10年に一度、やってくる人に会った
新しくなったガスメーター。マルで囲んだように、次の点検は2015年…。気が遠くなってきた。
「10年後にまた来ます」

こんなふうに、誰かに言われたことがある人、いますか?

これ、実は私の体験で、先日、東京ガスからガスメーターの交換に来てもらったときのことなのだ。ガスメーターを新しく交換した後、担当の人が、さわやかに言い放った言葉。
しかし、10年という響きを軽く聞き逃せなかった私は、すかさず聞いてしまった。

「えっ? 10年後? 10年ですか?」

すると

「ええ、そうです。取り替えは10年に一度になっていますから」

と、ごく普通に返してくれた。というのも、私の家に設置されているタイプのガスメーターは、10年間持つらしく(中には7年タイプも)、その間はずーっと使用可能だから、必然的に10年後で問題ないというわけなのだ。なにしろ10年間もメーターが動くような電池が内臓されているとか。

まぁたしかに、電化製品なんかにしても、それなりの年月、充分に使用できるだろう。
でも、電化製品の場合は、取り替えたいときに自分で買い替えられるから、感覚がまったく違う。

1年後とか、もしくは3年後くらいまでなら、まだリアル。でも突然、知らない誰かに「10年後にまた来ます」と言われることって、なかなかない。

だって、10年後、あなたは何をしてると思う?
まさか、東京ガスから同じ担当の人が来るとも思えない。そして、果たして自分はどうしているのだろう? 手渡されたパンフレットをみながら、想像は膨らむばかり……。

とはいえ、実家住まいの私は、10年以上前から同じところに家族で住んでいたりする。
そして念のため、母親に聞いてみたところ、10年前にもガスメーターを交換しに来たことを覚えていたのだ。10年前というと、私が大学生だったころか。10年ひとむかし。

さて、過去はどうあれ、これから10年後、結婚もせずにまだここにいたら、それはかなりブルーだな……とか、でも完全に負け犬化しているかもな〜とか、仕事はどうなってるかな、などなど、いろいろと浮かんでは消えていく。

ガスメーターの交換という、とっても日常的な風景だったのに、まさかこんなに自分の未来について、考えさせられるなんて。(田辺 香)