安藤裕子×大塚 愛 不思議なタイミングは必然のご縁――『頂き物』楽曲提供秘話を明かす/インタビュー1

■安藤裕子×大塚 愛/New Album『頂き物』インタビュー全文(1/2)

「今まで自分の歌声をちゃんと愛でてやったことがなかった」

安藤裕子のニュー・アルバム『頂き物』は、その名の通り、交流のあるアーティストから楽曲を書き下ろしてもらい、彼女が“歌い手”に徹する試みに挑戦した作品だ。敬愛する先輩のCharaをはじめ、濃密な歌の世界観がどこか共通している小谷美紗子、ラジオから流れてきた音楽に一聴き惚れしたというDJみそしるとMCごはん、一定の距離を保ちながらも互いに長年のファンであった峯田和伸など、幅広くジャンルレスな豪華な面子が顔を揃えている。そんな中、公私ともに仲が良く、本作で名曲「Touch me when the world ends」を提供した大塚 愛との対談が実現。“不思議なタイミングは必然のご縁”であったことを、ぞれぞれの言葉で語ってくれた。
(取材・文/神崎圭)

安藤裕子×大塚 愛 不思議なタイミングは必然のご縁――『頂き物』楽曲提供秘話を明かす/インタビュー1

いよいよ自分のために何を書いていいのかわからなくなってしまった

――いろんな方から楽曲を頂いて歌う今回のアルバムを作ろうと思ったのはどうしてですか?

安藤裕子(以下、安藤):完結に言うと、“自分のために曲を書けなくなった”から。はたと気が付けば、私は私小説的な曲を書くシンガーソングライターになってきていて。でも二十歳ぐらいで歌い始めた時は純粋に歌うことや形になっていくこと、自分の想いが曲になっていくことがとても楽しかったし、それを認めてもらえることがうれしかった。そして、それがお仕事になりました。そんな中で歌うことで想いを浄化させることも体現できるようになってきて、歌うことが自分にとって大切なものになっていく一方、聴いてくださる方の想いにも応えたいと思う気持ちにも挟まれ、だんだん自分の中で音楽が真面目になり過ぎてきてしまった。24時間、「自分とはなんぞ?」と内省する時間にドップリになってきたんです。

――なるほど。

安藤:そうなると歌のテーマも死生観にとらわれていくようなところがって、「プライベートな私はどこにいったのかな?」って。だんだんその重苦しさに体調も崩してしまった。丁度その頃に子供ができて、「自分の中に隙間が作れるな」って思った矢先3.11の地震が起きて、しばらくして大好きなおばちゃんが亡くなりました。……そうなると余計に生まれる命と去っていく命ということに向き合わざるを得なくなったんです。子供を産んだ後に出したアルバムは『勘違い』『グッド・バイ』『あなたが寝てる間に』の3枚ですが、私の中でなんとなく『グッド・バイ』あたりで終焉を求めていた気がします。その一方で、ここで終わってしまうのも嫌だなっていう思いもあって。その『グッド・バイ』を作ってる時、完全に死がモチーフの「都会の空に烏が舞う」という曲ができたんですけど、これをアルバムの最後に入れたら本当にシンガーソングライター・安藤裕子が終わってしまうと思ったので入れるのを止めたんです。それで次作、「もっと初期の頃のように楽しく曲を作ろうよ」とスタッフが提案してくれて『あなたが寝てる間に』の制作に入ったんですけど、このアルバムのラストに「都会の空に烏が舞う」を入れました。ツアーでもこの曲をラストに演奏したんですけど、きれいに幕が閉じるんですよね。それがあまりにもスッキリし過ぎて(笑)。観てる人もそうだったろうし、自分自身もそうだった。そうなってくるともういよいよ自分のために何を書いていいのかわからなくなってしまったんです。

安藤裕子×大塚 愛 不思議なタイミングは必然のご縁――『頂き物』楽曲提供秘話を明かす/インタビュー1

――濃密な3枚からの今作の流れだったんですね。今作は自由に弾けてます(笑)。

安藤:そう(笑)。私の様子を見てくれていたディレクターが、「自分で書けないんだったら、他の人に曲をもらって歌えば?」って言ってくれ、その答えにハッとしたんです。私、自分の声がすごく嫌いなんですよ。シンガーとして“自分の求める歌声を持たない”というのがずっとネックで、これまで曲を作っても作っても「別の人が歌えばいいのに!」「自分の持ってる楽器(歌声)じゃ足りない!」っていう感覚がずっとあったので、自分の歌声を愛でてやったことがなかったんです。でも歌を始めたきっかけは、オーディションで歌声を褒められたから。じゃあもう一度“歌うこと”を自分で見つめてあげたいなっていう想いがきっけです。

――そこからスタートだったですね。

安藤:直感でそうしようとは思ったんだけど、デビューして10年以上経つのにミュージシャンの知り合いが全然いなくって(笑)。でもその頃急に音楽関係の方と知り合う機会が増えたんですよ。例えば大塚(愛)さんは急にライブに遊びにきてくださって、その後「お茶しましょう」って誘われました(笑)。

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「絶対に私のこと嫌いだろうな」って思ってた

――それはナンパですか(笑)?

大塚 愛(以下、大塚):はい、ナンパしました(笑)。もちろん以前から安藤さんのことは知ってましたが、なんとなく「絶対に私のこと嫌いだろうな」って思ってたので近づかなかったんです(笑)。

安藤:なにそれー! なんでそんなネガティブ(笑)。

大塚:(笑)。基本、私も自分からいくタイプじゃないのでなかなか他の人と繋がりが持てなかったんですが、ちょうど私もここ数年、他の方のライブを観に行こうというモードだったんです。だから以前から美人だな、いい歌を歌う人だなって思ってた彼女のライブにお邪魔しました。この心境の変化は子供を産んだからだと思います。

安藤:それはあるよね。お互いすぐに打ち解けて喋れるタイプじゃないけど、そのお茶の席ですぐに子供たちが遊び始めたんです。

大塚:そうそう。たまたま同じ年に生まれた女の子同士で。

安藤:半年しか違わないので個体が一緒(笑)。先に子供が仲良くなってくれたので、大塚さんともスムーズに距離が縮まりました。私はよく自分のことをネガティブなお調子者だと言うけど、彼女はものすごく明るい根暗(笑)。似て非なるものですね。

安藤裕子×大塚 愛 不思議なタイミングは必然のご縁――『頂き物』楽曲提供秘話を明かす/インタビュー1
Touch me when the world ends


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≪リリース情報≫
New Album
『頂き物』
2016.03.02リリース
安藤裕子×大塚 愛 不思議なタイミングは必然のご縁――『頂き物』楽曲提供秘話を明かす/インタビュー1
頂き物

【CD+DVD盤】
CTCR-14894/B / ¥4,500(税抜)

【CD盤】
CTCR-14895 / ¥3,000(税抜)

[収録曲]
1. Silk Road
(小谷美紗子 楽曲提供)
2. 骨
(峯田和伸 楽曲提供)
3. 霜降り紅白歌合戦
(DJみそしるとMCごはん 楽曲提供)
4. 360°(ルビ:ぜんほうい)サラウンド
(スキマスイッチ 楽曲提供)
5. 夢告げで人
(堀込泰行 楽曲提供)
6. やさしいだけじゃ聴こえない
(Chara 楽曲提供)
7. 溢れているよ
(sebuhiroko 楽曲提供)
8. Touch me when the world ends
(大塚 愛 楽曲提供)
9. Last Eye
(TK from 凛として時雨 楽曲提供)
10. アメリカンリバー
(安藤裕子 新曲)
<DVD> ※CD+DVD盤のみ収録
●LIVE
・安藤裕子 LIVE 2015「あなたが寝てる間に」追加公演 6.16(火) 東京・LIQUIDROOM
1. 森のくまさん
2. 大人計画
3. RARA-RO
4. Live And Let Die
5. うしろゆびさされ組 (うしろゆびさされ組 カバー)
6. ロマンチック
7. 360°(ぜんほうい)サラウンド
8. 飛翔
9. レガート
10. 73%の恋人
11. 海原の月
12. 世界をかえるつもりはない
13. 聖者の行進
14. 鬼
15. 都会の空を烏が舞う
●Music Video
1. 360°(ぜんほうい)サラウンド
2. 骨

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