米林宏昌監督とに西村義明プロデューサーが15日、東宝本社にて行われたスタジオジブリ退社後、初監督作品となるアニメ映画『メアリと魔女の花』の製作発表記者会見に出席。新スタジオとなる「スタジオポノック」設立経緯や、本作の企画意図など熱い思いを語った。


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 本作は、イギリスの女流作家メアリー・スチュアートによる児童文学「The Little Bloomstick」を原作に、一人の少女がひょんなことから大冒険に巻き込まれ、初めての世界でさまざまな経験をしながら成長していく姿を描くエンターテインメント作品。

 新会社「スタジオポノック」製作による作品となった経緯について、西村プロデューサーは「2013年9月に宮崎駿監督の引退会見がありましたが、その1~2ヵ月前に鈴木敏夫プロデューサーから『今後、今までのように映画を作るのは難しい。ジブリの製作部門は解散する』という話を聞きました。当時は『かぐや姫の物語』や『思い出のマーニー』の製作に追われていたため、実感は沸かなかったのですが、『思い出のマーニー』が完成したあと、米林監督に『マロさん、もう一本映画を作りたいですか?』と聞いたところ、普段ならあまりはっきり物事を言わない人が『作りたいです』って即答したんです」と当時を振り返る。

 その後、どういう形で長編映画ができるかを模索したという西村プロデューサーだったが、新会社を設立し、そこで製作をすることには「ジブリという名前もなくお金やスタッフが集まるのか、またクオリティは維持できるのか」といった多くの不安が付きまとったという。そんな中『かぐや姫の物語』がアカデミー賞・長編アニメーション部門にノミネートされ、西村プロデューサーが現地アメリカに行き、各国のアニメクリエイターたちと会話をしたことにより「高畑(勲)さん、宮崎さん、鈴木さんたちが、子どもたちに喜びを伝える一方、しっかり責任を持って作るというポリシーを次の世代が受け継がなくてはいけない」と焦りが強くなり、新会社設立へ大きく気持ちが傾いた。


 こうして新会社「スタジオポノック」により企画がスタートした。その際、米林監督、西村プロデューサーともに「『思い出のマーニー』とは真逆のことをやろう」という方向性は決まっていたという。さらに西村プロデューサーは「魔女」というキーワードを米林監督に提示。「僕らの子ども時代『魔女の宅急便』を観て喜びを感じました。いまの時代の子どもたちに向けて、21世紀の新しい魔女の物語が作れるのではないかと思ったんです」と説明する。

 「20年近くスタジオジブリで学んだことをこの1本にすべて注ぎ込んだ作品」と西村プロデューサーが語るように、本作にもしっかりとジブリの血は受け継がれていると宣言。
しかし、西村プロデューサーは、企画・製作については宮崎監督、高畑監督、鈴木プロデューサーには一切相談しなかったというが、米林監督は「宮崎監督が(また長編を作ることになったことに対して)『うれしいよ』と言ってくれたんです。こんなに素直なことを言ってくれる人なんだと喜びが沸いてきた半面、期待されているんだなってプレッシャーを感じました」と笑顔で話していた。

 映画『メアリと魔女の花』は2017年夏公開