月12日)強気【分析コメント】北米向けのパワートレイン関連設備、有機EL関連の蒸着装置が業績を牽引。受注残高が積みあがっている。7位 トリケミカル研究所(東J・4369)1988円100株422%381円(2月12日)強気【分析コメント】新規半導体向け材料を中心とした生産設備を導入。世界有数の生産拠点である台湾に海外子会社を設立と、攻めの展開。8位 ウェッジホールディングス(東J・2388)1100円100株409%216円(6月24日)強気【分析コメント】ローン会社。タイ、カンボジア、ラオスなど、ASEAN諸国など中長期的視点で経済成長する地域に重点的に投資中。9位 アスコット(東J・3264)622円100株398%125円(2月12日)中立【分析コメント】分譲マンションや戸建ての開発等を手掛ける。前期は期初計画を下回っての着地が嫌気されたが、株価調整は一巡に。10位 ロゼッタ(東M・6182)1940円100株320%461.5円(2月12日)強気【分析コメント】AIを用いた自動翻訳ソフトの契約数が増加中。第2四半期は増収増益を確保。政策の後押しも期待できる。

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