今回の記事でご紹介するのは1936年に発表された堀辰雄の自伝的中編小説、『風立ちぬ』のあらすじです。
本作は「序曲」「春」「風立ちぬ」「冬」「死のかげの谷」の5章から構成された青春小説で、美しい高原を舞台に、難病の許婚と青年のひとときの蜜月を描きました。
2013年にはスタジオジブリ制作のアニメ映画が公開されましたが、大胆な脚色が施され、原作とはほぼ別物となっています。
※本稿は作品のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。
『風立ちぬ』のあらすじ
主人公の「私」は恋人の節子(せつこ)と白樺の木陰で休憩しています。
そばには未完成の絵を掲げた画架が立てかけられています。
涼しげな薫風が吹き抜けた刹那、「私」は「風立ちぬ、いざ生きめやも」と口ずさんで節子を抱き寄せました。
節子は結核を患っており、余命少ない身の上だったのです。
されど「私」の愛情は些かも衰えず、節子と所帯を持ち、最期の瞬間を看取りたいと考えます。
それから二年後の春先、婚約して間もない節子の実家を訪ねた「私」。
節子の病気はますます重くなり、看病に当たる両親は娘の行く末を案じ、暗い顔をしていました。
咳が止まない許婚の姿に「私」の心も塞ぎます。
節子の父に娘を富士見高原のサナトリウムに預けようと思っていると相談された「私」は、面談に立ち会いを希望しました。
四月某日、二人で散歩中の節子は「あなたのおかげで急に生きたくなった」と本音を打ち明けて「私」に寄り添い、ほんのひとときの楽しい時間を過ごします。
上京したサナトリウム院長は節子を診断し、「もって1、2年」と宣告します。
四月下旬、「私」は節子と共に汽車に乗り、大自然に囲まれた富士見高原へと向かいました。
節子はサナトリウム二階の病室に入院。
「私」は付添人用の側室で寝起きすることにします。
後日の夕暮れ、二人は窓から見える美しい風景に言葉を失いました。
それはきっと死にゆく節子の目を通して世界を見ているからだと、「私」は感傷に浸ります。
九月、サナトリウムで症状が重篤だった17号室の患者が死亡し、その一週間後に神経衰弱に陥った患者が首を吊りました。
「私」は17号室の患者の次が節子じゃなかったことに安堵し、順番は誰にもわからないと自分を慰めます。
2、3日滞在していた父親が帰ったのち、身内を心配させまいと気丈に振る舞っていた節子は疲労から体調を崩し、「私」は気を揉みました。
どうにか持ち直した節子の枕元にて、「私」は自分たちをモデルにした小説を書こうと思っていると打ち明け…。