「コンピューテーショナルオリガミ」。もうその言葉自体が、既にかなり、やばそう。
得体の知れない雰囲気。素粒子実験装置「スーパーカミオカンデ」みたいな語感が漂っている。

東大駒場博物館の特別展「計算折紙のかたち展」を見に行った。コンピューテーショナルオリガミは、この「計算折紙」のことらしい。計算折紙って日本語で言われても、まだ意味が分からない

折り紙というと、ツルや紙飛行機だ。
それの何が計算なのか。

結論から言うと、「諸理論を駆使して超折ったりすると、すごいことになり、折りを極めていけばいくほど、建築や医療や宇宙工学など、さまざまなことに応用可能であり、オリガミは学問として非常にクール」という感じだった。

「超折る」というのは僕の勝手な解釈だが、要するに、金属をレーザーで何百ヶ所も山折り谷折りしたり、形状記憶合金を使ったり、非常に強度のある折りたたみ式ドームを作ったり、みたいな感じだ。いくつか説明してみよう。

使ったことがある人も多いと思うけど、「ミウラ折り」という有名な折りパターンがある。机いっぱいに広がる地図なんかをポケットサイズに折りたたむ際、このミウラ折りで折っておくと、一方向に引っ張るだけで広げたりたためるという便利な折り方。
人工衛星が打ち上がって目的地で展開するときなどにも応用されている。

飲み物のペットボトルやカン表面に、ダイヤモンドパターンみたいな折り方がされてるのをたまに見る。あれもオリガミ系の学問から生まれた、「吉村パターン」という強度向上技術だ。筒が上から押しつぶされた時の「グシャり感」から発見されたらしく、それゆえに上下からの力に弱く、そのぶん側面からの力に強くなるのだ。

こういった折り方は、色々応用されていて、「複雑に折りたたまれた編み物のような金属が血管の中を運ばれて、目的地に達したら形状記憶合金の性質によって展開して血管を広げる」みたいな用途も。ウルトラマンとかポケモンで、小さなカプセルからモンスターが出てくるのがあるけど、ああいう感じのこともできるんじゃないかってぐらいグワワワーンと圧縮・展開。
様々な折り方で折られたり拡がったりする映像が実物とともに展示されている。

さらに複雑な設計のために、「オリガマイザー」など、3Dモデルを元に、それが1枚の紙から折り紙可能かどうか計算するようなシステムが色々開発されている。立体モデルを画面でいじりながらリアルタイム計算・オリガマイズ(折り紙化)させるソフトを使ってみる体験コーナーもある。

こういうシステムが90年代から実用可能になり、まさに「計算して折る」という世界が到来した。世界中でオリガミ研究がおこなわれ、折り紙の限界が一気に無限大と言っていいほど飛躍し、その勢いはまだまだすごいという感じだった。

容器や建築物以外にも、ロボットでも何でも、軽くて丈夫だったり瞬時に折りたためれば最高だ。
何にでも応用できるような気がして、この学問のすごさがビシビシ伝わってきた。

パンフレットにあるような謎のゴツゴツ甲羅みたいな物体が、本当に1枚の四角いシートから折ることが可能なのか。これを折る「早送り映像」が展示入口で流れているんだけど、見てもなかなか信じられない。

だけど展示を見終わって、改めてこれを必死に折る様子が映像を見たら、完全に納得できた。ボリュームのある丁寧な説明と、見てて飽きない展示物の豊富さがある。コンピューター無しでも頑張れそうなものも展示されているので、夏休みの自由研究にもいいかも。
2013年9月23日まで見ることができます。詳しくは東大駒場博物館ホームページへ。(香山哲)