デジカメが普及し、インクジェットや昇華型プリンターでカラー写真が誰でも簡単に出力できる時代になって久しいが、近い将来、もう写真はプリントして楽しむ時代ではなくなっているのでは?!

一番に思いつくのはテレビにデジカメを接続して写真観賞するやり方。これはすでによく行われている。
テレビのある居間でみんなで楽しむにはとても便利だ。一人だけで楽しむならパソコン画面でも十分だろう。しかし、テレビもパソコンも写真を観るためだけに使用するものではないので、長時間観賞し続けるには限界がある。

やはり、インク代や紙代をケチらないでプリンターで出力したほうが一番いいという意見も根強くあるだろう。だが、日本のインクジェットプリンター市場はそんな意見に反するかのようにしぼんでいる。IT専門調査会社のIDC(アイ・ディー・シー)ジャパンが9月18日に発表した2008年第2四半期(4~6月期)の調査では、インクジェット製品の総出荷台数は、前年同期比6%減の123万台だった。
インクジェット最大の需要期である2007年第4四半期(10~12月期)でも同2%減の251万台。
一方、インクリボンを使用するいわゆるA5判以下の昇華型プリンタは同18%増の32万台であり、総合的に写真向けプリンター全体に活況がない、というわけではない。しかし、気になる動きがある。それは新たな写真の楽しみ方がまたひとつ現れ、市場が成長していることだ。

それは「デジタルフォトフレーム」。すでに店頭などで見たことがある人もいるだろう。
画像の入ったメモリーカードを装着すると、写真がフレームの中の液晶画面に映し出されるというもの。ただ写すだけでなくスライドショーやインデックス表示、時計機能なども備える。価格は大きさによって異なり、売れ筋の7インチモデルで1万5000円~2万円、9インチでは3万円前後。中には1.5インチと小さいモデルもあり、数千円前後だ。フレームはプリント写真の額縁のようにいろいろなパターン(色・形など)を選べ、取替えが可能なモデルもある。

市場規模はまだ小さいが成長は著しい。
調査会社GfK(ジー・エフ・ケー)ジャパンの調べでは、2007年は2万9000台だったが、今年は9万5000台と約3倍の成長率を達成すると予想する。目新しさや高級感などが評価され、年末ギフト需要の目玉になりそうだ。
人気メーカーは圧倒的にソニーで、今年6月期の上位5モデルに、ソニーの新製品3モデルがランクイン。1位に輝いた同社製7インチモデル『DPF-D70』は、デジタルフォトフレーム全体の約46%(数量ベース)を占めるという快挙を達成した。

また、調査会社のガートナージャパンは「デジタルカメラの普及と携帯電話のカメラ機能の向上によって写真を撮る機会は増えているものの、写真は画面で見て楽しみ、必要なものだけをプリントするものに変化している。写真を印刷しなくても飾って楽しむことができるデジタル・フォトフレームも販売されており、プリンタ・ベンダーにとって今後大きな脅威になる可能性がある」という。


インク、紙代がかからずおしゃれで便利なデジタルフォトフレーム市場の急成長とソニーの勢いで、一気にプリントしないで写真を楽しむスタイルが浸透していきそうだ。
(羽石竜示)