「クルクルバビンチョパペッピポ ヒヤヒヤドキッチョのモーグタン!」

ピンクで可愛い不思議なキャラクターのモグタンと、好奇心旺盛なお姉さんが謎の呪文でタイムスリップ。いろいろな「モノ」のはじめてを紹介していく『まんがはじめて物語』

1978年5月から1984年3月までに全305回が放送された教養番組で、当時の子供たちに大人気。おそらく、現在40歳前後の人の多くが冒頭の呪文を一度は唱えたことがあるはず。
そんな伝説の番組が放送40周年を記念して初のDVD化。
3枚のDVDに厳選した15話26エピソードを収録した『まんがはじめて物語 DVD-BOX』がセブンネット限定で9月28日から発売されている。
「まんがはじめて物語」DVD-BOX発売。声優・津賀有子は「今でも自然にモグタンになれる」
セブンネット限定で先行販売されている『まんがはじめて物語 DVD-BOX』。全305回の中から26エピソードを収録。第53話Aパートから、第304回Bパートまで、幅広い時期のものがセレクトされている

エキレビ!では、モグタンを演じた声優の津賀有子にインタビュー。声優経験も無かった劇団の研究生が、なぜ全国放送のテレビ番組で主役を演じることになったのか。
そして、実写パートとアニメパートで構成された番組は、どのように作られていたのか。当時の思い出とともに語ってもらった。
「まんがはじめて物語」DVD-BOX発売。声優・津賀有子は「今でも自然にモグタンになれる」
津賀有子(つがゆうこ)プロフィール/東京都出身。青二プロダクション所属。『まんがはじめて物語』のモグタン(写真右)で声優デビュー。1986年から放送の後継作品『まんがなるほど物語』ではナルタンを演じた

オーディションでは私が一番下手だったらしいです


──放送40周年を記念して「『まんがはじめて物語』DVD-BOX」が発売されると知った時の感想を教えてください。

津賀 お話を聞いたのは今年の春先くらいだったと思うのですが、その時はやっぱり驚きました。でも、番組が終わってから34年の間にも、何度か『まんがはじめて物語』やモグタンが取り上げてもらえる機会はあって。少し調べてきたのですが、2001年にはテレビの特番で『21世紀まんがはじめて物語』(お姉さん役は茂盛あゆみが担当)が放送されて。実寸のモグタンのぬいぐるみが発売されたのは2007年なんです。
その時も、それぞれ「え? 今?」って驚いたんですよね(笑)。その後も、2014年に林修先生の番組(『林先生の痛快!生きざま大辞典』)で『まんがはじめて物語』を検証する特集がありました。そういう形でスパンは長いのですが、何年かおきに私もモグタンになる機会はあったんです。その度にびっくりしますし、すごく光栄でもありますね。あとは、ここ数年で何度かお子さん向けのイベントに呼んでいただいて、一緒にアフレコごっこをしたりもしました。

──それは番組のイベントだったのですか?

スタッフ TBSと共同で『まんがはじめて物語』の制作をしていたダックスインターナショナルの創業者であり、本作のプロデューサーである丹野雄二さんは亡くなられたのですが、その奥様で現社長の稲垣美穂子さんも、『まんがはじめて物語』やモグタンをすごく大切にされていて。
「青少年の心を育てる会」というNPO法人で、イベントもされたりしているんです。そのイベントに、津賀さんもゲストとして出演されたんですよ。

津賀 大きな着ぐるみのモグタンと一緒だったのですが、子供たちにも人気者でした。きっと、お父さんやお母さんが子供の頃に好きで、一緒に参加してくれたのだと思うのですが、子供たちも「クルクルバビンチョ」って呪文を言えたりするんですよ。
「まんがはじめて物語」DVD-BOX発売。声優・津賀有子は「今でも自然にモグタンになれる」
呪文を唱えてタイムスリップした後はアニメパート。モグタンとお姉さんは、歴史上の様々な偉人などに会ったり、歴史的な大事件に遭遇したりしながら、さまざまな「はじめて」を紹介していく

──世代を超えて愛されているのですね。ところで、津賀さんはどのような経緯でモグタンを演じることになったか教えてください。


津賀 最初は何が何だか分からないままやることになっていたというか(笑)。オーディションで決まったのですが、正直、私は「この役をやりたい!」とか「絶対にやるぞ!」みたいな気持ちで受けていたわけではなく。当時、劇団(劇団NLT)の研究生で、その中でも一番下だったのですが、劇団の人に「テレビアニメのオーディションがある」と言われて、先輩たちと一緒に受けることになったんです。私を入れて10人はいないくらいだったかな? 当然、その中でも私が一番下だったから、絶対に受かるわけがないと思っていたんです。それ以前にCMのオーディションは受けたことあったのですが、テレビ番組のオーディション自体が初めてだったと思いますし、アニメの声優の経験もありませんでした。オーディションでは、セリフを書いた紙以外、モグタンに関する資料は何も無かったので、役作りをするという感覚もなくて。
ただ、自分がやりやすい感じでやっただけ。一応、子供っぽい感じの方が良いんだろうなと意識したくらいでした。そうしたら、私が受かってしまったんですよね。そういったはじまり方でしたから、その後もモグタンは、演じるとか、役柄を作るとか、そういった存在では全然ありませんでした。だから、久しぶりにモグタンをやることになっても忘れたりすることは全然なくて、自然にすっとモグタンになれるのでしょうね。

──当時のご自分を思い出せば、自然とモグタンにも重なるような?

津賀 そうですね。
例えば、他のお仕事ではお婆さんやおばさんの役も多いのですが、ゲームなどで、その役を久しぶりに演じる時には、「この役はどういう感じでしたっけ?」と確認することもあるんです。でも、モグタンの場合は全然そんなこと必要ないんですよ。後々、スタッフの方から聞いたのですが、オーディションでは私が一番下手で、その下手さが印象に残ったらしいです(笑)。まあ「下手」というのは、芝居を作ってなかったという意味でもあるのかなと思います。

ロケ中に子供たちが私を見て、「え! この人がモグタン?」


──この作品は毎回、実写パートとアニメパートのある珍しい構成ですが、収録はどのように行われていたのでしょう。

津賀 毎週1回アフレコがあったのですが、私は実写パートの撮影にも同行していたので、だいたい週に2日は『まんがはじめて物語』の現場へ行ってました。

──実写パートの声は、現場で収録していたのですか?

津賀 同録(映像を撮影する際、放送用の音声も同時に収録すること)ではなくて、アニメパートと同じようにアフレコでした。ただ、モグタンのパペットは、原田克彦さんという方が私の声に合わせて動かしていたので、私も常に実写パートの撮影に参加していたんです。ちょっと面白い光景でしたね。お姉さんと原田さんの動かすモグタンを撮影しているカメラの後ろとかで、私がモグタンの台詞を言ってるんですから。お姉さんの部屋のシーンみたいにセットで撮影する時は良いのですが、外ロケの時は子供たちが私を見て、「え! この人がモグタン?」ってびっくりしたり(笑)。もちろん、できるだけ隠れるようにはしていたんですけどね。あと、原田さんは、ずっと私の声に合わせてモグタンを動かしていたから、それがクセになっちゃったみたいで。休憩中、私とお姉さん役の(岡)まゆみちゃんがお喋りしていると、それに合わせて横でモグタンを動かしたりしていました(笑)。「声を聴くと自然に動いちゃうんだよね」って、片時も離さなくて。原田さんは、それをすごく普通のことのようにやってるから、すごく面白かったです。
「まんがはじめて物語」DVD-BOX発売。声優・津賀有子は「今でも自然にモグタンになれる」
第1話〜第18話までのお姉さん役はうつみ宮土理が担当。第19話以降は岡まゆみが担当した。今回のDVD-BOXには岡まゆみが担当したエピソードが収録されている

──劇団の研究生でありながら、いきなりプロの現場に主役の一人として参加することになったわけですが、やはりプレッシャーなどを感じたりすることも多かったのでしょうか?

津賀 それが、当時の私は恐ろしいくらいに何も知らないし、欲も無いから、プレッシャーとかは全然なかったんですよ。いきなり主題歌のレコーディングから始まったのですが、当然そんなことも初めて。その後、すぐに第1話の撮影が始まって、次はアフレコ。緊張する余裕も無い感じでした。それに、監督やスタッフさんたちも皆さん優しくて、怒られたりすることも、あれやれこれやれと細かく指示されることも全然無かったんです。「自由にやって」とか「そのままの声で良いよ」とか言われていました。アフレコの時には、劇団の先輩たちが毎回レギュラーで参加していて、先輩も応援してくれていたので、リラックスしやすい環境だったのかもしれません。元々、緊張しない性格でもあったとは思いますが。

船で撮影した後、船酔いで歩けなくなったことも


──いまだに覚えているくらい印象的な失敗談や、大変だったことなどがあれば教えて下さい。

津賀 失敗って言ったら、ほとんど失敗ばかりしていたような気もしますが(笑)。私は何も知らず気楽にやっていましたから、特別大変だったという記憶はあまりないんです。でも、(パペット操者の)原田さんやスタッフの皆さんは、いつも大変そうでした。モグタンのパペットは、下から両手を入れて動かすので、お姉さんが抱っこしているシーン以外では、基本的に原田さんはモグタンの下にいるんです。部屋の中で話している時は、机の下に隠れたりできるんですけれど、外でのロケでは大変なことも多くて。例えば、砂浜にお姉さんが座っていて、隣にモグタンがいるシーンでは、スタッフさんが地面に大きな穴を掘って。原田さんはその穴に入って、モグタンを動かしてました。私も、原田さんに聴こえる場所でセリフを言わないと駄目なので、お店のレジの下へ一緒に隠れたりもしましたね。あ、大変だったことを思い出しました。船の上で撮影したときは、私も原田さんと一緒に操舵室の中に隠れてセリフを言ったんです。そこが、すごく油臭くて、船酔いしちゃって。船から降りた後、歩けなくなりました。
「まんがはじめて物語」DVD-BOX発売。声優・津賀有子は「今でも自然にモグタンになれる」
DVD-BOXをアピールしながらインタビューに答えるモグタン……ではなく、2007年にメガハウスから発売された「まんがはじめて物語 1/1 モグタン」。500個限定生産されたが大人気で完売

──想像していたのとは、少し違う方向性の苦労で驚きました(笑)。

津賀 後々、声優が実写のロケに参加してセリフを当てるなんて、滅多にないと知ったのですが、当時は何も知らないから、それが当たり前のことだと思っていて。特に苦労だとも思っていませんでした。あと、アフレコは東宝のスタジオでやっていたんですけれど、今みたいにテレビに映像が映るのでは無くて、大きなスクリーンでやっていましたね。実写パートは、お姉さんの声も同録ではなくて、ロケの映像を見ながら一緒にアフレコをしていたのですが、すごく大変そうでした。モグタン(のパペット)は口がそこまで細かくは動かないですけれど、お姉さんは台詞と口の動きがずれると、すぐに分かってしまうので。

──約6年もそういった日々を一緒に過ごしていると、スタッフや共演者との関係性も深まったのでは?

津賀 そうですね。朝7時に集合してから、夜8時ぐらいまでずっと撮影。一緒に3回ご飯を食べるみたいな感じで毎週、撮っていたので、「私の青春を返して!」という感じでしたね。まあ、それは冗談で(笑)。本当に雰囲気の良い現場でした。悩んだり辞めたいと思ったりしたこと事は一度も無かったです。
(丸本大輔)

後編に続く

【商品情報】
『まんがはじめて物語 DVD-BOX』
発売日:2019年09月28日(金)
セブンネット限定で先行販売中


DVD-BOXのみ:10,000円(税別)
セブンネット限定「モグタンストラップ」付きセット:11,500円(税別)

≪DVD仕様≫
3枚組/DISC1:121分 DISC2:122分 DISC3:122分
全15話(26エピソード収録)/
片面2層/映像:MPEG2/
音声:ドルビーデジタル・モノラル/4:3

≪キャスト≫
お姉さん:岡まゆみ
モグタン:津賀有子
ナレーター:ロングおじさん(吉村光夫)

≪スタッフ≫
監督:曽我仁彦、野崎貞夫
プロデューサー:丹野雄二、永井憲二、鈴野尚志、井上博
音楽:伊部晴美
演 奏:猪俣猛とダックスフント
製作:ダックスインターナショナル、TBS