「コロコロ」チンギス・ハン問題、大手書店の販売中止は自主規制を推し進める?
小学館「月刊コロコロコミック」ウェブサイトより

小学館が発刊する漫画雑誌『月刊コロコロコミック』3月号で“チンギス・ハンの顔に落書きをする”シーンが描かれ、外交問題へと発展した。抗議を受けた同社は即座に謝罪したものの、モンゴル人によるデモが起こり、販売を中止する書店が出るなど、騒動は沈静化していない。
ネット上では「今後、自主規制が進むのでは?」と危惧する声があがっている。

朝青龍のツイートをきっかけにモンゴル人たちが大使館に苦情


騒動の発端となったのは、2月15日発売の漫画雑誌『月刊コロコロコミック』3月号で掲載された、『やりすぎ!!!イタズラくん』(作・吉野あすみ)のワンシーン。モンゴルで英雄だとされているチンギス・ハンの肖像に、主人公が男性器を落書きする場面が描かれていた。これを“侮辱的”だと捉えた元横綱・朝青龍がTwitter上で激怒。その後日本に滞在するモンゴル人たちがモンゴル大使館へ苦情を入れ、同大使館が日本の外務省へ抗議する事態と発展した。

小学館は2月23日、公式サイトにて謝罪文を掲載。文中では「不適切な表現があった」と非を認め、モンゴル側へ「ご不快の念を抱かせましたことを、深くお詫び申しあげます」とつづられている。
同時に、モンゴル国のダンバダルジャー・バッチジャルガル駐日臨時代理大使に同趣旨の謝罪文を渡したことも報告している。

モンゴル人のデモ、大手書店の販売中止


しかし、小学館の謝罪で騒動が鎮火するかと思いきや、2月26日には在日モンゴル人を含めた約90名によって、東京千代田区にある小学館前にて抗議デモが行われた。デモの参加者は、問題となった『月刊コロコロコミック』3月号の回収と謝罪を訴え、さらに抗議文を小学館に郵送したという。

また、出版業界専門紙の『新文化』は2月27日、大手書店チェーンである紀伊國屋書店、未来屋書店、くまざわ書店の3店舗が全店で『月刊コロコロコミック』3月号の販売を中止したことを報じた。紀伊國屋書店、未来屋書店は、騒動に対する小学館の謝罪発表を受けたことから、くまざわ書店はモンゴル人の客から「雑誌を販売しないでほしい」と抗議されたことから、販売中止に踏み切った。小学館は同誌の回収を検討中とのことだが、大手書店3社による決定を見ても、今回の騒動による影響の大きさは計り知れない。

「なぜ外務省に?」疑問視する声


騒ぎに対して「自分が大事にしている偉人を笑いものにされたら嫌な感じがする」など、日本側による非礼な行為だと見る声がある一方で、「漫画誌の記述が気に入らないと外務省に抗議するか?」「外交問題にまで発展するのか」と疑問視する声が多数見られる。


また、「出版社が漫画家をかばわず全面的に謝罪してしまったので、今後さらに自主規制が進む」と危惧する人も現れている。マンガに限らず、表現というものは時代とともに自由の範囲は変わるものかもしれないが、「誰かが不快に思ったらアウト」などという線引きはありえないはずだ。

昨今、CMやPR動画などの表現が炎上する騒ぎが増えており、クレームにより即公開中止や削除に至るケースが続出している。今回小学館が即座に謝罪しただけでなく、大手書店が販売中止を決めた。これに対し、「紀伊國屋書店、未来屋書店、くまざわ書店があっさり表現の自由を放棄する書店だってことはわかった」「これが表現の自由の最大の敵『委縮』だ」と嘆く声も多い。

(HEW)