80年代末より深夜番組の可能性を追求してきたフジテレビ。深夜の枠組み自体を「第2のフジテレビ」を意味する「JOCX-TV2」と名付け(後に「JOCX-TV+」「GARDEN」「JUNGLE」等に変遷)、実験的なセンスあふれる番組を続々と生み出していた。

90年代に入ると、若者の支持を中心に視聴率も上昇。その躍進の原動力となったのが斬新な「知的エンターテインメント番組」の数々だ。中でも上質な4番組を紹介しよう。

【カノッサの屈辱】(1990年4月~1991年3月)


現代文化を歴史上の出来事に当てはめながら、教授役の俳優・仲谷昇が講義のようなスタイルで面白おかしく振り返る番組。
「アイスクリーム ルネッサンス史」「ニューミュージックと西太后の時代」「古代エーゲ海アイドル帝国の滅亡」「インスタントラーメン 帝国主義国家の宣戦」といったテーマは、すべて歴史上の著名な人物や出来事になぞらえられ、解説の際に使用される図版なども歴史資料風にアレンジされた物となるよう徹底されていた。

「チョコレート源平の対立と国風文化」を例に挙げると、80年代末の高級チョコレートブームは「舌(タン)の裏の戦い」、「チョコレートは明治♪」のCMに出ていた沢田研二は板チョコ文化を広めた「明氏一門」の「平清ジュリ(たいらのきよじゅり)」といった具合。
「鳥獣コアラマーチ戯画」、「m&m’sの来襲」、チョコボールを持つ「森永観音像」、パラソルチョコを持つ「不二原家の弥勒菩薩像」などの歴史資料のオマージュやパロディも絶妙。
その強引なまでのこじつけも、遊び心も一級品だった。

【TVブックメーカー】(1991年4月~1992年3月)


前述の『カノッサの屈辱』が「過去」を題材にしていたのに対して、後番組のこちらは「未来」が題材。「これから結果が出る」ニュース、イベント、テレビ番組等を題材に賭けを行う番組だ。

「海部内閣の5月の支持率」のような王道な題目から、「24時間TVの募金総額」「水戸黄門での由美かおるの入浴する時間帯」といった他局をテーマにした問題、さらには「大川隆法が東京ドームの講演会で誰の霊示を語るか?」「勝新太郎が第3回公判で裁判官から何回注意を受けるか?」など、現在では許されそうもない題目も多数。
このきわどさも深夜のフジテレビの醍醐味だった。

【カルトQ】(1991年10月~1992年9月)


趣味が多様化し、サブカル文化が台頭して来た時代の流れを感じる、特定のジャンルに特化したマニアックなクイズ番組。
スタジオに進める5人を目指し、多くの若者たちが難問揃いの筆記テストに挑んだ。
ちなみに「YMO」のテーマで「カルトキング(優勝)」に輝いたのは、元・電気グルーヴのまりん(砂原良徳)だったりもする。
「分かる方がどうかしてる!」そんな問題がこの番組の真骨頂!当時の問題の一部を紹介しよう。

■カルトQ!(テーマはF-1)「1991年の日本GPで中嶋悟は28周目にタイヤ交換。この時のピットストップタイムは何秒何?」
A:6秒94

■カルトQ!(テーマは大相撲)「若貴兄弟とちびっこ相撲仲間のマサヒロ君。彼の実家は中野新橋商店街の肉屋。その店名は?」
A:くりはら

【たほいや】(1993年4月~1993年9月)


親(胴元)は広辞苑を手に、耳慣れない単語をピックアップ。参加者4名はその単語の『もっともらしい意味』を考え親に提出。
広辞苑にある本当の意味を含む5つの解答の中から、正解を当てるゲームだ。
ボキャブラリーや知識の豊富さはもちろん、創造力、洞察力、演技力などなど、持てる力を総動員して戦う知能バトル! これぞ、知的エンターテイメント番組のお手本である。

芸人、テロップ、ワイプ頼みで、見た目は派手でも中身がない。そんな番組が深夜にまではびこってしまっている現状を歯がゆく感じるのは、90年代の深夜番組黄金期に筆者がどっぷりハマっていたからだろうか?
今回挙げた4番組は、現代でも十二分に通用するフォーマットだと思う。何かしらの形での復活を切に願うばかりだ。
ただし、「料理の鉄人」から「アイアンシェフ」になったような改悪は避けて欲しいものである……。

(バーグマン田形)
「カノッサの屈辱Vol.3 [VHS]」