これは、ボーカルとギターをそれぞれ務める真心のYO-KINGと桜井秀俊に、ベース、ドラム、キーボード、コーラス、ホーンセクションを加えた10人編成バンド、MB'sによるパフォーマンスが繰り広げられる、毎年恒例のライブ。
では、肝心の内容はというと、序盤のMCコーナーでYO-KINGは「普段やらないような曲をたくさんやるライブです」といい、この言葉を受けて桜井は「初めて(真心のライブへ)来た人はつらいかも」と、笑みを浮かべながら観客を気遣った。たしかに、どのアルバムにも収録されていない1991年のシングル「同級生」や、永瀬正敏がすべてのアートワークに起用された2001年のシングル「流れ星」と「橋の上で」と「この愛は始まってもいない」、すなわち「別れの歌三部作」が披露されるなど、レアな選曲と構成は「東西たっぷり真心届けます!2017」の特徴のひとつではあった。
ただ、それ以上に、そして純粋に、パフォーマンスそのものに驚かされた。とにかくボーカルは感情豊かでアンサンブルは抜群で演奏はタイトで、圧巻だった。
そしてアンコール。当初の予定になかったザ・スパイダース「バン・バン・バン」が最初に披露された。このライブの3日前となる3月1日に亡くなったムッシュかまやつを追悼するパフォーマンスだった。真心は大学時代、テレビ番組『パラダイスGo!Go!』の企画コーナー「勝抜きフォーク合戦」に出演したことでデビューのきっかけを掴んだわけだが、その審査員だったムッシュは熱心に真心をプッシュしていた。だからYO-KINGはムッシュを「大恩人」といい、桜井は大声で「ありがとう、ムッシュ!」と叫んだわけだけれども、その言葉と「バン・バン・バン」の歌と演奏はじつに明るく、彼ららしい追悼であった。
これは、真心の音楽に悲しみや苦しみをふっ飛ばしてしまう不思議な力があるということである。そう、それこそが真心ブラザーズというアーティストの本質で、だから、真心のライブはいつも明るくて、楽しい。しかも、さらなる表現力がパフォーマンスとしてしっかりアウトプットされているのだから「真心、ただいま絶好調」と言っていいのではないか。ならばどうしたって新曲に期待してしまうわけだけれども、はたして、制作は行われているのだろうか。
なお、真心は5月6日(日)に東京・EX THEATER ROPPONGI、5月20日(土)に大阪・なんばHatchでイベント『マゴーソニック2017』を開催。今年はOKAMOTO'S、NONAREEVESの小松シゲル、MB'sのMOUNTAIN HORNS、Low Down Roulettesの岡部晴彦が登場。
(取材・文/島田 諭)
≪セットリスト≫
1. Soul Intro~The Chicken
2. BABY BABY BABY
3. ループスライダー
4. きみとぼく
5. メトロノーム
6. アーカイビズム
7. 同級生
8. ふわふわ人
9. 流れ星
10. 橋の上で
11. この愛は始まってもいない
12. 流星
13. あれあれ、あの、あれ
14. I'm in Love
15. STONE
16. Dear, Summer Friend
17. ENDLESS SUMMER NUDE
18. EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG
1. バン・バン・バン
2. I'M SO GREAT!
3. 新しい夜明け
4. RELAX~OPEN~ENJOY
≪ライブ情報≫
【マゴーソニック2017】
2017年5月6日(土)東京・EX THEATER ROPPONGI
w / OKAMOTO'S、MOUNTAIN HORNS、小松シゲル(NONA REEVES)、岡部晴彦
2017年5月20日(土)大阪・なんばHatch
w / OKAMOTO'S、MOUNTAIN HORNS、小松シゲル(NONA REEVES)、岡部晴彦
【真心ブラザーズ ジャズ・クラブ・ツアー『cozy moment』】
2017年6月3日(土)ビルボードライブ大阪
2017年6月4日(日)名古屋ブルーノート
2017年6月10日(土)ビルボード東京
2017年6月18日(日)福岡Gate’s7
■真心ブラザーズ オフィシャルサイト