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『かぐや姫の物語』考察。「姫の犯した罪と罰」とは何か

2013年11月26日 11時00分 ライター情報:久保内信行

『かぐや姫の物語 ビジュアルガイド』スタジオジブリ監修/角川書店

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アニメーションの常識を覆す、超絶な映像体験!

スタジオジブリが2013年11月23日に公開した高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』。日本最古の物語といわれる『竹取物語』を原作に、かぐや姫の心情や、その暮らしぶりを想像して補完した作品です。
上映前に公開された、予告編でのかぐや姫の全力疾走シーンでは「お姫様の代名詞でもあるかぐや姫が疾走って!?」と、大きな話題を振りまきました。『ホーホケキョ となりの山田くん』で見せた筆で書いたような描線や淡い色調、背景と渾然一体になった映像は、誰も真似できない凄まじいほどの完成度を誇っており、クリエイターからは圧倒的な支持を集めています。

その一方、あらすじとしては、皆の知る『竹取物語』にかなり忠実。『アルプスの少女 ハイジ』や『火垂るの墓』などでみせた高畑流のストーリーテリングを期待した人はその忠実にみえるお話に肩すかしを食ったという意見もあるようです。

しかし、この『かぐや姫の物語』は、映像だけが素晴らしい作品ではありません。むしろ、まったく新しい『竹取物語』を語るために、あのような超絶に手間暇をかけた映像が必要だったというふうにも思えるのです。

この作品では、空や道などは空白のまま残され、絵画のように余白の多い画面作りが行なわれています。そこに、毛筆のような筆致で描かれたキャラクターが動くことで、独特の画面が繰り広げられます。通常、背景を描き込んでから途切れのない線を引き線で囲まれた部分に色をつけていくという手法をとるアニメーションの常識からはかけ離れたこの方法は、描き込みが凄い! とかアクションが凄い! のようなぱっと見で分かりやすいお得感を超えた感慨を観る人に与えるだけでなく、「空白」を使った大きな試みもなされています。
それは、日本画的な遠近法のない画面と、きっちりパースがとられ立体的な構成をとる西洋的・実写映画的な画面が混在していることです。画面に空白をもうけることで、伝統的な画面構成の手法と現代的な手法が同居することが可能になり、場面によっては日本画としても鑑賞できるが西洋的にも破綻がないという“だまし絵”のような状態になっています。あの絵巻物が実際に動いているかのような画面は、単純に手間暇かけて先祖帰りしたという以上の、新しい表現の可能性を開いた日本アニメの金字塔といっていい達成があります。

伝統と現代のどちらかを選ぶのではなく、両方を一気にすくいとってしまうのは映像美だけではありません。

ライター情報

久保内信行

文筆業

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