制作陣による“キムタク推し”が全面に押し出されたドラマ『BG』(テレビ朝日系)も第4話。視聴率は13.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、前回とほぼ横ばい。
(前回までのレビューはこちらから)
■石田ゆり子(48)とキムタク(45)のロマンスが始まるの?
このドラマの特徴は、1話にひとつ、ビシッ! とキムタクの見せ場を決めて、そこにたどり着くことだけを目標にお話が組み上げられていることです。第1話は流し目で「丸腰だから人を守れることもあるんじゃないですか?」と見得を切る場面。
今回、第4話のキメタクは、石田ゆり子との恋の始まりを予感させるシーンでした。なんやかんやでトンネルの非常通路を歩く2人。地上に出る階段を上ろうとすると、天井から水滴が垂れています。
キムタクのスーツを頭からかぶって階段を上る石田、何もないところで、よろけてしまいます(年齢による足腰の衰えかな)。するとキムタクが、ガシッ! と石田の腕をつかんで支えるのでした。はい、2キメタク。
こうしたキメタクにより、石田のおめめはトロ~ンとなってしまい、ロマンチックなBGMが2人を盛り上げます。
■無能なのに有能ぶるSPたちが超ダサい
『BG』では、キムタクたちが所属する民間警備会社と警視庁SPとの対立が軸として設計されています。SP側は盛んに「民間は役立たずだ」と言い続けるわけですが、ここまでSPの有能さが示されたエピソードはひとつもありません。護衛対象をすぐ取り逃がすし、見失うし、無能の極みです。
そのくせ、自分たちはいかにも有能だという態度で「警護は民間じゃできない」「警察じゃなきゃできない」みたいなことを言い続けるし、キムタクの会社の人も「SPは有能だ」とセリフで言うだけ言うので、どうにも鼻白んでしまう。
今回、象徴的なシーンがありました。
石田ゆり子演じる立原愛子大臣が「SPに内緒で外出したいので、キムタクに護衛を頼みたい」と依頼する場面で、キムタクの上司である上川隆也が「SPは人員を増やして24時間警護に付いているので、SPの目をかいくぐる隙間はありません」と言います。
いやいやいや。いやいや。今、かいくぐってるじゃないの。SPの目を盗んで、今、会ってるじゃないの。
その後、SPさんが持ち場を離れて牛乳を飲んでいる間に、大臣に逃げられるシーンもありました。キムタクを有能なボディガードに見せるために、SPを必要以上に無能にするしかないという、この手詰まり感。
むかし、アントニオ猪木が言いました。風車の理論です。相手を輝かせ、その上をいくことで自分がさらに輝くのです。
■ウソを重ねる脚本の意味
このドラマの脚本の特色として、もうひとつ。クライアントがウソを重ねているというパターンがあります。このウソも、いちいち強引だし必然性がないので、ドラマの間延び感を際だたせています。
なぜそういう必然性のないウソを重ねる必要があるのかというと、そのウソにキムタクだけが気付いている、キムタクだけが真実を見抜ける、なぜなら彼こそが頭が切れまくる異能者だから、というアピールのためです。
ここでも、キムタク推しを最優先する弊害が出ています。見ている側がクライアントを信用できないし、愛せないんです。ボディガードを扱う物語の場合、その対象に「主人公が命を張って守るだけの価値があるか」というのが、非常に重要な問題になります。ないんだな、これが。「ない」と感じてしまっているから、キムタクの行動に共感も感動もできない。「クライアントだから守る」なんてセリフが上滑りしていく。
キムタクをよく見せたかったら周囲も魅力的に描いた方が絶対いいのに、逆に周囲を下げることでしかキムタクを浮き立たせることができてない。かなり厄介な部類の悪循環に陥っていると感じます。
『BG』は豪華脇役陣もウリのひとつなわけですが、江口洋介と石田ゆり子をレギュラーで出さなきゃいけないという縛りも、かなり厄介に感じます。
SPと大臣と民間警備会社を毎回絡ませなきゃいけないので、事件のバリエーションに広がりを持たせることができない。結果、作品世界がすごく狭いものに感じられる。ドラマそのものにスケール感がないのです。
なんだか非常にもったいない要素が多くて、結果悪口を書き連ねたような感じになってしまいましたが、すみません次回もよろしくお願いいたします。
(文=どらまっ子AKIちゃん)