「KNOCK OUT」を陣頭指揮する花澤勇佑さんのインタビュー、今回は後編です。(前編はこちら)
はじめから那須川天心にゾッコンだった「KNOCK OUT」のトップが天心のMMA挑戦を後押し

ブレイク前の那須川天心がプッシュされるに至った理由、はたまたブシロード・木谷高明氏のカッコよすぎる素顔がこのテキストでは明らかにされています。

そして、天心選手のMMA挑戦に対する思いも、無事に引き出すことができました。

ブシロード・木谷氏のカリスマっぷり


──花澤さんと木谷さんの出会いを伺いたいんですが、元々はどういう経緯だったんですか?
花澤 元々、僕が千葉県の四街道というところでウェブの制作会社をやってたんです。要するに、地方のホームページ屋さんですね。ごはん食べるくらいは不自由しなかったんですけど、受託制作だったので面白くなかったんです。そんな時、Twitterを見ていたらTAKAみちのく選手が「千葉の各市町村で興行をやりたい。やってくれる人を募集しているので、興味ある人はリプライもしくはDMをください」とつぶやいてたので、リプライを送ったんです。そしたら「~日に事務所に来てください」と、すぐに本人からの反応がありました。で、KAIENTAI DOJOの事務所に行ったわけです。「はじめまして」って言いながら、内心では「目の前にTAKAみちのくがいる!」と思ってて(笑)。で、「何からやればいいんですか?」」と聞いたら「まず、会場を探してください」と。ウチの実家の近くに潰れたアウトレットモールがあったので、オーナーさんに聞いたら「いいよ、使ってよ!」って言われて。それからはもう、ウェブの仕事そっちのけでプロレスばっかりやってましたね。
──それって、プロモーターのような仕事ですね。

花澤 今考えると、そうなんですよね。やってましたね、若いレスラー連れて地元の施設にポスター渡しに行ったり、「チケット買ってくれないか?」って営業に回ったり(笑)。で、結果的に120~130人くらい集まって、ちゃんと試合もできて「あっ、できるんだ!」って気付きました。で、それから「プロレスで何かしたい」と思っちゃったんですよね。でも、小さい団体が儲からないのもよくわかったので「プロレスって今、新日本だよな」って思っているところ、2013年1月にプロレスファン仲間の友人から電話が入って「秋葉原に来れない?」と。実は、彼は木谷さんと知人で、そこに行ったら木谷がいたんです。その時は、木谷さんに「何の仕事してるの?」って他愛もないことを聞かれて、僕は僕で「なんで新日本プロレスを買ったんですか?」ってファン丸出しの質問をして(笑)。そしたら、いきなり名刺を渡されて「ブシロードにおいでよ!」って言われたんです。
──えっ、いきなり!? 
花澤 「プロレス買収したんだけど、ウチはオタクの会社だからプロレスに詳しい奴が誰もいないんだよねぇ」って。それをTAKAさんに話したら「プロレスの仕事やるんだったら新日本しかないよ。君が行く気あるんならそれは行ったほうがいいよ」って。で、2013年3月に入社しました。
業務としては「プロレスのカードゲーム『キング オブ プロレスリング』を立ち上げたんだけど、当時の担当者を別の部署へ行かせたい。そこのポジションが空くから、来てくれ」という話でした。「僕、カードゲームはわからないです」と言っても「どうにかなるだろう」って言われて(笑)。
──マンガみたいな話ですね! 実際に木谷さんと会って、どういう印象でしたか?
花澤 やっぱり僕、あの人は凄いなと思いますね。ブシロードの社員は、全員がそう思ってると思います。行くときの勢いが尋常じゃないです。張るときの度胸というか。もちろん勝算もあるんでしょうけど。
──それって、カリスマということですよね。たぶん今回の記事、かなり木谷さんはカッコいい感じになります(笑)。
花澤 ハッハッハ、本当ですか(笑)。木谷から怒られたこともあまりないですし。
もちろん、締めるときは締めますけど。
──へぇーっ!

なぜ、“肘あり”のルールにしたのか?


──実は、初めてKNOCK OUTの試合映像を見た時、そこまでルールをちゃんと把握していなかったので驚いたんです。
花澤 (自分の肘を抑えて)これですか?
──そうなんですよ! いきなり肘をバンバン当てにいくので。特に日本のファンは肘ありに免疫ができていないので。なぜ、肘ありのルールにしたんですか?
花澤 ここは、小野寺力プロデューサーの譲れない部分です。自分がやってたっていうこともあるし、「キックボクシングで最強を決めるのは、このルールだろう」ということだと思います。
──いやぁ、でも初めてKNOCK OUTを見た時はビックリしました。
花澤 僕も木谷さんもK-1ルールしか知らなかったんで「どうかな……」と思ってたんですけど、そこは彼の理念と、あと僕は一興行に複数のルールがあるのが嫌だったんです。いろんなルールがあるのって、お客さんが混乱するだけなので。
──それが許されるのは、往年のリングスくらいですよね(笑)。じゃあ、KNOCK OUTのリングで初めて肘ありを経験する選手もいるわけですか?
花澤 肘ありのルールをやったことのなかった選手はいると思います。逆に「肘ありのルールはできません」ということでKNOCK OUTに出ない選手もいます。
──なるほど。
あと、キック界って選手がチケットを手売りすることが多いじゃないですか。KNOCK OUTはその辺はどうなんですか?
花澤 手売りは全く無いですね。試合に出てもらったら、ギャランティーはちゃんとお支払いします。
――そういう部分も含め、収益が成り立つか? という不安があったわけですよね。
花澤 あと、興行だけでペイできるのか? 所属選手がいないということもあります。
──KNOCK OUTはイベントで、わかりやすく言うと旧PRIDEのような形式ですもんね。
花澤 そうです、ウチはプロモーションなので。その都度、色んな団体さんから選手をお借りして、舞台を作ります。
──今、KNOCK OUTには天心選手らがいますが、皆、所属選手ではないということですよね。
花澤 はい。例えば、天心選手はRISEでTARGET所属なので。
はじめから那須川天心にゾッコンだった「KNOCK OUT」のトップが天心のMMA挑戦を後押し

「ジャンルはマニアが潰す」(木谷氏)


──新日本プロレスは芸能事務所・アミューズと提携していますよね。要するに、選手がタレントとしてアミューズに所属しているという形です。
で、過去のゴン格でのインタビューで小野寺さんが「業界内だけに留まってちゃいけない」と発言されていましたが、KNOCK OUTも選手をメディアに出していこうという考えはございますか?
花澤 もちろんありますけど、今はオファーが来る状態ではないので、現状ではグループ内で使える媒体に出していくのが先決です。MX(TOKYO MXで毎週金曜に放送されている『キックボクシングKNOCK OUT!』)もそうですし、「月刊ブシロード」という雑誌があるので、まずはそういうところに出していく。あとは、地方のテレビ、ラジオ局に出向いて顔を売りに行ったり。
──新日本プロレス低迷期に棚橋さんがやっていたようなことですよね。
花澤 そうですね。まずはあれをやっていかないと、オファーなんか来ないので。
──それは、新日本プロレスが辿ってきた道と被りますね。
花澤 もう、この時代はよっぽどのことがないと“バーン!”とは行かないので、草の根活動が大事になってきます。細かいところ、小さなイベントから色んなところに出していって。
──どうしてそこが気になったかというと、木谷さんの「ジャンルはマニアが潰す」という言葉が印象的だったので。
花澤 あぁ~、その言葉は木谷は今でも言いますね。批判もあるとは思いますが、僕は納得している言葉です。
その通りだと思います。
──僕もプロレスファンとして、まさに同感の言葉です。あの、木谷さんはKNOCK OUTを見てどういう感想をお持ちなんでしょうか?
花澤 旗揚げ戦の直後は「花澤、こんな日ないよ。こんな興行ないよ! よくやったな」って。
──僕もあれは2016年のベスト興行でしたもん。木谷さんも、新日とは違うスイッチが入ってるかもしれないですね。
花澤 そうですね。
──ちなみに、KNOCK OUTは「立ち技のUFC的な存在を目指している」という認識でよろしいでしょうか?
花澤 まだまだ全然ではありますが、目指すのはそこです!

那須川天心は始めからモノが違った


──今、世間的に那須川天心は別格の存在ですが、彼がスターになる一発目はKNOCK OUTの旗揚げ戦でした。花澤さんが彼を推していこうと思ったきっかけは何ですか?
花澤 さっきも言いましたけど、やっぱり入場ですね。ちょっと、彼は違いました。
──永ちゃんのあの曲(止まらないHA~HA)で。
花澤 はい。あと、那須川天心っていう名前。こんなキャッチーな名前、他にないじゃないですか! で、キャッチコピーが「神童」。そもそも、キックボクシングってキャッチコピーが付いてる選手がいないんですよ。
はじめから那須川天心にゾッコンだった「KNOCK OUT」のトップが天心のMMA挑戦を後押し
スターのオーラが凄い

──ああ、そういえば。
花澤 キャッチコピーがあるということは、元々キャラクターがあるということですし。技術に関しては僕はよくわからないので、面白いか面白くないかでしか判断できません。その視点で見ても「これは売れるよ、絶対!」と思って。
──元々、花澤さんがキックファンではなかったというところが大事だと思うんです。花澤さんに響くかどうかが、一つのラインになる気がします。
花澤 KNOCK OUT旗揚げ前に小野寺さんが僕を色んな団体に連れて行ってくれたんです。新日本キックさんにもNJKFさんにもREBELSさんにも行きましたし。その中でも、やっぱり那須川天心は光ってた。彼が出てくると、会場中の雰囲気が変わるんです。試合も凄い。それが推そうと思ったきっかけです。
──花澤さんが過去に好きだった立ち技の選手はいますか?
花澤 レイ・セフォーは好きでしたねぇ。
──おお、K-1で運動神経が一番いいと言われていたセフォーですか!
花澤 日本人だと、MAXが始まってからなのかなぁ。一番好きだったのは、安廣一哉選手でした。金髪にしてカッコよかったですね。
──ああ、正道会館の! 安廣選手みたいなちょっとアクロバチックな選手がKNOCK OUTにいたら面白いですかね?
花澤 ああ、面白いと思います。今、選手のキャラクターを掘り起こすことを重視しているので。
──木谷さんは好きな立ち技の選手はいたんでしょうか?
花澤 K-1がゴールデンタイムで放送していた時は見ていて、会話で名前が出てくるのはピーター・アーツとかアンディ・フグとかアーネスト・ホーストとか、ヘビー級戦線が充実していたあの時代の選手ですね。

那須川天心のMMA挑戦は反対ではないのか?


──元々はKNOCK OUTが目をつけていた那須川天心が、今ではRIZINの中心選手になっています。これについては、どうお考えですか?
花澤 以前から、彼は「格闘技と言えば那須川天心と言われるようになるのが目標」「格闘技界を背負っていく」と言っていて。各団体を見渡し、どこに出たら最も露出があるかと言えば言うまでもなくRIZINです。フジテレビのゴールデンに出て、しかもあれだけキャッチーなバックボーンがある。そこで取り上げられるのなら、MMAを続けていくのはアリだと思います。
──「キックの顔となるべき天心が他のジャンルに出るのはどうか?」という不安が、我々にはありました。
花澤 全く別物の競技ですし、キック界の中で賛否両論あったとは思いますけど、「天心ならいいじゃないか!」と思いますよ(笑)。格闘技界を絶対に背負ってほしいですし。
──二刀流の大谷翔平みたいですよね。
花澤 そうですね(笑)。僕は天心君、大好きなんで。人間的にもあんなにまっすぐな子はいないですし、あんなに自信満々な子もいないですし。僕は「本当にがんばってほしい」という気持ちしかないです。もちろん「KNOCK OUTを一緒に盛り上げよう!」っていう気持ちもありますけど。だって、僕が天心選手の立場だったらRIZINに出たいですもん。
はじめから那須川天心にゾッコンだった「KNOCK OUT」のトップが天心のMMA挑戦を後押し
いつも思うのだが、KNOCK OUTはラウンドガールの人選がいつも最高だ

──逸材が出たいとウズウズしているなら、出たほうがいいですよね。高田延彦さんも、天心を激推ししています。
花澤 激推ししてますね。KNOCK OUTのことを考えれば厳しい部分はありますが、彼のことを思えば出たほうがいいと思います。それでもし何かあったならば、それはそのときに考えればいいじゃないですか!
(寺西ジャジューカ)


那須川天心参戦! 東京・大田区総合体育館「KNOCK OUT FIRST IMPACT」
■日時
2018年2月12日(月)
開場16:00 開始17:00
■チケット販売場所
チケットぴあ

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