偏差値78の超進学校を卒業しながら、なぜかAVの道へと進み、今までに8,000人以上の女性とセックスをしてきた、売れっ子AV男・森林原人(もりばやし・げんじん)。

 仕事でそれだけセックスをしていれば、さすがにプライベートでセックスする気なんてなくなるだろう……と思いきや、彼女やセフレともガンガンヤリまくっているという。

彼女はともかく、セフレまで作るなんて、なんという性獣っぷり!
 
 そんな森林原人が、初の書き下ろしエッセイ『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』(講談社)を上梓した。

 心からセックスを愛し、セックスをしまくってもいる男の考える「セックス幸福論」とは、どんなものなのか!?

■社交ダンスサークルに絶望してAV男優に

――今回の本、要は「いろいろあるけど、セックス最高!」という内容だと思いますけど、あまり原人さんのプライベートなセックスについては書かれていなかったので、まず童貞喪失について教えてください。

森林原人(以下、原人) 童貞喪失は高1です。中学から筑駒(中学受験の最難関校)という男子校に入ったせいで、女の人との接点がなくなっちゃって、唯一のチャンスが文化祭に来た女子だったんです。それで、文化祭に来た桜蔭学園(超難関女子校)の中3の子と仲良くなって、なんとかペッティングまではできたんですけど、門限にうるさい家で、ダメになっちゃって……。しばらくして、その子の友達から連絡が来たんですよ。
「○○から聞いたんだけど、キミってエロいんだって?」って。会ったこともないのに!

――女子校の情報網って、スゴイですね。

原人 怪しいなとは思ったのですが、「私、Fカップなんだ」って言うんですよ。おまけに「早稲田の大学生と半同棲している」とも。これはめちゃくちゃエロい女だぞと。もう童貞喪失のチャンスだと思って、高1と中3で渋谷・道玄坂のバーに行きましたね。
でも、酒飲んだら一杯で真っ赤になっちゃうし、話も進展しないしヤバイなーって……。それから宮益坂のカラオケボックスに行って「ここしかない!」と、ガッと抱きついてFカップを激モミしました!

――展開が急!

原人 さらに股間を触ったんですけど、AVじゃモザイクがかかっていたから、クリトリスと穴を探しても全然わからないんですよ。でも、わからないなりに必死でまさぐっていたら「じらさないで」って(笑)。

――すごい高等テクニックだと勘違いされたんですね。

原人 それで、あっちから「もう我慢できない、ホテル行こ」と言われ、円山町のホテルに行ったんですけど、童貞だからコンドームの着け方もわからないんですよ。焦れば焦れるほど、チンポはしぼんできちゃうし……。

 
 結局、女の子から「表裏逆なんじゃない?」と指摘されて、フニャフニャになってるチンコの上にゴムを着けて。もちろんスカスカですよ。そんな状態なのになんとかねじ込み、先っちょだけが辛うじて引っかかってるだけなんですけど、AVの見よう見まねで腰を振りました。そしたら全然気持ちよくないんですよね……。当然っちゃ、当然なんですが、童貞だったからよくわからなくて、仕方ないからイッたフリをして「今までで最高のセックスだったよ」と腕枕しながら言ってみました。その後、連絡が取れなくなっちゃったんで、童貞だってバレてたんでしょうね。
まあ、それでボクの中では童貞を捨てたってことになりました。

――え、それで童貞喪失オッケーなんですか?

原人 いま思うと童貞喪失できてないですけどね、射精してないんだから。それからお年玉を持って、横浜・黄金町のちょんの間に行きました。さすがに最初から風俗っていうのはイヤだったけど、もう素人の子で童貞喪失したんだから、ということで。黄金町ではキレイなお姉さんは1万円、おばちゃんは8,000円、さらに奥に6,000円でいいよというデブのババアがいて……6,000円でいこうと! そこで本当の意味での童貞を捨てましたね。それからはもう、黄金町に通いまくり! 家庭教師のバイトした金でちょんの間に行って、お気に入りのタイ人に「いつか結婚しよう」みたいな話までしていましたから。


――高校生の時ですよね!? 相手は何歳だったんですか?

原人 33歳くらいですかね。いま思えば故郷に旦那や子どもがいたんでしょうけど、当時のボクは、それが愛なんだって思ってたんですよ。そんなことやってるから当然、大学受験にも失敗して、一浪して専修大学文学部心理学科に入りました。

 大学では社交ダンスサークルに入ったんですけど、なぜかボクだけパートナーを組んでもらえず、ひとりで鏡に向かって練習していて……。みんながキャッキャしている中、先輩から「ほら~、彼も仲間に入れてあげなよ、かわいそうじゃん」みたいなことを言われて、いたたまれなくなっちゃったんですね。「もう、こんなところにはいられない!」と。
そんな時、エロ本に男優募集が載ってたんで、ヤケクソで応募したんです。そこからずっとAV男優一本ですね。

――社交ダンスサークルがきっかけで、AV男優に!

■不倫のほうが真実の愛!

――セックスをヤリたくて仕方がなかった人生から、ヤリまくりのAV男優になれて大満足という感じですか?

原人 うーん……確かに性欲が満たされるのはうれしかったんですけど、だんだんとそこに心のスキマができて、彼女が欲しくなってくるんですよ。

――AVの現場でセックスするだけじゃなくて、愛情が欲しくなっちゃう?

原人 なっちゃう、なっちゃう!

――女優さんも、現場でセックスしたからって、本気になられても困るでしょう。

原人 はい。ハメ撮りの時、女優さんの耳元で「本気で好きになっちゃいそうだよ」ってささやいたら、「あの男優、なんだか勘違いしていて気持ち悪いです」ってNG食らったりしました。そういう失敗もありつつ、セックスしたからって通じ合えたわけじゃないとか、いい意味でセックスに失望できた。それと、AV現場でのセックスだけじゃなく、プライベートのセックスもそれなりにあったからこそ、幅広くセックスを知れたのかなと思いますね。

 AVでのセックスって、見せるための「プレイ」ですから。プライベートな、密室での1対1のセックス、同棲して「子どもができてもいいね」みたいな話をしながらの中出しセックス、ケンカをした後の仲直りセックス……そういったものとは全然違いますね。

――本の中では、愛情と性欲を分けて考えたほうがいいと書かれていましたけど、やっぱり愛情があるセックスのほうがいい?

原人 まあ、愛情と性欲が合致しているセックスが理想だとは思います。でも、それがセックスの唯一のあり方だとは考えないほうがいいということですね。愛情と性欲が切り離されたセックスも、それはそれでアリと考えれば楽になれるし、結婚とセックスも切り離して考えられるようになる。そっちのほうが自然じゃないですか。

――セックスする相手は、恋人や結婚相手に限定しなくてもいいんじゃないかと。

原人 そうそう! AV女優さんって、彼氏とか旦那さんに内緒で来てる人がすごく多いんですよ。……たまに旦那さん公認、彼氏がスカウトマンっていうような人もいますけど。基本的には、本命の彼氏なり、旦那さんなりがいるのに、内緒で来ている。そういう人たちがなんでAVに出るのかというと、お金もありますけど、最近の人はほとんど性欲からなんですよね。

――そうなんですか!? 確かに、今はAVに出たところで、そんなに儲かるイメージもないですが。

原人 儲かる人は儲かりますけど、パンツを脱げば誰でも仕事があるっていう時代じゃないですからね。「ヤリたい」っていうモチベーションがないと、続けられない仕事だと思います。そういう女性たちが、ボクたち男優と絡んで「今までで一番気持ちよかった!」とか言ってくれるんですよ。本命の彼氏が別にいるのに! だから、愛がなくても気持ちよくはなれるんですよね。それに、外でセックスしてくることで、愛する相手に全部を求めなくて済むようになり、優しくできるみたいなこともあるし。1対1の関係で性欲を満たし続けるのは、至難の業ですよ。

「愛がなくちゃダメ」とか「好みのタイプじゃないと感じない」みたいな要素を引っぺがしていくと、セックスの核が見えてくるんです。その結果、ボクがたどり着いたセックスの本質とは「孤独の克服」ですね。

――それは、承認欲求みたいなものですか?

原人 うーん……ちょっと違いますね。承認欲求っていうのは、どちらかというと思考とか理性の動きなんですよ。孤独の克服は、もっと本能的なところです。よく「生まれてくるのもひとり、死んでいくのもひとり」って言いますけど、赤ちゃんは、お母さんから生まれた時点で孤独になるんです。その孤独を、親に抱きしめられることによって克服する。もうちょっと大きくなったら、家族に囲まれたり、友達を作って克服する。セックスってそれと同じことで、孤独の克服をするために、肉体を通して2人が深くつながる行為なんだと思うんですよね。

――愛情とか結婚とか関係なく、もっと本能的にセックスを考えたほうがいいと。

原人 本能的に興奮して、そこに感情からくる欲情が混ざるのが理想ですね。いま言われているような、セックスは愛の行為だとか、証しだとか、そういった常識を一回取っ払ったほうが、セックスをもっと楽しめると思います! 愛がなくても気持ちよくなれるし、愛があっても気持ちよくなれないこともある。

――じゃあ、ベッキーやファンキー加藤も、オッケーということになりますよね?

原人 ボクから言わせたら、不倫のほうがよっぽど真実の愛の可能性が高いですよ! 結婚っていうのは、社会的制度に縛られているだけですからね。不倫は、そういう制度を飛び越えてでもくっつきたいという純粋な愛の場合もありますし、デキ婚のほうが純粋な愛の順序として正しいんですよ。不倫は、ロミオとジュリエットの愛に近いですよ。家柄に縛られて、結ばれてはいけない禁断の関係。今の人たちだって、自由に恋愛しているようで、社会が決めたなんらかのルールや価値観に縛られてる。

――計画的に避妊したり、結婚したから子ども作ろうというのは不純だと。

原人 不純とまでは言いませんし、もちろん、子どもを作る気もないのに避妊しないのは無責任だと思いますけどね。後悔したり、どちらか一方でも傷ついたりするセックスはよくないので、99%欲望に突き動かされたとしても、1%の理性でコンドームはしたほうがいいとは思います。

■最近のヤリマンは、ポジティブにセックスを楽しんでいる

原人 人間の三大欲求って食欲、睡眠欲、性欲なんですよ。趣味・特技で「食べ歩き(=食欲)」「どこでも寝れる(=睡眠欲)」とか書いている人がいますけど、これって「セックス好き(=性欲)」って言ってるようなもんじゃないですか。「大食い選手権」なんて、「ヤリマン選手権」ですよ! それなのに、どうして性欲だけが後ろめたいことになっちゃっているのか!?

 性欲だけが唯一自分ひとりで完結できない欲求だから、というのはあります。相手の自由を奪う可能性もあるし、暴力性も含んでくるから、社会的に性欲は制限しなくちゃいけないと考えられてしまう。でも、もっとシンプルに、性欲を本能的な欲求として考えたほうがいいと思うんですよね。もっと性についてオープンに話せる場があったほうがいいし、もっと女性の性欲もオープンになってほしい。……まあ、そうなると、男の肩身は狭くなりますけどね。今までは、一方的に男の性欲を押しつけていればよかったんだから。

――男のセックスやチンコを評論する女性が出てきていますからね。

原人 性にオープンな女性が出てきたことで「ヤレる女が増えた!」と思いきや、男が評論される側になってしまったんです。でも、それも含めて楽しまないと。男にも女にも拒否権があるし、積極的になってもいい。そういうセックスがいいですよね。「あの男イカせてくれないんだよね」なんて女性がいますけど、実はそれって男の理屈にハマッてるだけなんですよね。イケるように、自分からどんどん働きかければいいんです。

――そういう、性に積極的な女性が増えている実感はありますか?

原人 ありますね。ヤリマンの歴史をたどるとわかるんですけど、20世紀のヤリマンは、男に利用されるヤリマンだったんです。「アイツ、いつでもヤレるから」みたいな利用のされ方をしていた。それが21世紀に入って、承認欲求のためのヤリマンになってくる。「私はヤリマン」みたいな雰囲気を出すと、男からはチヤホヤしてもらえるから。
 
 そして最近のヤリマンは、ホントにポジティブにセックスを楽しんでいるんですよ。「セックスって楽しいじゃん!」「誰とでもヤレばいいじゃん!」って。その代わり「アイツはヘタだから、もうやらない」みたいなことも言われてしまうんです。

――草食系男子と呼ばれている、あまりセックスをしない若者って、その変化についていけていないのかもしれませんね。

原人 セックスをすることによって傷ついたり、リスクを負うことを、極端に怖がっている人はいますよね。確かに病気や妊娠のリスク、自分が傷ついてしまうこともあるかもしれない。でもそれ以上に、セックスをすることによって、いいことも多いんですよ。

 ボクなんか、人生の挫折をたくさん味わってきて、それこそネットとかでしょっちゅう「アイツ死ね」とか「クソ原人め」とか書かれて落ち込んだりもするんですけど、あらゆる世の中のイヤなこと全部が、セックス一発で克服できたりするんです! それがセックスの持つパワーですね。特に、幸せなセックスで得られる「全肯定感」で、落ち込んでても、将来への不安でいっぱいになっていても、いいセックス一発することによって、全部受け入れてもらえたと思え、吹っ切れるんです。もちろん一時のことですが、その感覚って、ほかではなかなか味わえないですよ。

 極端な話、戦争している国のトップがセックスすれば、すぐに仲良くなれますよ! ベネトンが、そんな意図があるんじゃないかって広告出していたけど、それくらいの全肯定感があるし、理屈じゃない部分で納得できるんです。仲直りセックスって、そういうことですよね。

――問題がまったく解決してなくても、セックスしたらごまかされちゃいますもんね。

原人 今の子たちって情報が多すぎて、セックスをしてなくてもわかったような気になっていると思うんですよね。こんなもんだろ、とか、こんな面倒くさいことがあるらしいぜって。でも、知ってるのと経験しているのは、全然違いますから。「食べログ」をどんなに見ても、実際に食べてみなければ、どれほどおいしい料理なのか、もしかしたらマズいけど自分は好きな味なのか、わからないですもん。だから、風俗でも彼女でもいいので、どんどんセックスしてみてほしいです!

■愛している人がほかの男とセックスしたら……燃えちゃう!

――原人さんは、セックス経験は豊富ですけど、結婚はまだですよね。もし結婚することになったら、どんな結婚生活を送ると思いますか?

原人 もしボクが結婚するなら、男優を続けていようがいまいが関係なく、ボクもほかの人とセックスするし、奥さんにも「してきていいよ」って言いますね。

――それが自然な結婚の形だと?

原人 結婚自体が社会制度だから、“自然な結婚”って言葉自体が意味をなしていないんですが。ボクは現行の結婚なんて、制度自体無理があると思っています。理想は不動産の賃貸みたいに2年更新制。けど、現実問題として今の日本で子どもを育てていくには、制度に乗っかっていたほうがいい。だから結婚した上で、お互い自由にセックスを楽しむという関係性がいいんじゃないですかね。ほかの人とセックスしてもいいけど、子どもは作ってこないでね、病気は持ってこないでね、って。そして、ほかの家庭には迷惑かけないから、うちはうちで、好きなスタイルでやらしてほしいと。

――自分の愛する人がほかの男とセックスすることに関して、嫉妬とかは感じない?

原人 ……燃えちゃう!

――ああー(笑)。

原人 セックスしたからって、心まで持っていかれるわけじゃないですからね、男も女も。セックスは、たかがセックス。ただの行為ですよ。その上で、されどセックスだとも知っています。それに、いい女っていうのは、誰とセックスしても気持ちよくなれる女なんですよ。相手を選んで気持ちよくなる女なんて、ただのワガママ! それなら、誰とやってもマグロな女のほうがいいです。これ、モテないブ男の恨みつらみもこもってますが。

 一徹というイケメンAV男優がいたんですけど、一徹と3Pするといつも女の子が一徹ばっかり見てるんですね。キスも必ず一徹と先にやる。「ボクともして~」って迫っても、すぐに一徹に戻っちゃう。最初はそういうのがイヤだったんですけど、今は「寝取り」みたいな楽しみ方ができるようになりましたね。「本当は一徹がいいんでしょ? でも、いま入っているチンポはボクので、それでキミは声を出している……。それを一徹に見られているよ~」って。

――その境地にまで達するのは、なかなか難しそうです!
(取材・文=北村ヂン)