昔は、NHK教育の10代向け番組というと、「学校や親が勧める、道徳っぽいもの」という印象を持っていた人も少なくないだろう。

 だが、いまやどの局のどの番組よりも10代の生の声を率直に取り上げている番組がEテレにある。

10代の気になる話題をピックアップし、高校生の視点でリサーチ&ランキングする情報番組『Rの法則』だ。

 「ムダ毛」「下着」といった赤裸々なテーマがあったり、「イヤな先輩」「悪口対策」といった10代の人間関係の微妙なツボを突いてきたりする。出演者のコメントも、街頭インタビューやアンケートの声も、ことごとく生々しい。

 いったいなぜ、こうもリアルなのか? 『Rの法則』に取材をお願いしたところ、対応してくれたのは、ディレクターの姫野徳子さん。

「『Rの法則』ではプロデューサーが視聴者の反応を重視していて、『自分の勝ちパターンを信じるな』『困ったときは女子高生に聞け』と常に言っています。そのため、番組サイトのアンケートだけでも毎回300通ぐらいの回答すべてに目を通しているほか、街頭インタビューで50~100人程度の生の声を聞き、出演者や、ディレクターが個々に持っている人脈で女子高生に取材し、多面的な情報収集方法を取っています」

 数段階にわたる方法で、毎回500~1,000人もの声を拾っているそう。

 最近取り入れたのは、NHKが独自に女子高生の生の声を拾う「モニター」のシステムで、このプロジェクトを手掛けているのが姫野さん。

「女子高生のことをもっと知りたい。そのために、じっくり話を聞く場を作りたいと思ったんです」

 ちなみに、姫野さんは大手化粧品会社に出向し、商品開発を通じて若い女性のマーケティングを学んだ、NHKでも異色の経歴の持ち主。

 そうしたノウハウを生かし、『Rの法則』の女子高生モニターは、「テレビ好き」「情報に敏感」などの条件で女子高生に応募してもらい、オーディションで決めたそう。

「オーディションであることは親御さんにしか知らせず、放送局も番組名も出さずに『Rの法則』を見てもらい、グループインタビュー形式で意見を話してもらって、それをマジックミラー越しに見る方法を取りました」

 採用人数などはあらかじめ決めておらず、「番組が狙っている層と響き方が近く、ちゃんと自分の意見を話せる子、感度のいい子、“目利き”の子を選んだ」結果、女子高生モニターとなったのは12名。

 モニターには、編集段階で番組を見てもらい、「面白い」と思ったところ、「つまらない」と思ったところでボタンを押してもらう。

その後、インタビューも行い、生の声をダイレクトに番組に反映させているそうだ。

「モニターに『つまらない』と言われたところは、ギリギリまで編集で直します。ホメられることはあまりなく、どこがつまらないという意見、ダメ出しが多いですね(苦笑)」

 たとえば「内輪ウケが面白くない」「コイツ(出演者)の意見なんて別に聞きたくない」「発言前の『あおり』がうっとうしい」など、耳の痛い指摘も少なくないそうだが、女子高生の意見をダイレクトに反映するようになってから、視聴率がよくなった回もあれば、良くない回もあり、手探りだが、番組改善に取り組んでいるという。

「マーケティングで女子高生の生の声を拾うようになってわかったのは、女子高生は大人が思っているよりずっと、ちゃんとテレビを見ているということ。あらためて、丁寧に番組を作らなければいけないと感じました」

 ちなみに、今年3月からは女子高生モニターとディレクターでチームを組み、「ネタ出し会」も行っているそう。

 アンケートの問いの言葉選びひとつとっても、女子高生の「ダメ出し」があればその都度変え、放送直前まで直せるだけ直すという手間のかけ方・愛情の注ぎ方を考えると、『Rの法則』の「10代の声」がいちいちリアルなのも、むしろ当然なのかも。