老朽化するマンションの「終活問題」
医学の発展により、我々は人生80年時代から100年時代を迎えようとしている。

そんな中、建物の寿命は一体何年が適正なのだろうか!?

2019年5月30日。
NHK「クローズアップ現代」が〝都会のマンションに異変〟と題し、マンションの老朽化問題をテーマに取り上げた。いわばマンションの終活問題である。

日本国内ではマンションの平均耐用年数は30年から40年と言われているが、国土交通省によると、2017年末時点で築40年超の老朽化マンションは全国に約73万戸。2027年には184.9万戸になる見込みと示唆。

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「建て替えか、修繕か・・・」

迫られる二つの選択肢。特に個人の意思では決められない集合住宅(マンション)は多くの問題を抱えている。


仮に〝修繕を行おう〟という決定が下されたとしても、「修繕積立金が十分ではない」というケースに直面、富裕層が暮らす都心のタワーマンションでさえ、頭を抱える管理組合が多いのだという。

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果たして我々は、「マンションの終活」問題とどう向き合っていけばよいのだろうか?
そもそも耐久年数30年は本当か!?
と、ここまで前置きしておいてなんだが、よく聞かれるこの問題提起自体に私は疑問を感じるのだった。

そもそもマンションの「耐久年数30年~」は本当なのだろうか!?

なにしろ日本の住宅の耐久年数が30年なのに対し、イギリスでは140年、アメリカは100年、ドイツは80年と言われているのだ。

とくに英国では築50年以上の建物に高値がつき、中古住宅の人気が高い傾向にある。

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なぜ、こんなにも違いが出るのか。もちろん日本は地震大国であり、湿度も高く他国より建物の耐久性が悪いのは理解できる。
とはいえ、果たしてここまで大きな違いが出るものなのか。

うがった見方をすると、住宅業界に都合よく利用された作為的なデータであるように思えてならないのだ。

本当は、30年以上の耐久性があるにもかかわらず、それでは売り上げに響くので業界はあらゆるメディアを使って恐怖訴求。ユーザーに心理的建て替えを迫る。

つまり、本来は60年でも80年でも耐えられるがそれが公になっては困る。住宅業界にとってそれは、ひた隠しにしたい〝不都合な科学〟ではないのか。


いずれにせよ私が危惧するのは、このままでは〝昭和〟と〝平成〟の建築物全てが、建て替えによって消えてなくなるかもしれない、という現実。

歴史的、あるいは文化的な価値がある寺院や城、武家屋敷群に合掌村が保存されてきたように〝昭和〟と〝平成〟の名建築も後世に残していく義務がある。

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本来、定期的に適切なメンテナンスさえ行っていけば、〝日本の建物〟はもっともっと耐久性があるかもしれないのに、資本家の理論で安易な取り壊しが行われているとしたらこれは大きな問題である。
建物を健康診断するビルinビル
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そんな中、マンション・ビルの管理運営から工事までをトータルサポートする総合不動産管理会社・東急コミュニティーが、建物の点検、診断、工事を担う技術員を育成する研修施設の運営を開始した。

「多くの建物が老朽化するなか、良質な社会的ストック形成のためには、適切なメンテナンスが不可欠であります」

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この日の内覧会でそう語ったのは、東急コミュニティー常務の速川 智行氏。

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そこは人に例えると、人体実験を行えるようなビルで、その建物自体の中に「もう一つ実験用のビルがある」構造を実現。


いわば、建物を定期的に健康診断できるビルinビルで、普段、絶対に見ることのできない建物のあんなとこや、こんなとこまで見える化。

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さらに、人為的に停電や断水を発生させて復旧の実験を行ったり、災害発生時の防災実習など、実践的な研修を行うことができる。

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まさに建物の設計や施工・管理者にとっては、有意義な研修施設で、ここに来れば、どういうメンテナンスを行っていけば建物の寿命を延ばすことができるのかを学べる。

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現時点では、東急グループ関連の研修施設であるが、近い将来はその他の業者はもちろん一般にも開放する予定があるという。

もし、こんな施設に「家族で泊まれる」イベントが開催されたらワクワクするに違いない。
こうなってたんだ!?普段見ることのできない建物のあれが丸見え
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「東急コミュニティー技術研修センターNOTIA」

その施設は、中目黒駅より徒歩2分の場所にある。
2月に新設されたばかりの真新しいビルで、地下1階、地上5階建て。

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早速、2階へあがろうとエレベーターに乗り込むとそこはスケルトン。エレベーターの構造がよく分かる仕組みだ。

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もちろんこれもメンテナンス研修に必要な為の見える化。エレベーターを長年使っていると発生する問題点が一目でわかる。

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そして2階では、防災設備と給排水設備について学ぶことができる施設が整っている。


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たとえばこれは、消防研修の為の複合防災板。消火栓も本物と同じもの。

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しかもこちらの部屋では、実際に消火実習を行うことができる。

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消火ホースからの放水はもちろん、火災時のスプリンクラーの働きを体験可能。

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ちなみにこれは、火災報知機のボタン。「さわらないでください」と注意書きがされていて、思わず笑ってしまった。

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恐らくこれは、実習用の設備ではなく、このビルに備え付けられた本物の火災報知器なのだろうが、研修ビルであることから、実習用のボタンと勘違いして押してしまう人がいるのかもしれない。

それくらい、どこまでが研修用の設備か、本物の設備なのか、このビルにいると分からなくなる。とにかくリアルである。

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こちらは、給排水設備のコーナー。実際には屋上や地下にある設備が一カ所に集められている。

それによって建物の水の流れを分かりやすく再現。

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「なるほど。こんな風に水回りのトラブルって起こるんだ!?」

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実際には見えない所で起こっている、よくある水回りのトラブルを目に見て学ぶことができる。

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しかもその奥には、剥き出しのトイレが並ぶ。

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しかも配管もスケルトン。詰まりの原因が分かり、これならメンテナンスの方法も理解しやすい。

そして3階には、電気と空調の設備が広がる。配電盤もスケルトン。

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回路図も図式化され、ケーブルも剥き出し。

さらに天井を見上げると、色分けされたダクトに、天井埋め込み式のエアコンも剥き出しだ。

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まさに、全てが見える化。思わずそのヌードな建物に興奮する。

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都内随一の省エネビル
また、本施設は、東京都内の事務所ビルとしては初となるエネルギー削減率75%の「Nearly ZEB」認証を取得。

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地中熱を汲み上げ、躯体接触型の冷温水パイプにより躯体に蓄熱させ、それを天井や壁から放熱、冷却する「躯体利用輻射冷暖房システム」を採用。

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さらに太陽光発電による創エネも活用、自然エネルギーに関するデータ蓄積の場としても展開、省エネ提案にもつなげていく予定があるという。

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このような施設を有効活用。建物に関する知見を深め、さらに適切なメンテナンスと管理を行うことで〝歴史ある〟だけではなく、目の前の〝建築物〟の寿命を延ばす取り込みを広げていって欲しい。心からそう願うのだった。